絶対に殺さないと決めるのが珍しい - プラチナエンドの感想

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プラチナエンド

4.504.50
画力
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ストーリー
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キャラクター
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設定
4.00
演出
4.50
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絶対に殺さないと決めるのが珍しい

4.54.5
画力
5.0
ストーリー
4.5
キャラクター
4.0
設定
4.0
演出
4.5

目次

秀逸なイラスト

さすが小畑さん。本当に絵が綺麗で、天使キャラと人間キャラの絶妙な光と闇がうますぎる。この物語は、人生に絶望し死を選ぶ13人の人間が、13体の天使によって選ばれる。そしてもう一度生きる希望を与えられるだけでなく、神として不老不死とも言えるような時を生きることのできる道へといざなわれるのだ。与えられるのは天使のランクによって異なるが、宇宙へも一瞬で飛び立てる“翼”、射貫いた相手を必ず従わせることのできる“赤の矢”、そして射貫いた相手を必ず殺すことのできる“白の矢”のどれか…力の奪い合いか、殺し合いか、話し合いか…13人の選ばれた人間が選択するものが何なのかを通して、人の欲望と天使たちの欲望に迫る内容だ。

主人公の架橋明日(かけはしみらい)って、名前がちょっとウザい気はするが、イケメンに描かれているよね。そしてヒロインの咲ちゃんはこれまたかわいい人物。小畑さんのすごいところは、おっさんだろうが気を抜かないところや、奏の着用したガンダムみたいなスーツの細部まできっちり描いているところ、そして天使の天使っぽさだ。一番は、天使たち。彼らの存在感、表情、根本的に持つ考え方の違いなどが、綺麗すぎる絵と相まってぞわっとさせてくれる。ナッセは誰よりもキュートでかわいらしく、そして誰よりも残酷な一面を持つ天使。もしかしたら、メイザなんかよりずっとずっと残酷かもしれない…メトロポリマンに扮した奏を止めることもそうだけど、天使たちの真実のほうがずっと重要な意味を持っていそうだよね。だからこそ、どのキャラクターも手抜きなしの存在感になっていると思う。

主人公のミライが天使すぎる

はっきり言って、ミライが誰より天使のような考え方の持ち主と言える。人を恨むことや憎むことをしたくない彼は、自分を陥れた義理の家族のことだって、殺したことを悔いてしまうほど。ナッセは、ミライが幸せになるために人を殺せばいいと言うが、そんなことは到底できなくて、普通になりたいと言うミライ。住むところがあること、食べ物があること、学校へ行くこと、働けるようになること、好きな人と一緒にいれること…そんな当たり前の日常が欲しかった彼にとって、命を救われたことは何より感謝すべきだけれど、天使の力は放棄したいほどだった。

天使に選ばれた者の中には、明らかに悪用する人間いる。当たり前だけど、みんないい人とは限らないわけだ。ミライは自分のためだけじゃなく、咲ちゃんのため、そして無下に殺されていく神候補の人たち、何も知らない無関係の人々…彼らを憂いて行動を起こすことを決める。しかも、奏を殺さずに赤の矢を使って事態を収束させるのだと…。殺すことでなく、愛を選ぼうとするミライ。誰の事も憎みたくない・傷つけたくない。白の矢で殺してしまえばいいという他の神候補や、ナッセを含む天使たち。いったいどっちが天使なんだ?ってくらい、ミライは清すぎる存在だ。でもだからこそ、誰よりも神に近い存在と言っていいかもしれない。こういうバトルマンガにおいて、誰かしら悪の存在を用意するならば、どうしても悪の犠牲を払うのが定石。しかし、ミライはそれすらも選ばない。ここが珍しいし、応援したくなるポイントとも言える。

性格豹変の咲ちゃん

咲ちゃんは、過去にミライをいじめていたことから後ろめたい気持ちがあり、天使同士のバトルにおいても積極的に参加することや、ミライに協力すること、ミライに好かれることを受け止めきれないでいた。しかし、それすらも許してしまうのがミライの清さ。だってこんなに好きな人が悩んでいるんだもの。許してあげないわけがないのである。まぁそのいじめを悔いて死を選ぼうとする咲ちゃんもよっぽど清い人間のように思うけどね…。

