再注目の純愛ストーリー
先生と生徒の恋はいつの時代もドッキドキ
絵がね、昭和っぽくて好きじゃなかったんだ。しかし、2017年、映画化されるとあって見直してみたら、そのストレートさにまた自分の中でブレイクがやってきた。いつもは原作マンガの世界観を崩すような映画のキャスティングに文句をつけるが、2017年の映画には生田斗真と広瀬すずが…!何やらお似合い。そして漫画の雰囲気を壊していないし、何より伊藤先生が生田斗真になってクソカッコいい。ということで漫画を読み直すという逆パターンが発生した。生田斗真と広瀬すずに変換して読み進めるのである。
漫画の中では、ちょうどケータイが出始めた時期。まだまだ公衆電話や常に直接言葉を伝えることを大事にする時代だったなーと思う。また、学校でのぼんくら教師の行動はまさに体罰。今それをやってしまったら、廊下に立たされて自尊心が激しく傷つきましたとか、正座のしすぎで足を怪我しましたとか、終わるまで学校に拘束するなんて犯罪ですとか…散々な言われ方をすることだろう。そういうことを考えると、時代の移ろいを感じ、またその時代を知っていることがどうやら古いらしいと気づいて若干傷つく。笑
先生と生徒の恋は、やっぱりどの時代も憧れる。若い女の子が、年上で優しく余裕のある先生に恋するのが定番だが、学生の男の子が女教師に迫るのもまた萌え。どちらのパターンでも、年齢の差があるからこその価値観のずれ、気持ちのすれ違いがテーマになる。その王道をまさに語ってくれるのがこの「先生!」だ。絵は古いと感じるかもしれないが、ストーリー展開はいまだに楽しめると思う。
恋する女の子は最強
黒髪ショートカット、おっとりとした話し方に、弓道部という静かな部活。何となくがつがつイケるタイプじゃなさそうな響。恋を知らずに17歳になった響の初恋は、先生だった。初恋だと気づいてからの行動力といったらすさまじいものがあり、積極的に家に行き、友達と入り浸り、先生の大事そうにしている本を盗み、勝手にやきもちをやき、先生を独占したくてたまらなくなっていく。もうね、常に炎上状態だったよ彼女は。先生としての優しさだったらいらないとか余裕もないくせに口走ってみたり、忙しい女だ。
諦めようとしても無理で、先生のことしか頭にないご様子の響には、若干引いたりもした。先生の授業だけいい点とって、それ以外には目もくれず。さらには親に反抗してみたり、進路もないがしろにしようとしたり…まぁね、恋すると相手のことだけでいっぱいになる気持ちはわかる。なんかもう年齢と関係なく尽くしたい・追いかけたい・振り向かせたいってどんどん強気になっていくんだよ。玉砕してもいいやってぶつかってこられると、男はとても弱いのだ。もはや不法侵入・ストーカーレベルの危険度になっていたけれど、それを許してしまう伊藤なのであった。
ただ、それ以外はがんばれないとか言うのはますます子どもっぽいんだよ。すべてを滞りなく済ませられるうえで、先生に挑まないとさ。まぁ成長と共に身につけていくことだから、全部伊藤先生に教わればいいけどね。伊藤先生は女性に不信感を持っていたから、響みたいに一生懸命で、わかりやすくて、思いのまま動いているのが逆にヒットしたんだろうな。
キューピッドを忘れるな
先生と響だけで盛り上がっているが、浩介のことを絶対に忘れてはならない。響がウジウジしているときも、伊藤先生がウジウジしているときも、浩介がちゃんとサポートしてくれた。千草が恋してうるさいときも、見守ってくれた最高の男友達。ダメな時は本気で叱ってくれる、強い友だちだ。
そんな浩介もちゃんと若い。中島先生を本気で好きになって、ガキだって思われないように一生懸命平静装って、先生の立場や立ち位置をわかった付き合いをしようと心がけて、結局は大人と子供の差を感じてしまったり…それでも彼は強い。響と千草に迷惑かけず、1人でがんばっていた。彼は、誰より男らしいのである。
浩介が伊藤先生をぶん殴ってくれなかったら、響は伊藤先生と一緒になることなんてできなかった。相手が誰であろうと、今持っているものすべてで勝負するのが浩介だ。相手の気持ちを考えて、自分が大切にしたい人の気持ちを考えている浩介が、恋愛でうまくいかないわけがない!でもどうか、付き合うならやっぱり中島先生みたいにオトナな年上がいいんだろうって思う。浩介が甘えられるような、素敵な人がいいよね。いつも浩介が頼られてばかりではかわいそうだ。
同年代カップルもお忘れなく
響と対照的に描かれていたのが人をどんどん好きになる千草。惚れっぽくてとにかく攻める千草だが、彼女は人から愛されることに免疫がないため、空回りばかりする。恋を知らない響が猪突猛進に変身したのとは逆に、千草はどんどん奥手になっていくみたい。渚はどんどん千草にハマっていって、おもしろかった。全然絵がかわいくないから嫌だったんだけど、内容的には響との違いを出し、違った角度で恋愛を見ることができてなおよかったと思う。本気で好かれて、自分も本気で好きになる。響にとっての伊藤先生、渚にとっての千草がきっとそんな感じなんだろう。悪いところが見えたとしても冷めない、長い恋。渚との出会いに感謝しなければならないだろう。
受験勉強で渚をほったらかしにしている千草には本気で引いたけれどね。受験があろうと恋に現を抜かすのが高校生ってもんだろうが!と思って。まぁそれも響との対照的なところを出すためだろうけどね。響は大学受験なんてどうでもよくて、早く伊藤先生と一緒になりたいってそればっかりだったし。いろいろな恋の形はあるし、いろいろな年齢層での悩みがあるだろうが、最終的にはぶつかり合わなければならないということだ。
伊藤先生と響はとにかく静かに愛を深めていかなくてはならなかったけれど、渚と千草は堂々と、元気に若さで恋をしていたね。歳の差と同年代ではどう違うのか、それも対比させて表現し、この漫画の中だけで深みが出るようにしてくれていたんだろうと思う。
実ってからは危なげなく進行
この年の差恋愛においては、危なっかしいところはなかったと思うね。響は不安になってどんどん近づいていこうとして、伊藤先生は響の将来を思って離れようとする。だけどどちらも好きであることに違いはなくて、少しずつ、理解を深めていく。言葉はとても少ないけれど、優しさの伝わるいい話だった。たいてい先生側がどっかに左遷されそうになるか、本当にとばされる話になるのがほとんどなのだが、この作品では平穏だったね。響が誰かにいじめられるってこともないし、不器用な恋愛が1つずつクリアになっていく、そんな優しい漫画だった。
伊藤先生は、響のことを受け入れていいのかずっと悩んでて、付き合おうって決めてからも悩んでいた。いつでも手放せるように、ある程度壁を作っていたんだと思う。どのタイミングでヒットしてしまったのかなーと考えてみてもよくわからないが、1つ1つの好きが積もってようやくダムが崩壊したってことだろう。もうちょっと照れるとか拗ねるとか、わかりやすいと助かったのだが…余裕ぶっこいてないといけないのも大人だからね。
昔の女に取られそうになったりもしたが、響を捨てなかった先生。ハッピーだったけど、あそこで振ったりしたら響は暴走しそうだよね…なんか純情ってこわいもの。それほどドロドロせずに高校を卒業できてよかった。
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