読み進めるにつれて露になる拙い内容のストーリー - 僕は妹に恋をするの感想

理解が深まる漫画レビューサイト

漫画レビュー数 3,136件

僕は妹に恋をする

3.503.50
画力
3.50
ストーリー
3.50
キャラクター
3.38
設定
3.50
演出
3.50
感想数
4
読んだ人
6

読み進めるにつれて露になる拙い内容のストーリー

1.51.5
画力
1.5
ストーリー
1.5
キャラクター
1.5
設定
2.0
演出
1.5

目次

ストーリー展開と画力の弱さ

タイトルと可愛らしい扉絵に惹かれて、中身もなにも見ずに買ったこの本。内容はもちろんタイトル通りなのだけど、なかなかキツかった。ストーリー展開がどうしようもなく強引というかなんというか。双子であるこのあまりにも似ていない兄妹が恋していくんだけども、もともと妹(郁)の方は兄ちゃん(頼)としてしか見てなかったのに、なんでいきなり恋しちゃうんですかね?兄ちゃんにいきなり迫られて、このまま拒否すると兄ちゃんがいなくなっちゃう!って思うかな?いくら大切な存在であってもそこは兄妹としてであるハズ。まあリアリティさえあれば別にどんな話でも構わないのだけど、せめてこの心境にいたるところをもう少し深く描いてくれていればここの違和感は防げたように思う。あと郁がなにもできない、どんくさい可愛い設定なのはいいとして(妹キャラとして確立していることだし)、あまりにも度が過ぎる。なのでどうしても、郁の言葉ひとつ態度ひとつに感情移入できない。ギャグとしてしまえばいいのだろうけど、ギャグとしては面白くないし本当ならかなりワザとらしいしで。そういえば郁って女の子の友達いなかったように思う。それをひたすらかわいいかわいいと愛でる頼の気持ちもわからないし。郁のどこが好きなのか、どんなに魅力があるのか、それが「かわいい」っていう頼の一言に尽きるのみで、描写だけではまったくわからないし。そもそも、中学生って設定がいただけない。道徳的にと言うわけでなく、中学生があそこまで冷静に自己分析したり、行動したり、挙句勝手に進路決めてきたり、出来ないだろうとどうしても思ってしまうから。どれほど頭脳明晰かもしれないけどそこに無理を感じてしまって、ストーリーには没頭できなかった。そして、その読み手に無理だろうと感じさせてしまうところが、リアリティがない証拠にもなる。
また絵も、扉絵では可愛らしいと思ったのだけど、だんだん粗が見えてきたり(パースのおかしさとか、コーヒーの飲み方とか)、郁や頼がデフォルメされたりする時の話の子供っぽすぎるとことかが目だってきていたように思う。あと、重要な登場人物(?)にウェルシュコーギーがでてくるのだけど、動物の絵がちょっと下手すぎるんじゃないかな。そりゃリアルに描くわけにもいかないだろうけど、そこはもうちょっと頑張ってほしい(余談だが、「闇のパープルアイ」の豹の描写は筋肉まで感じる力強さを感じて素晴らしかった)。もちろんコーギーだからそこまでは無理にして、せめて「動物のお医者さん」くらいには書き込んで欲しかったところ。
もうひとつ、なんか登場人物の口がいつも開いているのも気になる。
双子で父親が違うということは実際にあるらしい。この本を読んだ時それだけは興味を持って調べたところ、現実的にはありうるけれどかなりの確率になるそう。外国では報告されているみたいだけど、日本でもあるのかな。もちろん一卵性では無理だろうけど。こういうレアケースを持ってくるあたりの目の付け所はいいんだけど…。ちょっと残念な仕上がりだったように思う。

設定を納得させてくれるリアリティの無さ

同じように姉弟、兄妹で恋をしてしまうのは「罪に濡れた二人」とか、「みゆき」が有名どころだと思う。でも、この前者のほうは10年以上あってなかった上に弟って知らなかったっていう設定だし、「みゆき」は元々離れて暮らしていた上に血は繋がってないし、やっぱりずっと一緒に育ってきた兄妹で恋に落ちるっていうのはどうしても難しいと思う。だからどうしてもそれを納得させてくれるリアリティが欲しい。「みゆき」なんてあだち充特有のギャグが散りばめられていているのに、あの切なさを出せるのはすごいと思う。この切なさを倍増させるのが、そのコメディチックなギャグなのかもしれない。あだち充で言えば、「じんべえ」も名作。血のつながらない親子の、本来なら禁断なのかもしれないけど憧れさえ感じる恋愛が豊かに描かれていた。
設定を納得させるにはそれなりのリアリティが必要だと思う。それはマンガでも小説でも映画でも同じじゃないかな。

