青春が幻影であり、愛が幻想にすぎない時代の男の虚しさを、アメリカの精神風土の荒廃の中で強烈に描いた 「愛の狩人」 - 愛の狩人の感想

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青春が幻影であり、愛が幻想にすぎない時代の男の虚しさを、アメリカの精神風土の荒廃の中で強烈に描いた 「愛の狩人」

4.04.0
映像
3.5
脚本
4.0
キャスト
4.0
音楽
3.5
演出
4.0

この「バージニア・ウルフなんかこわくない」「卒業」「キャッチ22」などの名匠マイク・ニコルズ監督の「愛の狩人」は、ある種の傑作だと思う。だが、恐らくこの作品は、女性にとっては残酷極まりない映画になっていると思う。とにかく、徹底して"男の真実"を描き、本質的に女性を拒否しています。

この映画は、1940年代後半に青春期を過ごし、いま"中年"と呼ばれるようになった男たちのセックス・ライフをたどっていきます。性格の全く対照的な主人公たちは、東部の大学時代からの親友同士。この二人は、美しい女子学生スーザン(キャンディス・バーゲン)に目をつける。

純情派のサンディ(アート・ガーファンクル)がおずおずとスーザンにアタックすれば、肉体派のジョナサン(ジャック・ニコルソン)は、ひそかに素早く手を出して、先に彼女をモノにしてしまう。だが、スーザンは、結婚相手に純情派のサンディを選ぶ。

そして、数年後のニューヨーク。いまは社会人として出世街道を歩む二人の男たち。医師となったサンディは、幸福な家庭を自慢するが、独身で税理士になったジョナサンは、飽くことなく情事を追い求めている。その相手の一人、グラマーな美人のCM女優(アン・マーグレット)との濃厚な快楽場面と、やがて襲ってくる破局の空虚感がもの凄い。それは、郷愁にあふれた学生時代の描写と対応して、胸を突き刺す痛みとなって迫ってきます。

それから、時が流れ、男たちも年を重ねて、彼らはもう立派な社会の中堅層になっている。だが、出会えば女の話に終始し、時には平然と愛人の交換もやってのける-------。

かつての気弱な優等生サンディも、いまや進歩派気取りのヒッピー風の感じで、若い情婦をとくとくと連れ歩く俗物に成り下がっているし、一方、あれほど精力家だったジョナサンは、不能となり果てて、年増の娼婦に、男としての自信回復をすがるという無惨さだ。

思えばこの二人の男は、女性を全く性の対象としてしか扱っていない。そうした彼らの背後に、現代アメリカの"精神風土の荒廃"が浮かび上がってくるのです。

青春が幻影であり、愛が幻想にすぎない時代の"男の虚しさ"を、これほど強烈に描いた映画も珍しいと思う。

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