旧約聖書から見る帆場の犯罪
ノアの箱舟と「箱舟」
アダムとイブの子孫であるノアが、神から大洪水を起こすと告げられ、自分と家族、周りの人々を大洪水から護るために巨大な船「ノアの箱舟」をつくったわけですが、劇中における「箱舟」は、社会がより発展するために立ち上げたバビロンプロジェクトの1つとして建造した巨大構造物であり、護りではなく、攻めのためのものと位置づけられると思います。この点がノアの箱舟と「箱舟」の違いであり、帆場暎一の怒りに触れた、もしくは帆場の犯罪のトリガーとなっていくのだと思います。
帆場暎一の犯罪の目的
「箱舟」から帆場暎一が謎の笑みを浮かべながら身を投じる場面、これが何を意味するのか。それは、「箱舟」を壊せば犯罪は未然に防止できるかわりにプロジェクトが崩壊し、また、「箱舟」を壊さなければ全国でレイバーが大暴走し、街を壊滅させる。そのどちらも起こさせない、つまり、「箱舟」を壊さなくても暴走を未然に止める手段、帆場暎一の身柄を確保し修正プログラムを作らせることですが、これは帆場暎一が身を投じることでこの選択肢がない。いわば完全犯罪が完成する。この完全犯罪の完成を思い浮かべて帆場暎一は笑って身を投じたのだと思います。
旧約聖書から見るバビロンプロジェクト崩壊の必然
神は各地で生活を営むことを命じていましたが1つの言語を話し、互いにコミュニケーションを図ることができました。やがて人々は各地の技術を携えて集まり、天にも届く塔、バベルの塔を作り始めます。これを見た神は怒り、完成させまいとして、言葉を通じなくし、再び、人々を各地に追いやりました。そして、バベルの塔は崩壊するわけです。これがバベルの塔の顛末で、その地がバビロンです。つまり、バビロンプロジェクトというのは、名前こそ壮大に聞こえますが、「創世記」を読んだことがあれば、決して縁起の良い名前とは言えないのです。ただ、神の領域にたどり着こうとする志のみをさすのであれば、ありかもしれませんが・・・。バビロンプロジェクト、箱舟、こういった名前が社会全体に広まり、帆場暎一は一人、怒りをこらえていたのかもしれません、神への冒涜をまた犯すのかと。そして、旧約聖書に記されているとおり、人々が洪水から逃げるための「箱舟」を使って、バベルの塔を破壊し、バビロンプロジェクトを崩壊させようと、まるで旧約聖書の神にでもなったかのように人々に難題を突きつけたのでしょう。なかなか、奥の深いストーリーだったと思います。
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