ARIAの深読みレビュー - ARIAの感想

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ARIA

5.005.00
画力
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ストーリー
4.83
キャラクター
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設定
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演出
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感想数
3
読んだ人
3

ARIAの深読みレビュー

5.05.0
画力
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ストーリー
5.0
キャラクター
5.0
設定
5.0
演出
5.0

目次

現実にもなるかもしれない!未来の火星と地球の形。

西暦2300年頃、テラフォーミングされ「水の惑星」として生まれ変わった火星、通称「アクア」を舞台にしている「ARIA」では、アクアだけではなく地球のことも語られています。

主人公の水無灯里は「マンホーム」と呼ばれる地球からアクアへと、ウンディーネになるためにやってきます。憧れのアクアに降り立った灯里が、まず一番感動したのは「全て自分たちでやっていること」です。

マンホームでは「便利」と「効率化」が大事にされていて、買い物や調理なども「便利」と「効率化」によって自分の手で行うことはほぼなくなっています。買い物もネットが主流で、外に出ることも少なくなっているようです。

テラフォーミングされ、水の惑星へと生まれ変わった「アクア」ではマンホームとは対照的に「便利」と「効率化」を求めません。料理や買い物も自分の手で行い、朝は、空飛ぶバイクに乗って配達しに来た「シルフ」が産みたての卵を持ってきたり、どちらかと言うと手間がかかる方法で生活をしています。

更にネオヴェネチアでは、移動手段は徒歩かゴンドラ、「ヴァポレット」と呼ばれる水上バスのみで、車などは通行禁止です。そういう部分からもゆっくりとした時間が流れ、せっかちな人はいないのではないかなと思います。

私が「ARIA」を読んだ時に、まず衝撃を受けたのがこの舞台背景です。近年「地球温暖化」が進行していて、近い将来、スバル諸島などが海に沈むと言われています。昔から「水の都」として多くの観光客を魅了してきたイタリアのヴェネチアも同様に水没してなくなるという見解が強いのをご存知ですか?

年々、ヴェネチアでは少しずつ水位が上昇しており、大雨などの際には冠水することが多くなったそうです。そこで、ヴェネチアが水没してなくなる前にどうにかして火星に移住する環境を整えたいという事で、火星移住計画が急ピッチで進められています。

そんな話を聞いた後に「ARIA」に出会った私は「未来はきっとここに向かっているに違いない」と進められている火星移住計画の完成系を見た気がしました。実際、舞台となるアクアの観光都市「ネオ・ヴェネチア」は、マンホームでは水没してなくなってしまった「ヴェネチア」の風景や風習を再現しています。

サンマルコ寺院などの建物もマンホームからそのまま持ってきた設定になっていて、実際に私達が行くことができるイタリアのヴェネチアと酷似しているので、聖地巡礼をしにヴェネチアに訪れる人が作品が終わった今でも多いそうです。西暦2300年は遠い未来ですが「いつの日か、この世界が現実になるかもしれない」と火星に旅行したり、移住することを考えるとワクワクしちゃいますね!

ネオ・ヴェネチアの「ウンディーネ」とヴェネチアの「ゴンドリエーレ」の違い

ネオ・ヴェネチアの花形職業と言えば、灯里たちが目指す「ウンディーネ」です。各会社ごとのウンディーネ制服を身に纏い、観光案内などをしていますが、実際のヴェネチアでは全く違います!ヴェネチアではゴンドラ漕ぎを「ゴンドリエーレ」と呼びます。

ゴンドリエーレになれる人数は限られていて、ゴンドリエーレ養成所を卒業して、試験に合格しても枠が埋まっていれば、枠が空くのを待つしかないそうです。また、ゴンドリエーレは900年という長い歴史を持っていますが、2010年に初めて女性ゴンドリエーレが生まれるまでは、大変な力仕事だったため、ずっと男性しか務まらない職業でした。

そして、一番の大きな違いは「観光案内はしない」ということです!実際に運河を渡らないといけない「ため息橋」やカナルグランデを渡るなど移動手段として使われるだけで、ウンディーネのように観光案内はしません!

