何度でも読める
近親相姦
私がこの作品に出会った時、「兄妹同士の愛を漫画で!?」と、とても大きな衝撃を受けました。この作品に出会うまで、同級生同士の恋愛や先輩に恋する女の子の物語など、万人受けするような漫画しか読んだことがなかったからです。そんな私がこの作品を手に取ったきっかけは、友人に「はまるから絶対に読んで」と薦められたからでした。半信半疑ではありましたが、読み進めていくうちに友人の言っていた通りにどんどんこの漫画の世界に飲み込まれて行きました。近親相姦、兄妹同士の愛という重い内容ですが、自分の妹である郁にゾッコンの頼の様子や、そんな頼に翻弄されて、頼と同じように、あるいはそれ以上に頼のこととを愛するようになる郁の様子が細かくリアルに描かれていて、ついつい惹きつけられてしまったのだと思います。一般的な社会の考えから大きく外れ、現実ではありえないだろうと誰もが思っている内容ではありますが、この作品ではそれが感じられませんでした。むしろ、誰にでもあることなのかもしれないとさえ思うほど、とても現実味を帯びていました。禁断の愛の物語ですがこんなにも繊細に、感情移入しやすく、読みやすいものがあるのかと衝撃を受けました。
クローバー
この物語の大きなキーワードにクローバーがあります。物語の中でクローバーは2人の愛のしるしとして描かれていました。クローバーを英語にし、それを分解して少しいじると「She(C)Lover」となることから、頼が郁にクローバーで作った指輪をプレゼントします。それが幼少期であるところから、頼は幼いころから郁だけを見てきたんだな、愛していたんだな、と女の子ならだれでも憧れる一途に愛されることを実感することができました。また、その後頼は郁の16歳の誕生日に、幼少期にクローバーの指輪をあげた場所で本物の指輪をプレゼントします。このシーンを見たとき、このまま頼と郁が幸せになったらいいのにと強く思いました。しかし、その一方で、本物の指輪をあげることがこの恋の終わりを告げているような気もして、切なくもなりました。ふたりは兄妹である以上決して結ばれることはありません。結婚はできないのに郁の薬指にクローバーの指輪をつけます。それが私には、「この指輪が僕の代わりだよ」と言っているようにしか見えませんでした。指輪は、物語の中盤に郁の手に渡りますが、最終話で頼がいなくなった悲しみから食べ物を食べず、細くなってしまった郁の薬指から指輪が抜けてしまうシーンは胸が苦しくなりました。もらった時はぴったりだった指輪が、自然に抜け落ちてしまうほど、郁は頼との思い出が詰まった部屋から出られなかったということが伝わり、郁の頼に対しての愛の大きさが伝わってきました。
矢野くんの存在
頼の親友であり、恋のライバルとして描かれていた矢野くんが私は一番好きです。頼と郁よりもすこし大人っぽく描かれていて、二人を最後の最後まで助けてくれる、二人にとって本当に必要不可欠な存在だと思います。初めは矢野くんは郁が好きだと信じて疑わなかったのですが、中盤は「ん?もしかして頼のことが好きなのかな」と思う場面もありました。ですが、終盤で頼と郁の恋愛を全面的に応援するようになってからは「本気で郁のことが好きで大切だから、好きな人の好きな人を大切にしたいという思いがあるんだな」と思いました。初めは大切な親友の妹を守るためという気持ち。そこから、頼に対して健気な恋心を持つ郁に惹かれ、いつしか頼を超えるほど郁のことを愛すようになっていたんだと思います。物語の中盤で、頼が苦しんでいるときにずっとそばにいてくれたのも矢野くんで、物語の最後で、頼がいなくなって苦しみ、悲しみに暮れる郁を奮い立たせ、運命を味方につけさせたのだって矢野くんでした。そして、矢野くんは「頼に恋している」郁のことが好きだったんだろうと思います。もしかしたら、自分の親友である頼が大切に思っている郁だったからこそ、矢野くんも好きになってしまったのかなと感じました。この作品は頼と郁の恋だけではなくって、頼と郁と矢野くんの友情関係や信頼関係も深く描かれているなと思いました。
涙
この作品では、登場人物が涙を流すシーンがたくさんあります。悲しみの涙や、苦しみ、悔しさ、また嬉しさの涙など、涙と言っても様々なシーンがあります。私は、涙シーンが多いとしつこく手、少し嫌なイメージがあったのですが、この作品のキャラクターたちの涙はどれも美しくて、全くしつこくありませんでした。特に、泣きながら喧嘩をしたり、泣きながらキスをしたりする場面では、とても感情移入がしやすく、見ていて自分も涙を流してしまっていることが多くありました。最初はマイナスなイメージの涙が多いように感じましたが、終盤の涙はどれも登場人物、郁と頼の心の成長が表れている涙のように感じました。特に、最終話の最後の場面で頼が残した数枚の置手紙を見つけた後に泣きじゃくる郁の姿は、悲しみだけでなく「これで涙を流すのは最後だ」と言っているようなそんな涙にも見えました。
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