呪いと愛とタブーと官能 - 狗神の感想

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狗神

3.753.75
映像
3.75
脚本
4.00
キャスト
3.50
音楽
3.25
演出
3.75
感想数
2
観た人
2

呪いと愛とタブーと官能

3.03.0
映像
3.0
脚本
3.5
キャスト
2.5
音楽
2.0
演出
3.0

目次

悲劇的官能、至高の禁忌ホラー

閉鎖的な四国・高知の尾峰のある村に住む和紙作りをただ毎日淡々と作って暮らす坊之宮美希(天海祐希)は辛い過去を持つ女性、長い間恋をせずに過ごしてきたある日村にある学校へ新しく赴任してきた奴田原晃(渡部篤郎)と出会う、親子ほど歳の離れた二人だったが次第に激しく求め合うように、そして自らの家の呪いと禁忌を知ることとなる…。
原作者は童話作家・フリーライターとして知られた坂東眞砂子氏の小説。「死国」に続き小説2作目。第51回ベルリン国際映画祭コンペティションでも今作は上映されました。日本に伝わる「狗神」についてを取り上げた同映画は好みが真っ二つに分かれるであろう作品、先に申し上げると私はこの作品が大変好みでした、それでは「狗神伝説」については次の見出しへ。

守護神か、それとも呪いか

「犬神(狗神)」とは西日本に最も広がる犬霊の憑き物のこと。憑き物というと狐憑きなども有名ですが同映画の舞台となっている四国では狐が生息していないということから犬神の本場とも言われている。犬神の憑依現象は平安時代から既に存在していた、犬神を取り憑かせる方法は犬を頭のみ出して地に埋めて目の前には餌を置き飢饉状態にする、そして餓死する前に首を切り落とすと首が餌へと飛んでいき食らいつく、これを焼いて骨にし器に入れて祀る。すると永久にその人に憑き願望を成就させるという。他にも似た方法では地に埋め人の行き交う往来に放置し、その犬の怨念が呪物となる。数匹の犬を殺し合わせ勝った一匹に魚を与え、犬を殺しその魚を食べるなど憑かせる方法は色々ある。同映画では何代にも渡り「犬神憑き」の家系、坊之宮一族の女はその犬神様が見える、そして毎日一匹も漏れずに壺の中にいるか数え一生お世話をしていかなければならないという理不尽な掟が存在する。壺の中、水甕の中に飼われているというところは現実でも伝わっている通りのこと。家族の人数だけ犬神が水甕の中におり、家族が増えるたびに犬神の数も増えるという。犬神は家族の考えを読み取って欲しい物があるときなどにはすぐに犬神が家を出て行って憑く、そして犬神持ちの家は富に栄えるとも言われています、反対に狐霊は祭られても恩恵を家に持ち込まず祟り神になる場合もあるとか、犬神は何とも便利で優しい、私もはっきり言って犬神に憑いてもらいたい…。ですが犬神は絶対に従順ではなく時に家族でも噛み殺すなどもあるとか、同映画でも坊之宮美希(天海祐希)が睨んだだけで坊之宮家をよく思わない老婆を殺すシーンがある、犬神持ち一族の望みを叶え時に人をも殺す力を持つ。でも必ず従順とは限らない、気まぐれなところはどの神でもやはり同じ、現在でも犬神持ちの一族の方々がいるなら是非会ってみたい。

禁忌の劣情


この映画はR-15指定、そして人において絶対に犯してはいけないタブーを犯している。『近親相姦』 がこの映画では重要となっている。かつて坊之宮美希は実の兄とは知らずに坊之宮隆直(山路和弘)と森の中にそびえ立つ立派な大木の中で激しく愛し合い、腹に子を宿すが死産…ではなくそれは母によって別の赤ちゃんと取り違えられた。そして月日が経ちその赤ちゃんは美希のいる村へ戻ってきた、その子どもこそ奴田原晃(渡部篤郎)、まるで本能のようにお互い求め合う様は本当の親子と知らずとも狂気さえ感じる。「狗神様が呼んだのだ」という言葉も頷けるほどに二人の濡れ場はタブーだと伝わってくる。のちに親子だと奴田原晃は知ったようだけど美希はそれをわかっていたのか?そして兄の隆直がいつまでも妹の美希を求める様子もやはり狂っている、でも「近親相姦」というのは古くから日本にも世界にも存在はする、キリスト教でも近親相姦や同性愛はタブー、でもキリスト教信者の多い国でも今では同性結婚が出来たり近親相姦事件は多く存在しており、禁忌を犯す人は多い。何故近親相姦はしてはいけないのかという理由は単に近しい血が交わって産まれた子は障害を持っている可能性が高いという他、近しい血同士で交わるとそのあまりの体の相性の良さに嵌ってしまうからだともまことしやかに言われている。何とも信じられないような話だけれど現に世界では兄妹同士・父娘同士で結婚し子どもが産まれた例はある。人は自分と似た人間に本能的に惹かれてしまう兆候がありこうした愛も生まれてしまうんだとか、そこに体の相性まで抜群なら確かに一層愛は深まってしまうのかもしれない。
ラストシーン、奴田原晃は猟師の鉄砲玉に撃たれる。そして何故か撃った猟師も倒れてしまうのは狗神の呪いのせいかなのか、奴田原晃は頭を撃ち抜かれたようで美希がまるで犬のようにその血を舐めていると奴田原晃は目を覚ます、「バイクがある、バイクがあれば…」そして美希が「どこまでも行ける」そう言ったあとバイクはあの場所から消えた。狗神に憑かれた人は不死、という話は多分この小説の中での創作。二人は無事に逃げられたのか、そして美希の腹の中に宿った新たな命…それは実の息子・奴田原晃と交わった末に出来た子であり「鵺」という狗神の祖先ともいうべきものが宿っているという。この二人に幸せというものは訪れるのか、出来るならどこかで七色の和紙を染め上げ奴田原晃とどうかひっそりと暮らしていてほしい、生まれた子どもが化け物でも。

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