今一度、読んでほしい - ソフィーの世界の感想

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ソフィーの世界

4.254.25
文章力
4.13
ストーリー
3.63
キャラクター
4.13
設定
4.25
演出
4.38
感想数
4
読んだ人
10

今一度、読んでほしい

4.54.5
文章力
3.5
ストーリー
2.5
キャラクター
3.5
設定
3.5
演出
4.5

目次

主人公と同じ歳に出会えた幸福

私が初めてこの本を読んだのは、出版されてから数年後、中学生3年生の、ちょうど卒業式の前の頃でした。

最初は書店で、この本の分厚さが目に留まり「こんなに分厚い本、売れないだろう。誰が読むんだ」と思いました。しかし、本の帯には世界的ベストセラーなことや、日本でもすでに数十万部が売れたと書いてありました。

当時、中学生の私は、そんなにたくさんの人が読んでいるのなら、私もこの分厚さに挑戦してみなくては!と、購入を決めました。

今思うと、内容がどうかよりも、思春期の大人に対する負けず嫌いさから読むことを決めた本でした。

物語の主人公は当時の私と殆ど同じ14歳、ソフィーと同じように「私はだれなのか」、どこから来て、どこへ行くのかと考えました。それまでは作中のような悩みは、世界中で自分だけが悩んでいるような気分でいました。それに対する漠然とした不安感が、この作品のお陰で、よくある悩み、考え方なんだと思えるようになり、心が楽になったのを覚えています。

最初は単純に物語として、読み続けていました。しかし、イデア論や「考えるゆえに我あり」という考えはまだ理解できても、フロイトの解釈なんて中学生女子には正直、意味不明でした。

途中から普通に読むことは不可能と思い、サインペンとシャープペンを使い、直接本にまとめた言葉を書いたり、重要だと思った言葉にラインを引きながら読み続けました。

未だにそうですが、基本的に本は美しいまま読みたいタイプなので、後にも先にも本にここまで文字を入れることはありませんでした。それぐらい私にとって難解な本でした。

心が軽くなる言葉を見つける

私はこの作品の中で、人生において最も好きな言葉を見つけました。それはソクラテスが、虚偽の罪により毒殺される際に言ったとされる「悪法も法である」という言葉です。

私は当時、校則や内申などに悩んでいました。先生の言う校則は、そもそも生徒の安全を守るためと言うけれど、例えば真っ黒のセーラー服も学ランも、夜は本当に見にくく交通事故の原因でした。本当に安全を考えるなら、制服の色はもっと明るくあるべきだし、通学時は蛍光のパーカーや、反射板を制服の一部に採用するべきと思っていました。しかし、そんなことを先生に提案しても、通学時は黒をベースにしているとか、目立たないことが学生服のモットーだという、とても生徒の安全を一番に考えているとは言えない回答しか返ってきませんでした。

そんな大人や先生たちを、不条理に感じていたし、イライラもしていました。自分はおかしくない、間違っていないのに認められない。そんな怒りが募っていました。

そんな時にソクラテスの「悪法も法である」という言葉は心に沁みました。

自分の命がかかわる時でさえ、甘んじて状況を受け入れる心の強さ。これが私には欠如していると気付けました。

自分が生きているのは社会であって、そこにはルール(法)があって、それが例え間違っていたとしても、それを破ったりするのは社会全体を軽んじている行為になる。そういう考えにいきつきました。

最初に読んでからもう、数十年経ちましたが、未だに私にとっては大事な言葉になっています。

その時代に必要だった

この「ソフィーの世界」が発行された頃、阪神大震災や、バブル崩壊と、大人たちも、当時思春期だった私と同じように、様々な価値観や社会の変化に色々と思い悩み、それぞれに苦しんでいたのではないかと思います。

そんな時に、少女に問いかけるように綴った優しい読み口と、様々な哲学者=様々な考え方を紹介した内容は、何人もの大人の心を軽くしていったのではないだろうか。

私自身、大人になってからも、就職や友人、恋愛と、自分ではどうしようもない悩みを抱え込む度に「ソフィーの世界」を本棚から取り出して読んでしまいます。

そして、初めて読んだ中学生の自分から、ちゃんと成長できているのか確かめたくなります。あの時はわからなかったけれど、これはこういう意味なんだなと確認したり、なるほどこういう考えもあるよなと考えながら読みふけてしまいます。そうすると、いつの間にか心にあった悩みは軽くなっているのです。

誰かに「こんな考え方もあるのよ」なんて説教されるより、よっぽど効果があります。

私は今の時代こそ、もう一度「ソフィーの世界」を読み返すべきだと思う。

何が正しいか、どうあるべきかなんて、みんなそれぞれでいい。ただ、自分の中で「自分がどうあるべきか」がブレたり、行方不明になるとつらい。

そんな自分がどうあるべきかを、もう一度、思春期の頃の自分に戻って探す旅へ誘ってくれるのが、この作品だと思います。自分も大人になって、大人でも悩むし、大人も失敗するし、大人だってアホなんだとよくわかりました。そんな時、大人の悲しいところは、なかなか自分では軌道修正がしにくく、助けてくれる人が少ないこと。子供の時のように、公園で泣いていたって、声をかけてくれる友達のお母さんも、抱きしめてくれる母親も、怒ってくれるおじさんも、自分が歳をとるほどに減っていくのです。

そんな時に、自分の支えになるような存在、それはかけがえのない物ではないでしょうか。 

私にとってはそれが家族であり、この作品です。

何度引っ越しても、私の本棚には、国語辞典、漢字辞典、ソフィーの世界がセットで並ぶ。

将来、子供が思春期になったら、ぜひ「ソフィーの世界」をすすめたい。その時は読めなくても、人生において、いつか必要になると思うから。

今一度、この本が注目されることを、私は願ってやみません。

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1991年の視点とその批判

哲学入門としてこの本は哲学の入門本としておすすめされうる本です。ここでいう「哲学」とは西洋哲学のことであり、タレスから始まって、最後は国連で話を終えています。読み物として、あるいは西洋哲学入門としては優れていますが、話の終わり方には疑問符を付けざるを得ません。この小説がハイデガーの思索を追う手紙・哲学講義であるとして、ハイデガー問題(ハイデガーがナチスの後ろ盾になっていたこと)は言及されていません。そして最大の疑問符は欧米中心社会への疑問符の不在であり、対イスラムに対する考え方の不在です。国連が正しいで終える意味ソフィーが国連を応援しているシーンがありますね。これは作者がノルウェイ人=ヨーロッパ人ということもあって、当時の世界の秩序に疑問を思っていない証拠です。たとえば、作者が言うように本当に批判的な思考をすべきなのだと考えるのであれば、国連の常任理事国の話をすべきなのです。現在、アメリ...この感想を読む

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