実際のゴンドリエーレが扱うゴンドラは、ARIAではペアとシングルの練習ゴンドラとして使われる黒いゴンドラで、プリマが扱う白を基調とした華やかなゴンドラではありません。つい最近まで男性しかいなかったゴンドリエーレの服装は、ゼブラ柄のシャツや普通のワイシャツなどシンプルなものが多く、移動手段として使用することが多いゴンドラが景観を損なわないためや、シンプルな服装でも似合うように黒いゴンドラなのかもしれませんね。

それに比べてウンディーネは、サンマルコ広場を始め、ペアの昇格試験の試験場所にもなっている希望の丘など少し遠い場所にも観光案内をしながら、ゴンドラの旅を楽しませてくれるのです。また「ARIAカンパニー」「姫屋」「オレンジぷらねっと」を中心に様々な会社があり、会社ごとに白を基調とした各会社ごとのモチーフカラーを取り入れたオリジナルの制服とゴンドラを所有しています。

ヴェネチアとは対照的に、ネオ・ヴェネチアのウンディーネは女性しかおらず、制服のオリジナル性や、観光案内をするため、観光地を楽しむだけではなく、華やかなゴンドラなどを見て視覚に映りこむ身近なものも楽しむという目的もあるのではないかと思いました。

ケット・シーと水無灯里の関係って?

様々な登場人物と一緒に、ありふれた日常をかけがえのない日常に変化させていくのが、ARIAの魅力の一つです。そんなARIAの日常には、時に不思議な出来事も起こります。中でも一番不思議なのは、ケット・シーだと私は思っています。

アクアに存在する全ての猫の王様であり、伝説上の存在だと言われているケット・シー。これまで、七不思議で語られるほど名前は知れ渡っていましたが、誰も見たことがないケット・シーを初めて見たのが灯里です。

「漆黒の君」に連れ去れそうになる灯里を助けたり、ネオ・ヴェネチアの一大祭りであるカーニヴァルで「カサノヴァ」をしていたりなど、人間が気付かないだけで人間の前に現れるおちゃめな部分もあります。アリア社長や、ヒメ社長が参加する猫の集会でもケット・シーの姿が確認され、灯里より縦も横も二倍以上ある巨体です。

灯里といえば、作中で何度もパソコンを開き、メールのような文章を送っていますよね。ネオ・ヴェネチアでの日常や、不思議な出来事など灯里らしい目線で、文章が綴られています。そのメールを原作最終話で、ケット・シーが持つパソコンで受信している描写から、灯里のメル友相手の一人だと判明しました。

ファンの間でもケット・シーと水無灯里の関係は、様々な考察がありますが、ここからは私が考える二人の関係を考察していきます。

結論から言うと「灯里がアクアに来る前から本人は気が付いていなかったけど影ながら見守っていた」です。灯里が出すメールは、いつも特定の宛先がありません。普通のメールなら、特定の宛先がないと届かないので、灯里が出しているメールは「ブログの投稿」だと思います。

里のように素敵なトキメキは誰かに共有したいという思いが強い子であるならば、日々の日常を切り取ったブログをしていてもおかしくはありません。そのブログをどこかで見つけたケット・シーは、灯里が持つ何気ない日常をかけがえのない日常に変えてしまう魅力に惹かれて、読者になったのではないでしょうか。

また、ケット・シーは、自身のパソコンを持っていることから、人間の言葉などを理解することができる火星猫とは比べ物にならないほど、人間並みに知能が優れた妖精だと推測できます。灯里が体験する不思議な出来事のいくつかは、ケット・シーが登場するため、ケット・シーには七不思議で街の守り神と言われているように、不思議な力を持っていて灯里の様子を観察し、夢であるプリマになるまでの成長を見守っていたんだとしたら、素敵だなと思います。

