だって結局兄妹だったからね…
青木先生お得意の濃さ
相変わらず熱烈なベッドシーンがね…子ども心にはけっこうハードだなと思っていたのですが、今となっては全然マイルドに思います。頼と郁、周りの心情にはっきりと目がいくようになりましたよ。年齢重ねたな~私。頼と郁の禁断のラブ、楽しませてもらいました。家ではやめようよ、さすがにやばいと思う。結局最後まで結ばれるのにも焦らしがあり、そわそわしました。しかし、それなりに頼が一生懸命節度を守っているのが良かったなと思っています。タバコは吸ってたけど、女の子に逃げたのは楠さんだけ。大切な妹・郁への恋心を隠し通そうと必死になって苦しんで、涙して…そこを楠さんにつかまって理性が崩壊。郁を思い浮かべながら事に至るという…つらい。ずっと貞操守ってきたのにね。一途な子だから一途な気持ちに弱いというか。でもやっぱり君は郁の代わり。楠さんもかわいそうだなって思うけど、やっぱり頼を手に入れようみたいな感覚で郁を貶めるところを見てしまうと、どうにも悪い人間に見えてしまうよね。正々堂々じゃないし、女の意地汚さがフルに発揮されているというか。青木先生の物語ってそういうの多いですけど、この話も必ず誰かが誰かを陥れて、純愛と思われるものを壊そうとする展開が満載です。
それに加え、頼が郁と本当の兄妹ではないかも…というエサをちらつかせておきながら、結局は母親の間違いによる異父兄妹であることがわかり、一気に家族はどん底へ。ま、兄妹の恋愛をテーマにすると、少なからず親たちにどんなことがあったのか言及しなきゃないですからね。今回はけっこうブラックなものが眠ってました。取り違えとか、死人の遺言による養子とか、平和っぽい感じには収まりませんでしたね。
何もできない郁が大人へ
とにかく高校生までの郁は何もできません。本当に子どもみたいで、嘘がつけないというか、天真爛漫というか、汚れを知らない妖精ちゃんというか。事あるごとに、やっぱり頼が助けてくれる。頼なしには生きていけない。だから私は頼を引き留める…序盤では郁は禁断という意味もちゃんとわかってなかったように思いますね。ただ大好きな人と、いつも一緒にいられればいい。お父さんとお母さんには悪いけど、ダメだって何となくわかっているけれど、やっぱり私は頼がいないなんて考えられないの…それは恋だったのか、本当に頼を愛して引き留めたいと思っていたのか、当初はまだ自分自身で判断できていない。頼は妹に恋をするということの意味をちゃんとわかっていたからこそ、罪悪感を感じていた。郁が自分のモノになったのに、郁を自分と同じ汚れある世界まで落としてしまった気がしてならないんだ…ごめん郁。だけど本当に愛してるんだ。どうか僕を置いていかないで…
そんな今にも全部壊れてしまうんじゃないかという、脆い関係だったわけです。だから、異父兄妹であることがわかって、もう逃れようがないとわかったとき、頼は家を出ていくことにしました。やっぱり、理性が勝ったんだろうね。郁が幸せになる道を生きてほしいって。頼を失って初めて、郁は本当の意味で兄を愛するということがどういうことだったのか、家族がどういうものだったのか、そして自分が今までいかに守られて生きていたのかということに気づき始めます。そして猛勉強をするんですね。大人になった郁は、バリキャリで素敵な女性に。今度は私が頼を見つける。10年一人を想い続けるって長すぎない?って思っていたけど、案外と印象深い初カレが忘れられないように、郁にとっても頼が最初で最後の人だからね。長すぎるわけじゃないなって年齢重ねるとわかるんですよね。
なんで近親相姦ものってこんなにやばさが漂うのか
そもそも、近親相姦ってやばいってことになってるよね。これは法律的に裁ける問題ってわけではなくて、同意の上だとすれば、刑罰規定はないらしいです。だとすれば、それをやばいと言ってるのは道徳的な観点からの話で、国によっては合法だったりする。ただ確かに、近親相姦では子どもは作るべきではないっていうことは確実なんですよね。奇形が生まれるリスクが高まる。それこそ子どもの将来をめちゃくちゃにしてしまう危険をはらんでいるとすれば、やっぱり良くないことなのかなーって気もする。性同一性障害があるように、同性愛があるように、シスコンやブラコンの延長線上にはもしかしたら兄妹でのラブだってあるはずで。けっこう難しいテーマだと思うんですよね、これは。漫画では割と題材にされることが多いけど、実際には血のつながりがないとかで安心して付き合えました、ちゃんちゃんっていうのがほとんど。だけどやっぱり血がつながってたら…それでもあなたを求めますってなっちゃったら、やっぱり二人だけで生きていくのかな~…
確かに、愛し合うこと自体には、罪ってない気もするんだよ。だけどな~…そういう感覚になったことがないからあんまり想像できない。やばいものだと言ってるのは慣習のようなものだともいえるしね。かといって今さらじゃ家族でもOK…という気にはならないし。家族は家族で、それ以上でも以下でもない。
悪いことをしているってわかってる。そういう背徳感と恋愛のドキドキが近いから、テーマとしては使いやすいと思います。
矢野
やっぱり、まともなのは矢野です。矢野は頼のお友達。唯一郁との関係を頼自身から伝えられたお友達。そして郁を好きになってしまった男の子。頼の大切な妹。だけど俺にとっても大切で、血のつながりのない俺なら、誰よりこの子を幸せにするのに…頼、お前も俺にとっては大切な人…っく!!せつない。矢野、君が一番せつない。そして、報われなくてもずっと郁と共に10年生き、そしてロンドンでもし頼が見つからなかったら結婚しようって…最後のチャンスだと思ったら頼が出てくるんだよ。あ~…終わった…
頼が、もし俺が家を出てもまた郁と再会できたとしたら、それはきっと運命で、俺たちは離れられないんだと思う…みたいなこと残すから、郁は最後まで追っかけて、そして見つけてしまった。矢野にとって、これは嬉しいことだったのか、悲しい事だったのか…郁が幸せになるところを見たかっただろうし、自分が幸せにしてあげたいと心から思っていただろうけど、郁が望んでいることもわかっていたし、ただ近くで見ていることしかできない矢野。でも君がいなかったら郁はこんなに元気に生きてない。矢野がいたから、今の郁がいるんです。それだけは事実だ…!
また会えたら運命
これから郁と頼はどんな生き方を選ぶのか。もうわかりません。読者の想像にまかされていることなので、想像させていただくとすると、有力候補はロンドンで頼と郁の暮らしを始めること。また会えたらきっと運命。もう二度と離れないように生きていく。矢野のちょっぴりせつない表情を背中に感じながら…もしくは、郁が矢野を選ぶ。頼と会おうと10年もずっと探していたのは、頼と本当の意味で分かり合い、そしてお互いがお互いの束縛を解くため…これはかなりイケてると思う。(笑)矢野が報われるパターンはやはり妄想しておきたいところですから。
結局どんな道を選ぶことになったのかはわからないけれど、男の涙や、恋人としての愛なのか兄妹としての愛なのかわからないところ、君しかいらないというはち切れんばかりの想いなど、たくさんの熱いシーンを見せてくれたこのシリーズ。映画にもなったけど、やっぱり漫画で何度でも読みたい。そんな物語です。
ただ、ちょっとこれは嫌なんですけど…って思ったのは、頼の全寮制学校での荒れ具合、そして郁がその学校に侵入して頼が退学になって、また同じ学校に通い始めるという流れ…はたから見たらただのおかしい兄妹だよね…強引だった気がしなくもありません。
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