終始無難な奥手少女の恋物語
第1話の変化球が好き
それなりにかわいいのに、美の無駄遣い状態であるつばき。三つ編みの髪にメガネ、膝たけを守ったスカート。勉強しかやっていないという余暇の少なさ。まさに昭和な女であった。彼女の唯一の得意技はヘアアレンジがとびきり巧いということ。つばきの妹はおしゃれでかわいくて、彼氏もいて。つばきの自慢の妹である。そんな妹をかわいくしてあげて、喜ばれることがつばきの喜び…ってこの時点ですでに将来設計は完成してたよね。絶対美容師になる選択肢を選ぶよね。わかりやすかったわー。
そして、学校での椿京汰との最悪の出会い。ムカつくチャラ男が地味女に恋に落ちるのはよくある話なのだが、そこでまさかハサミで京汰の髪をぶった切るとは思わんかったわー…この表現は本当に印象的で、他の少女漫画じゃ絶対ない初対面なんだよ。立派に犯罪なんだが、長髪のチャラ男の髪を短くしてくれたことは本当に喜ばしい。
それ以外は特に変化球はないんだけどね。京汰がつばきに恋愛感情なんかないのにオトしにかかるという奇行を行うが、好きになっていってるのがよくわかるし、あまり心配がなかった。おかげさまでつばきはどんどんかわいくなり、京汰に釣り合うようになりたいと目覚めていく。女は男を意識しないと綺麗にはなれんのよ。恋してきれいになるのが鉄則である。あんまり卑屈すぎるとウザくて読むのをやめたくなってしまうのだが、つばきはかわいいもんだ。爽やかさがある。
それにしても、勉強を強いられているつばきと、自由に生きてる妹の差がひどいもんだ。過剰に長女・長男にプレッシャーかけるっていったい何時代を生きているんだろう。やっぱり心の底からのめり込めることをがんばらんとね。恋でも勉強でもなんでもいいから、やり切らせてあげるのが親の仕事だ。
天体観測にときめく男子の謎
チャラい男は、なぜ夜空が好きなことを隠すのか…。別にいいじゃないか、宇宙好きでかっこいいじゃん、なぜ公言しない?真面目に目を輝かせてがんばってるのがそんなに恥ずかしいかチャラ男め。テキトーになんでもこなすのがカッコいいわけじゃない。デキることはカッコいいが、がんばっているからかっこいいんだよ。午前二時に望遠鏡かついで天体観測に学校の屋上へ駆け出してしまえ。
男子のこだわりと女子のこだわりは相容れないことがよくある。家事をやることに意義があるのか、クオリティが高いところに意義があるのか、といったように。がんばってやってることを評価されたいのが女子で、確実な効果と結果をもたらして評価されたいのが男子…つまりは、理解できなくて当然。知ろうとできなくて当然である。あまり気にするもんじゃないのである。
で、そういうとき必ず登場するのが男性寄りな考え方ができる女性。右も左もわかりませんっていういかにもな女子の強力なライバルとなるのだ。ただ、一緒にいてどちらが安らぎの存在となるかは、男の性格次第。どっちとうまくいきやすいなんてことはないし、この漫画ではつばきが京汰にとっての最愛であって、そんなに心配するものでもなかった。不安になるのは自信がないから。それは相手を傷つけることもあるんだよ。
男にとってのお母さんって偉大なんだよ
男なんてしょせんはマザコンだ。大なり小なり差はあるが、母親をあらゆる参考にする男が世に多い。愛に飢えたやつは、京汰みたいに当てつけのように行動するか、もしくは自分にはなかったからこそ育てていこうとするか、どっちかになる。小さいころお母さんが家から出て行って…って顔を曇らせる男を基本は信用できない。女が悲劇のヒロインぶってるのもたいがいウザいが、男が悲劇のプリンスだからこうするんですって振りかざしてるとますます鳥肌ものだ。自分がいちばん苦しいなんて思ってんじゃねーよと言いたい。まぁ仕方ない。どんな子どもも母から生まれるのである。母の愛情次第でいかようにも育つのが子どもである。
つばきの後押しもあって京汰は母親と和解。チャラ男を卒業してガチ男になった。予想通りで裏切りなく、まったくもって展開はつまらない…。お父さんもさー母親いなくなったならそれなりに覚悟して挑めよって思うわ。生きていくのに、苦労のない生き方なんて絶対になくて、そのまま嫌になって逃げるもよし、立ち向かうもよし、何やったって犯罪だけしなければどうにか生きていけると思うんだわ。そういうのを支えてくれるのは、母親なの。子どものことを考えて、夫婦の在り方をとらえてもらいたいよ。
ところかまわずエロエロに
おなじみのラブシーンね。作者の水波さん、好きだねーそういうの。別に過激じゃないけどさ、シチュエーションに常に女子の妄想をぶちこんでくる。一度は妄想するんだよ、ところかまわず、大好きな彼と、ドキドキしながらイチャコラ…恥ずかしいのを楽しむわけである。襲われたいわけじゃないけど襲われそうになってみたかったり、それを華麗に助けてもらいたかったり、横恋慕さまくりたいし迫られたい女子。現実には絶対ないから、やはり漫画で楽しもう。
そして本当に好きな相手とは全然そういう甘い展開になれないというビビり。いや、京汰、傷つけたくないからって待つのもいいけど、もう少し迫れ?そしてつばき、お預けくらわされる男の気持ちをもっとわかれ?1つ許したら止まりません。それでいいのよがんばって。怖いって恥じらってるのがかわいいんだけど、恥じらいつつ許してやってほしい。したたかに、うまーく男に花を持たせてほしい。
いつも思うことがある。傷つけるのに手っ取り早いのが貞操略奪だが、なぜあんなにタイミングよく救われるのだろうね…完遂されたら子どもには悪影響だろうが、未遂になるもんだってことが伝わらないといいなと思うよ。
遠距離恋愛もなんのその
遠距離恋愛だって大丈夫。そう言って続くカップルはこの世の割合ではそんなに多くないと思う。だから、これを乗り越えられたら、まず結婚はできるんじゃないかな。問題は結婚してから、いつもいる喜びをかみしめられるかどうかである。京汰もつばきも自分のやりたいことがしっかりと決まっているので、その場合、お互いをより尊重する行動が大切になると思う。そんなのみんな当たり前でしょって思うかもしれないが、大人になるほど痛感するんだよ、誰かにワガママを言いたいって。お互いのことを好きだからこそ、自分を押し付けることをどれだけ抑えて助けてあげられるか。これにかかってる。
今作ではきれいにハッピーエンドを迎えているので、水を差すのはこれくらいにしよう。遠く離れているからこそ、深まる愛があることも確か。あとは相性次第である。頭がいいからこそめんどくさくなる関係もあるので、常に本心で相手と接していってもらいたいなーと思いながら読み終えた。
全体として絵は安定しており、長髪の京汰以外はまるっと素敵だったと思う。やはり髪型って重要…。ピュアだからこそ、俺なんて…って思ってしまって他人を傷つけたり自分を傷つけたりした京汰。私はこれでいいの…ってあきらめていたところから、本気でほしいものを諦めない気持ちを覚えたつばき。京汰のほしいものはつばきがくれる。安定のリア充であった。ずいぶんと長く話が続いたが、行ったり来たりめんどくさくてだらけた部分もちらほら。悩んで迷って進むのが人生だからね。許容範囲内だろう。内容知ってるのに何回も読みに戻ってきてしまうのは、ピュアが一番自分から遠いからだろうか。
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