暁の恋模様

ネオ・ヴェネチア沖の浮島で、半人前サラマンダーとして働く暁が恋している女性といえば「水の三大妖精」の一人であるアリシアさんですよね。アリシアさんの声を聞くためにARIAカンパニーに電話をしたり、アリシアさんと会った時は緊張で喋れなくなるなど、恋をしている描写がありますが、実際は恋ではないと私は思っています。

何故かというと、灯里との交流が非常に多いからです。この事については後述しますが、暁のアリシアさんに対する思いは憧れが強いと思います。恋愛漫画にありがちですが「恋心」と「憧れ」を勘違いしているという展開です。

さて、灯里との交流が非常に多い暁ですが、私は本編では語られませんでしたが、暁は無自覚で灯里に「恋」をしていると思っています。よく考えてみると「あぁ、確かに」となる描写がたくさん詰まっているんです!

私が特に、暁が灯里に恋をしていると考える原因は2つあって「もみあげいじり」と「ボッコロの日」です。暁といえば、灯里のことを「もみ子」と呼んだり、もみあげをいじったりします。確かに灯里の髪型は特徴的ですが、灯里の髪型について追求したり、触れたりするのは実は暁だけなんです。からかって遊んでいるだけなように見えますが、男の子は好きな子ほどいじめてしまうって言いますよね!

続いて「ボッコロの日」ですが、これは私が原作の中でTOP5に入る好きなお話です。男性が愛する女性に一輪の薔薇を渡すのが「ボッコロの日」の慣わしですが、アリシアさんに渡すために灯里を使ってまで大量の薔薇を集める暁。結局、二人でいるところをアリシアに見つかってしまい、灯里への薔薇だと誤解されたのがショックで倒れこみ、薔薇がアクア・アルタで水没している街に広がります。その薔薇の中から暁が灯里に一本の薔薇を渡しますが、これこそ灯里への恋心の表れだと私は思っています!

あくまで個人的な考察ですが、薔薇が街に広がる描写は暁だけではなく、多くの人が抱えるアリシアさんへの憧れ、ファンとしての好意を表していると思います。多くの人が抱えるアリシアさんへの思いの中には、もちろん暁の思いも入っていました。

しかし、1本の赤い薔薇を灯里に渡したことで、多くの人と一緒なアリシアさんへの思いとは違う特別な思い=「恋心」を無意識に灯里へ向けたのではないでしょうか。

灯里がプリマになってからも、アリシアさんがいないARIAカンパニーに、ちょこちょこ行っていることから、無意識か徐々に灯里への恋心を確認している頃だと勝手に思っています。

灯里たちは、水の三大妖精の跡継ぎになることができるのか

灯里、藍華、アリスの三人がプリマになった後、アリシアさんがウンディーネを寿引退して、水の三大妖精は晃さんとアテナさんの二人になりました。この二人もいずれは、引退をする時が来るでしょう。その時、業界の期待を一身に受けるのは、三人の愛弟子である灯里たちであるのは間違いありません。

個人的な考察から出した結論は「なれる」です。正確に言うと、水の三大妖精の愛弟子という周りからのレッテルを剥がして、新たな水の三大妖精になるはず!

藍華は、プリマ昇格直後に姫屋の支店長を任されるほどの力量と、晃さん譲りの感受性とカリスマ性を持っています。

アリスは、飛び級昇格したにふさわしいオール捌きと、アテナさん譲りの舟謳の才能を持っています。

灯里は、ありふれた日常をかけがえのない日に彩る天性の才能と、アリシアさん譲りのネオ・ヴェネチア関連の知識を持っています。

プリマ昇格後、藍華とアリスは指名を多くもらい、多忙を極め、灯里も徐々にお客さんを増やしている事から、灯里の魅力は間違いなく多くの人に広まっているでしょう。

近い将来、新たな水の三大妖精としてネオ・ヴェネチアに広まるのは間違いありません!

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他のレビュアーの感想・評価

アニメ化がなければ成功しなかった?

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