ミライへの罪悪感と向き合って立ち直ってからの咲ちゃんは、実に積極的で正直・かつとても強い女性へと変わった。いや、もともとそういう人間だったのかもしれないが、彼女なりに知恵を出してくれるようになり、六階堂さんもびっくりの変貌を遂げる。表情も全然違くて、真っ黒だった瞳に光が宿った感じになる。それに呼応するように、自分も変わろうとすルベルがまた…かわいらしい。天使とは完璧な存在ではなく、それぞれに何かに特化した能力を持つ。そして誰よりも、自分の決めた人間の幸せを願う。何かをもたらしてくれるのではなくて、選択肢をくれる存在であり、そばで見守ってくれる存在が天使なんだろうね。ナッセ、ルベル、バレの仲良し組を見ているのもほのぼのして好きだけど、ミライ、咲ちゃん、六階堂さんの3人が協力している姿もまた好き。咲ちゃんにはこれからのバトルでとことん活躍してもらいたいなと思っている。そのうちルベルが1級か特級になって、翼を彼女にもたらしてくれるはず…!

奏のキャラクターを腐らせすぎ

それにしても、悪役である奏の性格をずいぶんとひん曲げすぎではないかと思うのだが、どうだろう。裕福である存在こそが至高であり、裕福だから見た目も、頭の良さも、持っているものも、これから手に入れるものも。すべてが一流になると考えている奏。美しすぎる妹を事故で殺してしまったことを悔いているというよりは、美しき存在のまま死んでいった彼女を再び蘇らせようとしている奏。どんだけシスコンなんだよ。

さらには、裕福でない貧乏な人間はクズだと思っていて、貧乏な人を失くしてしまえばいいとか言っている…はぁ?裕福な人間だけで構成される社会なんて、はっきり言ってどう社会が営まれていくか想像できない。売れる会社があれば、売れない会社がある。全員が勝つことなんてなくて、それが人間のモチベーションになる。それが資本主義であり、人間社会がなんとかうまく均衡を保てる方法だっていうのに…全世界を社会主義にしようっていうあんたはどこの独裁者だ。

邪魔なら殺せばいい。メイザが無級の天使だったところからなぜか特級へ成り上がった謎もまだ解明されていないし、奏の精神をむしばむものの正体がそこにあるかもしれない。奏の思考がずいぶんと極端すぎる気もするし、ここからの展開はけっこう楽しみにしている。毎週連載されるわけじゃないから、スピードがゆっくりなのが難点。今か今かと待つしかない。

最終的な落としどころ

「プラチナエンド」というタイトルから考えるに、これはどんな死に方にするかのカウントダウンでもあるように思う。もしくは、死の間際に輝きを取り戻す、そんな意味もあるかもしれない。

13人の中で誰かが神になると考えると、ミライではないと思うんだよね。六階堂さんがちょうどいいって思う。末期の癌だった彼が、現世は死んだことになる。だけど、神として君臨することで、世界を見守る立場へと変わる。そしてミライと咲ちゃんは、人として最期のときまで、一生懸命生きると誓う。

そこに至るまでのところは、奏をぶっ殺したところでは解決されなくて、むしろ天使と戦わなくてはならない状況になると思うんだよね。天使が絶対的な存在ではなく、とても曖昧で、危うい思考を持っているところが何よりの証拠。ナッセとメイザ。彼女たちが持つ何かがキーになると思うのだけど…早いところ奏のところが終わって、天使の話になってほしいなーって思う。奏を殺すことは選択肢にないから、協力者になるかもしれないよね。それはそれで受け入れがたくはあるが、そのほうが物語は面白くなる気もする。

まだまだ先は見えないけれど、頼むから途中で打ち切らないでほしい。彼らの見つける答えが何なのか。楽しみで仕方がない。

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