フランス革命の陰にあったかもしれないリアリティ - 第3のギデオンの感想

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第3のギデオン

4.004.00
画力
4.75
ストーリー
4.25
キャラクター
3.25
設定
4.00
演出
3.75
感想数
2
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フランス革命の陰にあったかもしれないリアリティ

4.04.0
画力
4.5
ストーリー
4.0
キャラクター
3.0
設定
4.0
演出
3.5

目次

なかなかに練られた相関図

いきなりエロ本を描きながら生計を立てているギデオンが登場。貧しい平民が議会でのし上がり、革命の一端をなす物語なのか。ところが、これまたすごい裏切りと策略の連続になっていて、厚みがあるんですよね。エロ本ってただのエロ本ではなくて、貴族・国王家族の風刺になっているらしかったし、演説しながら民衆に支持を得ようとがんばる姿も、爽やかさの中に闘志がみなぎっている感じ・ただの平民とは違う強さみたいなものがよく表現されていたように思います。

ジョルジュとギデオンの関係性はもちろんのこと、アルトワ伯やマリー、ルイ16世たちの関係性、考えていること、民衆の考えること、そして貴族の考えること…みんなどこかが正しくて、どこかが間違っているような気がしてならない。双方に相容れない立場であり、対立しているからこそその状況を飲み込んで生きていられるような気もするのが悲しいです。まさに昨日の敵は今日の友になるし、さっきまで味方だと思っていたものが今は味方とは限らない。ロベスピエールなんて…ねぇ…だから温和な奴は怖いんだ。

歴史をさかのぼってみると、残忍な人とは思えぬ行動をやらかすものばかり…昔はこんな残忍な奴らばかりだったの?と疑いたくなります。今でこそそんな猟奇的犯罪は数少ないけれど、どこかでは平然と行われていて、きっと語られていないだけかもしれません。人間の根本はきっと変わっていない気がするんですよね。それでも、これだけ愛ある世界が多くなった背景には、ジョルジュやギデオンのように、強い意志をもって行動した人間たちがあったのであり、その人たちなしには絶対に革命はなしえなかったことでしょう。そう考えながら、登場人物たちの信念と闇に触れていくことになります。

誰しもが持つ闇を増幅させる

ジョルジュの闇は深いです。あの左目の傷の意味を知ったらもう…いたたまれない。ギデオンだって、いろいろな人たちの愛に育てられたけれど、平民としての生活のなかで、盗みだってなんだって経験し、生きていくことがどれだけ大変かとか、真っ黒い部分と向き合ってきた。ロベスピエールだって、父親のことは愛していたに違いないし、アルトワ伯だってマリーを愛しただけかもしれない。それでも、キレイなだけでは解決されない何かがそこにはある。そして何かの拍子にいつでもひっくり返る危険をはらんでいる。簡単に闇に堕ちたり、理想とかけ離れた真逆の心理が生まれるのもまた事実です。気づけばいつも道徳とか倫理とか、いろいろな葛藤の中で苦悩して、生きているのが人間だよね。理性があるからこそ、ってやつですよ。

お金のない貧しい家庭では、子どもに対しても生きていくための術を教えていたし、世の中の悲しいことを子どもたちは子どもたちなりの感性で受け止めていく。ギデオンは、ソランジュをそんな世界で暮らしてほしくないという想いから、議員になって革命を起こそうと行動を起こしていた。でも、子どもにはきれいごとばかり教えて、黒い部分は見ないでくれってのは無理がある。子どもは知りたいと思うだろうし、嫌でも心も体も大人になっていくはず。どんな子どもに育つかは、環境が決めるんですが、何を感じるかは子ども次第。もっと子どもという可能性を信じて行動しなければならないよなーって過保護はギデオンを悲しく感じました。そんなんだから、ぐれるんだ。

ジョルジュとギデオン

ジョルジュだって、ギデオンを本当に大切にしてた。でも、大切にしながら、かわいそうだと思ってた。だからこそ、本当は自分が“かわいそうな”側の人間だったって知って…ギデオンを嫌悪して、自分を嫌悪した。こんな気持ちを持ってしまった自分に対して憤りもあったし、これから立場が逆転したら自分はもう父から愛されないかもしれないという恐怖。貴族だからこその誇りがあったのに、そんなものはなかったのだと痛感させられる気持ち。そんな姿が本当にせつなくて、苦しいです。

