つくることへの愛情が人の心を揺さぶる 人生に爪痕が残るドラマ - 重版出来!の感想

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ドラマレビュー数 1,147件

重版出来!

4.384.38
映像
4.13
脚本
4.63
キャスト
4.13
音楽
4.00
演出
4.50
感想数
4
観た人
9

つくることへの愛情が人の心を揺さぶる 人生に爪痕が残るドラマ

4.54.5
映像
4.5
脚本
4.5
キャスト
4.5
音楽
3.5
演出
4.0

目次

類い稀なる良質なドラマ 脚本が秀逸

重版出来という言葉を、このドラマ(原作)で初めて知ったという人も少なくないと思う。出版業界の裏方にスポットをあて、漫画業界の裏事情が満載のこのドラマは、視聴率もそこそこだったらしいけれど、ツイッターではかなりの盛り上がりだったことから、リアルタイムでの視聴率で判断されることが惜しいというか、なんなのそれ意味あるの?と言いたくなるくらい、良質のドラマだ。脚本家は、『逃げ恥』や『掟上今日子の備忘録』などの野木亜紀子さん。原作を丁寧に再現しながらも、要所において原作をさらに深めるような一手が加わって、やわらかく仕上がった『重版出来』。野木さんは『重版出来』と『逃げ恥』で年間脚本賞を受賞されている。『逃げ恥』ブームの割に、『重版出来』があまり脚光を浴びれていないように思う。原作ありきではあるが、漫画ではコマ割りの隙間に、読み手の主観が入る。そこをドラマでどのように演出と脚本で繋いで、しかも説明しすぎず視聴者を誘っていく塩梅どころが見事だった。脚本の功名さと、キャスト、演出、照明さんの職人魂までもが見て感じられる、ドラマチームの愛と努力が結晶化した類い稀なる作品となっている。

ハマり役のキャスト陣 それを支えるスタッフ陣

五百旗頭敬(いおきべけい)役の俳優オダギリジョーさんが、打ち上げパー ティで漏らしたという『やっぱり僕にはあまりドラマは向いていないというか。良いものを作っても数字だけで評価されてしまうんで、それがちょっと合わない です』という発言。会場は一瞬で凍ったというが、オダギリジョーさんがどれだけ熱意をこめていたかを伺い、胸が熱くすらなった。それを言わずにおれなかっ た気持ちも、本当に良い物を皆で作れたからという信念がないと言えない一言だと思う。オダギリジョーさんが演じた五百旗頭役は、仕事への熱さを表には出さず後輩の面倒を見る優しい兄貴役でありながら、濃厚なキャラひしめくなかで柔軟剤の役割でもあった。そんな五 百旗頭がハマり役だったオダジョーに、ドハマりする視聴者たち。オダジョーの魅力だけでなく、主役の黒木華さんの魅力も存分に引き出されていた。1回のド ラマを見ただけで、誰か一人のヒーロー役にライトがあたるでなく、脇役全員がひきたっていて尚カオスとならず見事なバランスで見ていて心地よかったのは、 現場においてキャストも裏方スタッフも全員が一丸となって、ひとつのゴールに向かっている真摯さが滲み溢れているからだと思う。

誰もが心のどこかに潜める闇

毎週、誰かが主人公になるような展開が、毎回新しいドラマを見ているようで楽しめる。ユウレイ君と呼ばれる冴えない営業マン。大御所漫画家に、新進気鋭の漫画家。10年選手の有名漫画のアシスタント。皮肉家でヒール役の先輩編集者。時代の移ろいを見つめながら、現代を生き抜く暑苦しい編集長。会社のために己の運を全部貯めている出版会社社長。などなど、自分では到底そのキャリアになることはないだろう人を通して、どこか学べる要素があったり、自己投影できたり、なぜか毎回ひきこまれて、ドラマを見終わる頃には、励まされたり、癒されたり、勇気が出る。それはどんな職種、どんなキャリアを持つ人にも、人としての感情、事情があり、それはどうしようもなく愚かで愛しいものだったりする。そんな誰の心のなかにも潜む闇を、重苦しくなく愛情たっぷりに引き出されていることに、きっと視聴者の琴線は揺れるんだろう。自分でも気付かなかった(認められなかった)本音に、向き合いたくなるような勇気をこのドラマはくれる。

