壮大な世界観と奥深さで結末まで目が離せない
人の心の闇に巣食うAKUMA
大きな悲しみを背負い、心にぽっかりと隙間ができたとき、千年伯爵がAKUMAをつくりにやってくる。
世界観がすごくいいですよね。憎たらしく残酷な千年伯爵とノアの一族。でも材料は人間の悪の心や悲しみの心で、それがなければAKUMAという兵器は作られない…皮肉なもので、召喚された死した魂は、もとは人間なんですよね…一見単純な悪との対決にみえて、実はもっと強大で複雑なものに立ち向かわなければならない。その葛藤や、人の命の重さや、誰かを想う気持ちの重さが、バトルの中で語られていきます。
序盤は、アレンが黒の組織に慣れていき、AKUMAを倒してイノセントを集めていくストーリーになっているのですが…相当バトル詰め込みすぎですよね。ほとんど戦いっぱなしで、もっと休ませてやってほしいなと思うほどでした。体の治療もままならぬうちに次の敵がやってきて、をずーーっと繰り返します。戦いのたびに登場人物たちの話が深まっていくので、よく考えられてるなーと感じますね。イノセントの適合者って、本当に適合者なんですかね…?悲しい奴らばっかり、選ばれているような気がしてならないです。
徐々に話は難しくなり、アレンたちの組織が正しいのか正しくないのか、自分が本当なのか嘘なのか、仲間はずっと仲間なのか…すべてに疑いを向け、立ち向かわなくてはならない。いつも上層部で何かが動いていて、末端の者は知る由もない事ばかり。もがいてもがいて、これからどんな結末に向かっていくのか、楽しみでなりません。
ノアの箱舟
ノアの箱舟。よくテーマになる言葉です。確かに、その箱舟にのって人類が助かったとか、そういう神話があるっていうのだけでロマンがありますよね。今の生活からは考えられないような天変地異。文明を失った後の人間たちの再興。滅びてもまた立ち上がる。そういう壮大なストーリーにしたいときに、旧約聖書で語られる話ってすごく役に立ちます。すごいぶっ飛んでる気がするのに、実際に確かにハマるんです。
D.Gray-manにおけるノアは、本当に核となるものですよね。敵だと思ってたのに、実は14番目のノアがアレンの中にあったネアだとか…体に呪いやイノセントを持った状態であったことからも、ただモノではないとはわかっていました。でもまさかね、悪役に落ちるかどうかという存在だったとは。このパターンが一番悲しくて、ドキドキするんですよね。一歩間違ったらたぶん死んじゃうストーリーもありになってしまう。でも、ここまでエクソシストとしてみんなと生きてきて、それだけは勘弁してほしい。英雄的に語られて散るなんてやめてほしい。
アレンがネアの宿主であることをわかってて育てたのがクロス元帥。マナ・ウォーカーとネアは兄弟で、千年伯爵はマナ…??話の流れ的にはその方向でかたまりそうなんですけど、まだまだどんなどんでん返しが待っているかわかりません。それでも、本当に信頼した人が、信頼に足る人物ではなかったとしたら…こんなにつらいことってない。それでも、クロス元帥はアレンという人間を愛していたと思う。だからこそ、この大事なときにいないんだ…!何かがんばってるはずなんだ…!と思っています。
みんな主人公級
アレンの仲間たちである黒の教団は、本当にいい奴ばかりです。イノセントの適合者も、そうでない者も、みんなが世界を守るための仕事をしているということに誇りを持っていて、一生懸命研究や調査に取り組む。いいチームだ…だから、教団の本拠地を狙った攻撃が行われたときは、本当に胸が痛みましたよ…確かにね、本拠地があるのにそこをたたかない悪役の物語が多い中で、きっちりとそこも狙って本当の闘いであることを示しているのは、漫画としては相当おもしろいと思います。
神田ユウなんて、どんだけ壮絶な人体実験のもとに生まれたんだ…アルマとのお別れが切なすぎて、しばらくアレンのことを忘れましたからね。リナリーも人体実験の被害者の1人。黒の教団って、本当に黒いよ。中央町のマルコムも、アポクリフォスも、全然いい人に見えないし、実際やってることがまだまだあくどい。なんか、いい人な雰囲気もちらっと出たけど、全然あくどい。
ラビやクロウリー、ミランダなどなど、みんなキャラクターがしっかり確立されてて、1人1人がいろんな悲しみを仲間のおかげで乗り越えてきた人たち。だからこそ、AKUMAに脆い部分を狙われやすい。心次第で壊れもするし、また作ることもできる。そんな強さを毎回のバトルで魅せてくれます。ジョニーなんて…もう、アレンの恩人も恩人で、ネア化の進むアレンをずっと近くで支えてくれて…見た目的にも、完全なる名脇役…!いつか君のメガネが取れて、イケメンであることをさらしてほしい。
主要な仲間が生きててくれるのが嬉しすぎる
バトルばかりのこの物語の中で、唯一ほっとするのが、仲間が生きててくれることです。クロウリーも神田も、絶対死んじゃうんだと思ってました。リナリーも、髪をばっさり短くされて、もうなんか死にゆくイメージが目についてしまって…ハラハラしまくりでした。この漫画では、バトルにおける負傷の具合が本当に大きいので。クロウリーなんて、血液だけになっちゃってとか…絶対生き返れないじゃん!!って。それでもどうにかこうにかあの手この手で戻ってきてくれて、本当に嬉しいです。これからもどうか、アレンと共に歩んでいってくれることを願っています。
黒の教団本部に入られて、失われた仲間がいたことは本当に悲しかった…家族同然の人を失ってもなお、闘い続けなくてはならない彼らの運命がせつない。でもそれに負けちゃったらまたAKUMAを生むことになるんですもんね。まぁ、最新刊あたりでは、もはやAKUMAつくるとかの次元じゃなくなってはいるんですけど。完全に千年伯爵とネアの関係にシフトしちゃってますからね。アレンもしばらくご無沙汰だし…アレンが完全に戻れた時、それはネアが消えるとき…?
アレンとネアのこれから
千年伯爵とノアの一族が恐れる「ハート」という存在。これがいったい何なのかがまだまだ明らかにされていませんし、ネアと千年伯爵の因縁がどういった形で決着がつくのか。そこにアレンは関わるのかどうか。まだまだ謎はあります。
アレンがもしネアというメモリーに勝つのだとしたら、千年伯爵とアレンの闘いという形になるでしょうね。アレンがネアと闘うというよりは、ネアの何かを引き継いだアレンが千年伯爵を倒すために再び目覚めるって感じのほうがしっくりきます。そうじゃないと、ネアを生かそうとしたクロス元帥やマルコムたちみんなを悪の方向に疑わなくてはならない。それはちょっときついです…悲しすぎます。これからの展開からは目が離せません。
ちょっと気に食わないなーと思うのは、ノアの一族が全然死なないこと。彼らなりの立場・役回りもあるし、「ノア」が主軸になってるから、死ねないのはわかるんですけど…何回も闘ってるし、いいかげんに見飽きてくる感じも否めません。ロードとかティキなんて、もういいんじゃない?って思ってしまったり。あれだけいじめまくったアレンをかばって助けるとか、もはや意味不明だし。ノアの一族自体も、もしかしたら完全なる悪の存在であるとは言えないのかもしれない。だとしたら、何を倒すためにこれだけの犠牲をはらってきたのか…?答えのない争いが、早く終結してくれることを祈るばかりです。ハッピーエンドを期待しています。
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