どちらかといえば、ギデオンは自由に育ち、平民だからと許されなかったこともたくさんあったけれど、許されたこともたくさんあった。どちらかといえば、自分の事を汚い側だと思ってきたし、だからこそきれいごとを並べたいと思ってきた。ジョルジュを本当の家族のように思いたかった。

身分や階級に左右されない世界をつくりたい。想いはきっと同じ方向を向いているのに、使う手段が違いすぎる二人。たとえ人の命を奪ったとしても事をなそうとするジョルジュ。ジョルジュの左目を奪ってしまったあの時から、剣は握らないと決めて「言葉」で勝負してきたギデオン。でも根本ではお互いを大切に想ってるよね?だからこそお互いの存在を認め合ってきたんだよね…?今は決別してしまっているけれど、どこかできっと、また協力してくれることを願っています。

ソランジュよ、どうか育たないで

一番の心配は、ソランジュです。汚いものを見せまいとして、ギデオンがずっと大切に、大切に育ててきた娘。なんでジョルジュはソランジュを連れて行っちゃったんだろう…?って考えると、自分にも普通に家族を持ち、自由に生きていくことがもしかしたらできたのだろうか…?という淡い好奇心があったためでしょうね。また、ギデオンの大切なものを奪ってみたいと言う気持ちもあったのではないだろうかと推測できます。今のところ、愛情は全然感じられないです。

ソランジュは、ギデオンに大切にされてきたからこそのフラストレーションがあった。人間、キレイなだけでは生きられないことを薄々感じていて、自分を子ども扱いしないジョルジュにあこがれを抱いていたのでしょう。ソランジュがどんどん女になっていくのは怖いけれど、それでもギデオンがソランジュをどんなに大切に想っていたのかは、物語の中のどこかで気づいてくれると嬉しいです。だってたぶん、ジョルジュはソランジュに対する愛情なんてないんですから。それでもいいとか、言わないでほしい。もし最後の最後までジョルジュを追いかけるなら、ジョルジュの最期に愛を感じさせてくれるのが、おそらくソランジュになるんじゃないでしょうか。勝手な想像ですけどね。この二人においては、なかなかハッピーな展開が期待できないのがつらいところです…。ギデオンが愛情いっぱいに育ててくれたことの意味を、ソランジュがしっかりと感じながら生きてくれることだけが望みです。

国家転覆の先にある未来をどう描くか

この物語は、ジョルジュとギデオン、どちらかが死んでしまうかもしれない。もしかしたら、両方が死んでしまうかも…そんな予想をしてしまいます。革命に身を投じた人として称えられながら、語り継いでいくのはソランジュかもしれません。ソランジュは死なない気がする。

お互いの考え方が正しいのだとぶつけ合うだけでは、絶対に分かり合えない。それはわかっているのに、相手を理解しようとすることは恐怖ですよね。自分という人間が自分ではなくなってしまうかもしれない。今まで信じてきたものが揺らぎ、作り替えられてしまう。でもそのそれを受け入れられたら、変わっていける。その一歩が出るかどうか、これが進化できるかどうかの違いなのかもしれません。適応した人間は生き残り、できなかった人間は淘汰される。革命は、仕方のない事なのかもしれない。ただ、誰かを殺して、何かをなすことを正しいとは言いたくないですね。これだけは、絶対に揺らがせたくないものです。

フランス革命で起こるこれからの11つが、歴史に忠実になるのだとしたら、たくさんの命が失われます。そこをどう描くのか、大変気になりますね。ほんの少しでも愛ある形であることを願ってやみません。

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革命家にもいろいろな種類の人間がいる

歴史モノっておもしろいフランス革命に至るまでの、革命家たちやそれに関わった人たちの物語を描くフィクション。ストーリー展開はとても緻密で、ノンフィクションでもこんな感じの話がありそうなくらい。革命が起こったという事実は知っていても、その時どうやって革命を起こしたのか、人を集めた方法や革命を起こそうと決意するまでの苦悩など、細かく描いてくれているから共感値も増す。革命を起こそうっていう人たちの活動の根っこを見れる漫画だ。革命は偉大な功績だったかどうか。それは今になってみればわかるが、当時はそんな振り返りなんてできないくらい、相当な労力と時間、お金、命を費やしたことだろう。その始まりがギデオンのエロ本とはなかなか思いつかない。どうしようもない男なのかと思いきや、エロ本に貴族・国王の風刺を描き、民衆に「何かがおかしいと思わないか?」と言葉を伝えていたのである。一方のジョルジュは、言葉ではなく暴...この感想を読む

4.04.0
  • kiokutokiokuto
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