天使のツラノカワ 龍世を選んだ理由2つ
主人公美花は、最初に出会ったのは紫生ではなく龍世。でも唐突にお金を渡して恋愛的には完全にスルーしちゃいます。それなのにラストには龍世に鞍替え!
・・・一体何故?
余りの突然の展開にこじつけか?と少し思いましたが、美花には美花のふか~い心理があったのかな?
多少こじつけかもしれませんが・・・
何故なのか!私なり考えてみました。
ポイントは2つ!
2つ理由が考えられるのではないでしょうか。
1つは、美花が自分の「ツラノカワ」が剥がれルシフェルになることを恐れたため。つまり天使で居続けるため、という理由です。
龍世との付き合いは本当に平和ですよね。暖かく見守っていてくれる感じ。安心、安全、そのままでいいよって感じです。それに対して紫生と付き合うとなると大変です。嫉妬で平常心でいられなくなり、天使のツラノカワが剥されて悪魔ルシフェルが表れてしまいます。
つまりこれは、天使で居続けられる龍世との道を選ぶか、ルシフェルになってもいいから紫生をとるかという心の中の戦いだったのです。
途中紫生からの誘惑もありましたが、そこは天使美花の育ちが物を言ったということでしょう。
聖書を開いてしまったシーン(4巻p178)で自分の揺れていた感情に神様が怒ったと感じたことが大きく影響し、ルシフェルとなるような紫生への感情は捨てて龍世を選んだのではないでしょうか。
2つ目は、楽園である3人で暮らしていた家のことを考えての行動だったという理由です。美花が紫生、沙羅と暮らしていた家のことを大切に思っていた表現は何度も描かれていて、それは聖書でいう人間の楽園ととることもできます。
しかしもしこのまま沙羅への嫉妬心が強くなれば、もしくは紫生と付き合えることとなっても、今までの平和で楽しかった楽園は壊れてしまいます。
天使美花は、ルシフェルの気持ちを封じ込め、楽園を守ることを優先したのではないでしょうか。
その後龍世への愛の深まりについて
そんな不純ともとれるような動機で龍世を選んだ美花でしたが、その後龍世への愛は確かなものになっていきます。
ルシフェルは、天使と戦う時に龍を共にしています。その後この龍はルシフェルと共に地の底に落とされますが、龍世の龍をモチーフにしているのではないかな?と思います。それを示すものとして、龍世は堕天使(ルシフェル)と呼ばれていた沙羅と近い存在でしたし、過去に女に自殺され、心に大きな傷を負い、地の底をはいずり回っている状態でした。
ジョン・ミルトンの「失楽園」では、楽園から追放され打ちのめされた人間に天使が救いの道があると伝えます。
車の中で涙する龍世は、「カルナバル」で成功していた「楽園」から追放されてしまった人間と位置付けることができるのではないでしょうか。天使美花はそんな龍世に、愛をもって救いの手を差し出さずにはいられなかったのでしょう。
まとめ
この作品は、主人公が敬虔なクリスチャンで聖書の一説が出てきたり、バックグラウンドにキリスト教があるので、登場人物やストーリがそれになぞらえて作られてはいるのですが、この人はこの役だとはっきり決まっているわけではなく、色々なイメージを混合して出来上がった作品だと思われます。
しかしラスト、美花が龍世に対し母性愛なのではないか?と捉えていた感情は、天使から人間への救済の愛、守護愛と考えた方がつじつまが合うのではないかと思います。
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