テーマに対して、絶対的に足りない二人の苦悩と煩悶

「罪に濡れた二人」には、禁断の恋に対しての罪悪感や苦悩がこれでもかと描かれていた。だからこそ感情移入もできるし、つらさも感じ取ることができる。そういった悲壮感がこのマンガには絶対的に足りない。唯一評価したいのは、教会で二人が抱き合おうとする時に、郁が言った「かみさまがみてる」。頼の苦悩がメインに描かれている分、この一言は印象的だった。こういった表現がもっと欲しかったところ。そのため頼はともかく、郁の苦悩がまったく伝わってこない。禁断の恋である以上、双方それぞれに苦悩と煩悶があると思う。“純愛”や“禁断”といったキレイな言葉だけでなく(自分に酔っているような表現はよくある)、もっと汚いリアルな感情の表現が少しでもあれば、もう少し読めたのにとは思う。
マンガにはシリアスであってもコメディであっても、リアリティがなくなってしまえばただの文字のつながりになってしまい、なんの魅力もなくなってしまう。そういう意味でも、このマンガはもう一度読みたいとは思わなかった。
と、全体的に辛口になってしまったけど、こういうマンガは中高生が軽く読むものだとは思う。大人がじっくり読むものではないけど、若い子が何も考えずに読むのならそれなりに面白いのかもしれない。

あなたも感想を書いてみませんか?
レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。
会員登録して感想を書く(無料)

他のレビュアーの感想・評価

だって結局兄妹だったからね…

青木先生お得意の濃さ相変わらず熱烈なベッドシーンがね…子ども心にはけっこうハードだなと思っていたのですが、今となっては全然マイルドに思います。頼と郁、周りの心情にはっきりと目がいくようになりましたよ。年齢重ねたな~私。頼と郁の禁断のラブ、楽しませてもらいました。家ではやめようよ、さすがにやばいと思う。結局最後まで結ばれるのにも焦らしがあり、そわそわしました。しかし、それなりに頼が一生懸命節度を守っているのが良かったなと思っています。タバコは吸ってたけど、女の子に逃げたのは楠さんだけ。大切な妹・郁への恋心を隠し通そうと必死になって苦しんで、涙して…そこを楠さんにつかまって理性が崩壊。郁を思い浮かべながら事に至るという…つらい。ずっと貞操守ってきたのにね。一途な子だから一途な気持ちに弱いというか。でもやっぱり君は郁の代わり。楠さんもかわいそうだなって思うけど、やっぱり頼を手に入れようみたい...この感想を読む

4.04.0
  • betrayerbetrayer
  • 570view
  • 3169文字
PICKUP

何度でも読める

近親相姦私がこの作品に出会った時、「兄妹同士の愛を漫画で!?」と、とても大きな衝撃を受けました。この作品に出会うまで、同級生同士の恋愛や先輩に恋する女の子の物語など、万人受けするような漫画しか読んだことがなかったからです。そんな私がこの作品を手に取ったきっかけは、友人に「はまるから絶対に読んで」と薦められたからでした。半信半疑ではありましたが、読み進めていくうちに友人の言っていた通りにどんどんこの漫画の世界に飲み込まれて行きました。近親相姦、兄妹同士の愛という重い内容ですが、自分の妹である郁にゾッコンの頼の様子や、そんな頼に翻弄されて、頼と同じように、あるいはそれ以上に頼のこととを愛するようになる郁の様子が細かくリアルに描かれていて、ついつい惹きつけられてしまったのだと思います。一般的な社会の考えから大きく外れ、現実ではありえないだろうと誰もが思っている内容ではありますが、この作品では...この感想を読む

4.54.5
  • すずなすずな
  • 164view
  • 2078文字

感想をもっと見る(4件)

関連するタグ

僕は妹に恋をするを読んだ人はこんな漫画も読んでいます

僕は妹に恋をするが好きな人におすすめの漫画

ページの先頭へ