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他のレビュアーの感想・評価

どうして視聴率が伸びなかったのか不思議なドラマ。

本が売れない時代に突入した出版業界のお話。本が売れない、若者の文字離れと言われて、随分経つと思いますが、私個人は活字中毒で、ほぼ毎日必ず本を開く。しかも、電子端末で読むのは嫌いで、印刷された書物を今も好みます。そして、小学生の時から漫画も大好きというそんな私には、非常に興味深く、面白い作品で、その内容はとてもとても深く濃かった。毎週楽しみに見ていました。永山絢斗さん怪演が目を瞠る。このドラマで非常に強烈な印象を残したのが、俳優の永山絢斗さん。親に虐待されて成長した、とてつもなく大きな影と闇を背負った彼がアルバイトをしながら命を削って生み出したかのような、鬼気迫る漫画を渾身の力で書いていく姿が圧巻。その彼を見出し、支えていく主演の黒木華さんの前向きな姿勢と明るさが物語をぐいぐい引っ張っていきます。陰の永山絢斗さんと陽の黒木華さんのコントラストに、永山絢斗さんがアシスタント先で知り合う才能...この感想を読む

5.05.0
  • Toatch21Toatch21
  • 210view
  • 1143文字
PICKUP

何度も号泣させられました

スタッフの力量ドラマ放送当時はキャストに花がないなと思って単純にスルーしていましたが、今年放送の「逃げるは恥だが役に立つ」にハマって次回放送分が待ちきれなくなったので、逃げ恥と同じスタッフで昨年作成された「重版出来!」を見て待ち時間を紛らわすつもりでした。が、この作品にもどっぷりハマってしまいました。脚本の野木亜紀子さんはじめ、スタッフの力がすごいのだと再認識しました。視聴者を飽きさせないセリフ回し、アップテンポの展開、カット割り、小ネタ、素晴らしいチームだと思います。毎回黒木華演じる黒沢心の着ているシャツがかわいくて気になりました。レトロな柄に大きめの丸襟のものなど、主人公の雰囲気に合っていてかつめちゃめちゃおしゃれです。荒川良々さん演じる壬生平太のTシャツも毎回笑えました。シリアスなシーンでもふざけたデザインがいいアクセントになっていました。衣装さんもハイレベルなんですね。夢を追う者...この感想を読む

4.54.5
  • nojinoji
  • 106view
  • 1051文字

思ってたより面白かった

だんだん面白くなってきた正直主役が黒木華かぁという印象ではありました。演技力はあると思うけど、朝ドラではうまいなと思っていましたけど、主役じゃないんだなぁって感じでしょうか。脇役でこそ花開くといいますか?ちょっと見栄え的に地味ですかね。本来は別な人が主役だったけど、急きょ黒木さんに決まったという噂もありますがどうなんでしょうね。そうだとしたらなんとなく納得?最初は前のドラマの続きでそのまま見てただけなんですが、流し見してたらなんだか面白いんじゃない?と思えてきて、それからはあえて選んで見るようになりました。キャスト自体は豪華だと思いましたが、女性がほとんど黒木さんだけでなんていうか目の保養がない!と思っちゃいました。こういうドラマってめずらしいですね。強いて言うならちょっとだけでてた漫画家目指してる高校生の女の子がかわいかったけど・・・漫画家って才能だよね出版の世界がわからなくても、こ...この感想を読む

3.53.5
  • みかんまろんみかんまろん
  • 83view
  • 1058文字

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