驚きのスタート後は無難に
スタートの衝撃
一番良かったのは、1巻だと思いますよ。成績優秀・地味女を落とす賭け事を楽しむ長髪イケメンが、三つ編み昭和女に「髪を切られる」という衝撃的な幕開けなのですから…キャラクター的にはありきたりだなと思ったんですが、まさかつばきがハサミで「その髪、うっとおしいのよ!」って京汰の髪の毛を切っちゃうっていう行動!立派な傷害罪なんですけど、なんか新しい爽快感があったな~…個人的に、長髪の男の人が苦手なのもあり、ちょっと気分もすっきりするというマジック。驚きました。
また、地味女でも、かわいい子への憧れはきちんと持っているつばき。正直な感じがウケがいいと思います。スカートをちょっと短くしてみようかな、髪をかわいくしてみようかな、でも自信がないな…誰かにかわいいと言われたことがない・誰かのためにかわいくなろうとしたことがない・身の丈に合っているかどうかわからない…女子に自信をつけさせてくれるのって、やっぱり男子だよな~と、再確認できますね。きっかえさえあれば、どんな人でも今よりきっとかわいくなれる。王道少女漫画で、友だち想いで妹想いなお姉ちゃんキャラクターのつばき。それほどウザさもなく、爽やかに仕上がってますね。
勉強をしなければならないという親からのプレッシャーと、自由にかわいく生きる妹の間に挟まれて、面倒ごとを全部引き受けたような気がする自分。美容師になりたいという夢、京汰という彼氏、親の期待…ピュアさを忘れている人は、いろんな葛藤を感じながら成長していくつばきの姿に勇気づけられたりもするんじゃないでしょうか。
宇宙好きな男ってよく使われる
チャラい男の子で、なんかこう…夜空に輝く星が好きみたいな子、なんでたくさん使われるんですかね…?望遠鏡とかプロ並みのやつ持ってて、それはもう童心に帰って夢中になって夜空を観測する。女の子って、夜空をキレイだとは思うけど、研究したい・解き明かしたいとは思わないじゃないですか。キレイなものはキレイで、気分が浸れるからいいというか。男の子はそれだけじゃ済まないものらしい。
いろいろ考えてみると、男の子のこだわりって女子には理解できないってことがよくありますよね。家事全然やらないくせに洗濯だけは異様にこだわり出すとか、普段なんでもテキトーに済ますくせに仕事とか趣味のプラモデルとかはすごい一生懸命で、絶対にその時間は譲らない。女子にはよくわからない・でも彼は確かに楽しんでいて子どものように輝いている・平凡ではないレベルの高さがある…といった要素を合わせていくと、宇宙工学とか星の話がぴったりとハマるのかもしれないです。
この物語の中では、京汰の考えに共感する知的な女性が恋のライバルとして出現します。自分の好きなものを認めてくれる女性ってすごい貴重で、男にとってみればこの上なく嬉しいことなんでしょう。自分が認められたような気持ちになるし、逆にそういう男の重要なアイデンティティみたいな部分を褒めれる女性ってモテると思う。でも相反してはいけなくて、尊重してあげなきゃいけないから扱いが難しいんだわ…。
お母さんと確執ある男ってよく使われる
これまたよくある話で。お母さんとの間にいろいろあった男の子は、地味子を落とす賭け事をして相手も自分も傷つけていましたっていう話。愛に飢えて相手を試すようなことをしているんだね…みたいな。うわーちょっとウザい。悲劇の王子様ぶってんじゃないよ。怖がってないでさっさとケリをつけちまえ。自分が一番不幸なのかい!それを自分と関係ない誰かに押し付けるのはお門違いだろうよ。そして案の定つばきに促されて、京汰は母親と向き合い、今までの自分を悔い改めて、新しい人生を歩もうとするわけです。うーん予想通りすぎる。安定感ありすぎる。親からの虐待、普通はあるはずのものがなかった家庭、そこで育つ子ども。これぞ「不幸」だろうというものを並べている気がしてならないので、ちょっと体がかゆくなるのが残念ポイントかなと思います。
子どもが大人になるときに、親の存在は避けては通れないものがありますね。今までお母さんお父さんがどんな気持ちで自分を育ててくれていたのかとか、自分は何を思い生活していたんだろうとか、振り返って考えて、将来を見据えていくのが高校生ってやつです。必要なら、ぶつかり合うことも必要になるでしょう。そりゃー全部うまくいくわけはなくて、思い通りにならないことや、幸せなことや、嬉しいことや、つらいこと。いろいろな気持ちとその処理・立ち回り方を覚えていくために、10代はあったんだなーって思えてきます。
水波先生お得意のエロ
本当に水波先生はこの手の過激シーンがお得意ですね。いや、そんなに過激というほどでもないか。重要な部分は隠れているしね、うん。過激というよりは、一度は妄想してしまうであろうシチュエーションを代弁して表現してくれているという正直さがあるかなと感じます。女の子なら、大好きな彼との甘い時間はところかまわずというシチュエーションを実は想像しているし、襲われそうになったら助けてもらいたいし、でも実はそれくらいの魅力が自分にあったらいいなとか思っているし、複数の甲乙つけがたい人たちから求められて逆ハーレムを味わいたい。水波先生の作品ではぜーんぶ見れちゃいます。
本当に結ばれたい人の前ではめっちゃ怖がるというお約束もあり。後半に入るまでまったくスキンシップがないつばきと京汰。1つ許したら止まらなくなるから…これもお約束。期待を裏切らない引っ張り具合と決め台詞ですね~…実際にはこんなことはないわけよ。怖くない、というかむしろ知りたいと考えているものです。しかしそれを口から出すことは大和なでしこ的にNGであるってことですよね。がっつく女はがっつく男にしか好かれないことが多いから、スペックの高い男を前にしては本能をひた隠しにする女のしたたかさ。恐るべし。
2人以上の男を使い、悪―い女が目障りな女を襲わせようとする。これ、同じ作者さんの違うシリーズでもよく登場します。汚れがどうとか、心がどうとか言うのに、外せないイベントなんでしょう。
お互いの夢のために離れて再会を誓えるか
これができるカップルは、まず別れないですね。しかし、当面は、です。なぜかというと、お互いがお互いの仕事を絶対に大事にするはずなので、いざ一緒に暮らそうってなったときに何を優先して生活していくかはきっと綿密な話し合いが必要になるんですよ…必要なときに必要な分だけ同じ時間を共有できれば生きていけるという関係もあるし、どちらかがどちらかをサポートするほうに回るという手段もある。そこは話し合い次第だけど、つばきと京汰みたいに、思いやるあまりに本心を言えないようなことをぐずぐずやってると、お別れへのカウントダウンが始まることでしょう。だからね、きっと私たちなら何があったって大丈夫よ…!なんてこと、まったくお約束できないわけです。何が大切で、これからどうしていくのかっていうことは、壁にぶち当たるたびに2人が正面から向き合って考えなくてはいけないことなんですよね。なので、重要なのはハッピーエンドのその後の部分なんだよ。さすがに若者向けの少女漫画では、キレイな終わりが理想的になるので、そこまでは求めてはいけないことなのかもしれませんが…。2人で協力して生きていきたいと思った時に、「頼る」のではなくて「尊重しあう」ということを忘れないようにしたいものですね。
ストーリー的には、よくある話を丁寧に、という印象が強いです。1巻での衝撃行動からその後は安パイだった気がしているので少し展開は遅めかと思います。それでも、ピュアってどういうことだっけ?と思った時には読みたくなりますね。
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