王道で平和な教師と生徒の恋
今読むといろいろと古い
「先生!」が連載されたのが1997年くらいからですね。そのため言葉とか感情の機微、学校生活における先生の体罰とかがちょっと古いです。関谷先生が生徒を正座のまま放置したり、話聞いてなかったら廊下に立たせたり、居残りで勉強させておいて先生はさっさと帰宅していたり…今だと社会問題になるようなこと、昔は割と普通に行われていたことがわかってきます。そして、ケータイすらもちょっとずつ普及してきたよーっていうあたりだから、SNSで情報がすぐ拡散されたり、あることないこと吹聴するのもあまりない。確かに、浩介の中島先生に対する暴力(実際にはそれっぽく校長先生に見られただけ)なんて、退学してもおかしくないよなーってくらいだったけど、一時の話題をさらっただけで、ひどいことにはならなかったですね。
そんな中、今更廊下に立たせるとか古いだろうって言ってるのが伊藤先生。昭和じゃあるまいし。関谷先生は「俺のやり方に口出すな」。こういう言葉を見ていると、ちょうど時代が移り変わろうとしている時期だなーっていうのが読み取れます。余計にかっこよく見えてくるよね。響も途中からケータイを持てるようになるし、まさに20世紀始まったなーってころなので、少し懐かしさも感じます。連絡を取りたいときに取れない、会いたいときに会えない、もどかしい感じは、教師と生徒の恋愛ならなおさら大変だけど、きっと昭和のほうが大変だっただろうなーって思いますね。
響はおとなしそうに見えて全然おとなしくない
ルックスといい、話しぶりといい、おとなしい女の子に見える響。だけど、いざ好きな人が出来たとたん、ものすごい行動力…!今まで親友の千草や浩介の恋バナを聞いているだけだった響が、先生との恋に一生懸命になっていく姿がすごい露骨なのです。玉砕が怖くないのだろうかというほど、先生に迫りまくるので、ちょっともう少し落ち着いてくれないかなとハラハラもさせられました。あれだけ教師の家に生徒が入り浸れば、噂になってもおかしくないんだけどね…
伊藤先生は、生徒はみんなかわいいよと言い、先生として響に優しくしてきた。だけど、好意を持ってしまった響からすれば、それは本当に嬉しいことで、独占したいことで、むしろ先生としての優しさならいらない…とまで言ってしまうもの。諦めようとしても無理なの…先生ばっかり頭に浮かんで、他には悩むことなんてない。全部、先生中心で動いてるよ…一歩間違えばだいぶ怖いよね、これ。勉強も伊藤先生担当の世界史以外さっぱり点数がとれず、親にも反抗的になったり、進路も伊藤先生が近くにしろって言ったから…という安易なもの。そりゃ昔はそれで卒業して、それなりに働いたりしたら結婚してしまえばよかったかもしれないけどさ。これは今どきの高校生からすると、あんまり受け付けないよね。自分のことをおろそかにして、将来をつぶしていると言われてもしょうがないというか。だから、響が妥協せずに大学受験のために勉強をがんばったところは嬉しかったです。そうでなきゃ響の事を嫌いになってましたよ。個人的にね。なんでもかんでも、先生先生って言うのは自分が子どもだって言っているようなもんだ。
浩介のおかげ
一番素晴らしい働きをしていたのは、どんな時も浩介なんですよね…響があーだこーだ迷ったり、千草が恋しては失恋したり、そういうところを全部見て、理解してくれて、時には怒ってくれて。中島先生のことが好きだー!とガキがただ叫んでるだけじゃなくて、いっぱい立場とか考えて、精一杯背伸びして、何もできなくて落ち込んで…それでも前向きに生きている。彼みたいな異性の友達を持ったら、なんて幸せなんだろうと思うほどでした。
響が同年代の子といい感じになっているのを見て、伊藤先生が自分が傷つく前に響から離れようとしたときなんて…相手が先生であることなんか関係なく、伊藤先生をぶん殴ってくれました。もう彼なしには、響と伊藤先生のゴールインはなかったわけですよ。最高の友達!そうやって、自分のことを犠牲にしてでも守りたいっていう気持ち、最高です。みんな自分のことでいっぱいで、自分の悩みばっかりで、誰かの気持ちをちゃんと考えることができているだろうか…って振り返ってみると、あー自分まだまだ人間できてないなー…って思ってしまう、大人なんてみんなそうだね。体が大きくなって、見た目に威厳が出て、中身は本能的な感情にいろんな理性をつけて作った作り物だったりするんです。浩介みたいな人が大人になったら、付き合う人はきっと幸せ者だろうね。そして彼を友達に持つ人も、きっと幸せな人だろうな~そう思ってもらえるような人間になりたいもんだよ~…
千草と渚
惚れっぽい千草が、自分から好きになるのはガンガンいけるのに、好かれるのは慣れてない。そこに渚がうまーく入り込んで、しどろもどろ。かわいかったね。見た目はちょっと受け付けないんだけどね…唇厚い人、苦手…惚れっぽくて好きだ嫌いだをたくさん経験してきたからといって、本気で好きになり本気で好かれて付き合うという経験は千草も全然ない。あれだけ関谷先生好き~!って言ってたのに、悪いところが見えた瞬間にさーっと冷めてしまうあたり、結局その程度しか相手を想ってないってことだよね。かっこいいから、優しいから、自分は彼が好きなんだと思うのは違くて。だから、渚と付き合うようになって、初々しく、かわいらしい恋愛をしているなーと思いましたね。千草が受験一色になって、渚とのデートの約束をすっぽかしたときは、もうこいつら無理なんじゃないかと思ったよ…さすがに、自分のことばっかり考えているのもよくないし、相手のことばっかりで自分を犠牲にするのもよくないし…渚が先輩の都合考えずにかまってちゃんになっていると言えばそうだし、千草が彼氏をないがしろにしていると言えばそうだしね。客観的にみてどっちともつかないんですよ。だから、早く話し合いをしてくれよってこと!折り合いつけるには、二人でちゃんと話し合うこと以外にないんだからさ。ってことで、この2人は響に比べたらぎゃーぎゃーうるさかったけど、普通にかわいかったですよ。
いろいろな障害を乗り越えて
響と伊藤先生は、それほど危機ってなかったと思いますよ、結局ね。響が不安になって焦ったり、伊藤先生がいろいろ考えて引いてみたり。でもお互い両想いであることを確かに感じていてね。ばらされて飛ばされてとかもなく、平穏な日々だったように思います。てか伊藤先生、どんだけ生徒に好かれるんだよ…誰にでも誠実で優しい。だからたくさんの人に好かれる。やっぱロリコン?だいたいがそのせいで響が不安になるというものでした。モテる人と付き合う・自分とは違う世界を持っている人と付き合うっていうのは、経験のない人にしてみれば怖いよね。
伊藤先生は、今まで女の人に振り回されてきた分、響のことも受け入れていいものか悩んで悩んで、結局好きだなーってなりました…いや、どこで好きだなーってなったのか、あんまりわからなかった。響の感情の機微がダダ漏れなのに、大人はそれが分かりづらい。わざとかな?とも思うけど、もう少しテレるとか何かあればいいのに…
何はともあれ、お互いに遠慮しながら、ちょっとずつズレをすり合わせていって、将来も見据えながら無事響の高校卒業をむかえることができました。王道ストーリーで、不安要素もよくきくものばかりだったけど、登場人物たちがみんなまっすぐで、一生懸命な感じが爽やかで。青いなーって思える物語でしたね。ドロッと感があんまりないので、読みやすさがあります。
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