平成を象徴する推理小説
文体の読みやすさ
通常推理小説というと時代や場所、登場人物の描写が多くて背景を推測するために読んでいて疲れることが多かったのですが、(例;金田一耕助の事件簿)この作品についてはスキップするかのごとく2時間程度で1冊も読み終えることができました。しかもその2時間というのは本当に面白いアクションムービーを見た後のような爽快感とスピード感があります。石田衣良さんは俳句でも勉強したのかなと思うぐらい文章がキレッキレでとにかくスピード感が読み手を疲れさせないという特徴があります。
登場人物の人柄
登場人物其々のキャラが(悪役を含め)しっかりとしている為、それぞれわき役が主人公としての別の続編までも楽しめるというところに石田さんの作品の面白さがあります。こんな奴自分の周りにも本当いそたな!こういうこと裏でありそうだな実際。。なんて思いながら話が展開していきます。また、主人公の「まこと」なんてチンピラでもないチーマーにも属さないそんな中途半端な正義のヒーローですが読み手が好きになる要素をたくさん含んでいるというところに何度でも読み返したくなる秘訣があります。まことは片親の高卒で全く完璧とはいえない家柄ですが誰にでも公平で悪だけど人を傷つけるようなことはしないという優しさと道徳観を備えています。そのことが難事件を解決していくのですが、私個人としては困難に直面した時に見たい作品に入ります。
現代の犯罪を描写したミステリー作品
読み進めていくとわかるのですが、物語の各章の犯罪がどこかで聞いたことがあるような奇妙で悪質で残忍なものばかりです。特に印象的だったのが少年4人に監禁されて死んでしまった少女のストーリーが今でも記憶に残っています。これが実際に起こった犯罪だったということで更に胸が張り裂けそうになりました。その時に少年法について考えさせられました。少年たちが少年院から出た後再度犯罪を犯す事件など、現代社会の社会問題をモチーフにした社会性の強い推理小説だと思います。石田さんの後書きを読んでみるとやはり、近年ニュースを賑わせた実際の事件を基に作成されていたことがわかります。石田さん自身が一つ一つの事件に対して深い考察を持っていることがわかります。そして犯人たちをまこと扮する石田さんが実際に犯人たちを見つめ時に成敗していくようにも思われます。主人公まことが警察でもなくやくざチンピラにも属さない普通の青年であるところから、自分に置き換えて自分だったらどうしようと考えることができる作品になっています。
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