シャーロック・ホームズシリーズの名作ボヘミアの醜聞を色々な視点から考察してみました - シャーロック・ホームズ「ボヘミアの醜聞」の感想

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シャーロック・ホームズ「ボヘミアの醜聞」

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シャーロック・ホームズシリーズの名作ボヘミアの醜聞を色々な視点から考察してみました

4.54.5
文章力
4.5
ストーリー
5.0
キャラクター
4.5
設定
4.5
演出
5.0

目次

ボヘミア王はどうやってロンドンへやって来たか

ボヘミアはドイツの中央やや右にある、チェコという国の旧名です。そこでホームズの噂を知り、イギリスへ出かけたと見て良いでしょう。ただ、その当時のチェコ内には優れた鉄道機関はなかったため、まずドイツ内へ馬車を使って移動したと判断できます。そしてドイツ内の蒸気機関車で港まで行き、船を利用してドーバー海峡を渡りました。船の到着した場所はフォークストーンで、そこの駅から機関車に乗ればロンドンへ行けます。

ここで問題になるのは、身分をどうやって隠したかです。王様という職業はその名が示す通り、高貴な身分なので言動や服装は庶民とは違っています。そのため、庶民達が見れば一目で、我々とは違う人だと考えるはずです。

作品内ではフォン・クラム伯爵という偽名を使いホームズに挨拶しています。しかもボヘミアの貴族と名乗っていたので、貴族ということにして、ボヘミアからイギリスへ来たのかもしれません。これなら特別待遇扱いになるため、船で移動中や機関車の中でも安心できます。また、1人でやって来たとは思えないので、何人かの護衛が付き添っていた可能性も高いです。ただ、兵士の姿の状態で付き添うと、高貴な人間が一緒にいるとばれるので、私服を着て旅行者を装っていると思います。

ワトソンがボヘミア王だと知って驚かなかったのは何故か

普通の人が王様に出会うと、恐縮のあまり言葉遣いが丁寧語になったり、跪きたくなります。そうした変化が全く見られなかったため気になりました。

ワトソンに対してやや圧力をかける形で、誓約をしてもらうと言った部分があります。もしかするとその時に、薄々ながら伯爵ではなく、王ではないかと疑問を抱いていたのかもしれないです。そう考えると、ワトソンが驚かなかった理由が理解できます。

作者が王侯貴族に対して、経緯を払わない思想の持ち主だった、とも考えられます。作者自身の思想が反映されたとすると、納得できる部分が多いです。ホームズシリーズには、ボヘミア王以外にも貴族が登場する場面がいくつもあるため、そんな風に感じました。

ワトソンが太ったのは何故

古巣のベーカー街に行きホームズに会った時に、彼はワトソンに対して7.5ポンド太ったと言いました。それに対してワトソンは、少し怒気を込めながら7ポンドと答えています。大きな差はありませんが、太ったのは確かと言えます。

太った背景には、四人の署名で出会った女性との結婚と、開業医として働き始めたことがありそうです。結婚をすると幸せな気分になるので、太ってしまうのは無理もないことです。それに作品にも有頂天だったと書いてあるので、幸せ太りと判断できそうです。

開業医の仕事の話は出ていないので推測ですが、順調そうな描写がいくつもあるので、儲かっていたように見えます。ただ、馬車を日常的に使っていたみたいなので、運動不足も太った要因です。仕事が忙しく、肥満対策として運動をする暇もないため、医者としての大変さがよくわかる話です。

ホームズがアイリーン・アドラーの写真を受取った理由

ボヘミアの醜聞にはアイリーンにしてやられた、と表現できる場面があります。女性に一杯食わされたという場面は、他の作品の中には出てこないので、珍しいシーンと言えそうです。

しかもホームズはこの時に経験をした失敗から、何かを学んだらしく、女性を見下すという行為を行わくなっています。なのでホームズは、この時の失敗によって、女性の頭の良さを理解できたのではないかと思います。

その思いがボヘミア王からのご褒美として、写真を受取るきっかけになったと判断できそうです。それにホームズが、アイリーンのことをあの女と言うのは、彼自身の負けず嫌いの気持ちをよく表現しています。結果としては、引き分けか痛み分けに近い感じですが、珍しいことなのでワトソンが記録に残したかった気持ちもわかります。

アイリーン・アドラーは火事騒ぎの後に何をしたか

アイリーンは周囲に火事だという声が上がった後に、写真を隠している場所に一目散に移動しました。最も大事な物を守ろうという行動なので、この辺りは普通と見て良さそうです。ただ、これはホームズの狙いでもあったため、彼の策にはまったことになります。ところが、写真を掴もうとした際に、これが全て罠だということを読みとったみたいです。

罠を読んだアイリーンが次にとった行動は、ホームズを尾行することでした。ベーカー街のとある一室に移動しようとする彼の姿は、誰なのかが一目瞭然できる場面と言えます。ここでおやすみなさい、ホームズさんとアイリーンはホームズに話しかけています。この場面は仕返しの意味もありそうです。

手厚い治療を受けていたホームズが姿を消さなかったら、話は変わっていた気がします。理由は、彼が姿を消したのが、アイリーンが罠だと知った要因だからです。この場合は、ホームズが再び邸宅へ忍び込み、写真を取得して逃亡する結果になったはずです。そうなると、あの女という言葉は出てこなかった可能性がありそうです。ですが、この場合は写真を王に渡せば依頼は終わりなので、結末としては虚しいです。

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