ペコとスマイルの関係性に涙する
ペコという人間
ペコは卓球の天才型。感覚で全部をわかって、ただ卓球が大好きだという気持ちだけで強くなり、自分の卓球が最高なんだと言い切っている。そんな自信どこから来るんだろうって思うけど、いるよなーこういう人。自分の道が最強だー!みたいな言い方するちょっとイラっとする人ね。だけど、ペコの気持ちも分からなくはないです。強くなるにつれ、過信するのも当たり前。謙虚でい続けるのはきっと難しいと思います。そして、成長するにつれ、その勝ち続ける世界にい続けたい、負けたくない、負けて傷つきたくない、だからがんばらなくても勝てるところで止まってる…人生と同じじゃんって思うんですよね。挑戦することをやめても、日本ではある程度当たり前に生きていられるじゃないですか。がんばらなくたって、過去の栄光に浸ることはすごくたやすいことで。そこからがんばるためには、相当なインパクトがないと無理でしょう。追い打ちをかけるように、スマイルの卓球がめきめきと強くなっていく焦り、自分はこいつには勝ち続けてきたはずだという自信と逃げ、スマイル自身の手を抜くやさしさにすらいらだつ歯がゆい気持ち…個人競技のスポーツをやってたら、絶対ライバルっているもので、こういう気持ちを味わうと思います。友だちなのに、恨めしく思うし、そこでその焦る気持ちを原動力にできたらいいんだけど、プライドが高いとそれはかなり難しい作業でしょう。そんなペコがいろんな人に支えられて、基本的にはアクマのおかげで、卓球が大好きなんだってこと、輝くためにがんばるっていうことを教えられて突き進むのが本当に胸が熱くなります。堕落した生活からの華麗なる復活。復活したときはもう本当にヒーローおかえり!って思いました。
スマイルという人間
スマイルって…どんだけペコのこと好きなんだよって思いますね。自分を救い出してくれたペコをすごく大事に想っていて、自分の中のヒーローであり続けてほしいと願っている。だから自分の卓球の強さも隠して、ペコのことを立ててきた…表情にも言葉にも大切に想ってるってことが出ないから、本当に困った性格ですよね。バタフライジョーも、彼の指導には手を焼いていました。気難しすぎる…でも気難しいのは、自分に自信がなかったり、ペコがいないと自分の足だけでは歩けないんじゃないかみたいな不安とかがあったんだと思うんですよね。そこを小泉監督が一生懸命体当たりして、地上まで気持ちを引き上げてくれました。物語序盤では、この監督スマイルのことばっかりでウザいと思いましたが、自分の過去と照らし合わせながら卓球のプロとして育てようとしている姿、そしてスマイルという人間を理解しようと一生懸命努力している姿にだんだん好感を持てるようになりました。結果的に、ペコを本気にさせるためだけじゃなくて、小泉監督の期待に応えようと努力できる器のでっかい人間になりましたね~スマイルは大人ぶってたけど、表面に感情が出てないだけでペコに頼りきりの非力な人間でした。それを解放して、羽ばたけるようにしてくれたんですよね。小泉監督、その意味でもしっかりバタフライですよ!教え子を立派に羽ばたかせてました。
終盤にかけての盛り上がりが最高すぎる
とにかくね、はじめは何のことだ?って思うんですよ。ただの弱小卓球部が散っていくだけのお話かと思いました。途中からもうすごいです。ペコの神がかった才能、スマイルと小泉監督の二人三脚のトレーニング、わだかまりのあった片瀬高校卓球部員たちとの和解…味方サイドのお話だけでも熱くなるものがありましたが、相手の海王学園高校の葛藤も…素晴らしかった。勝ち続けることへの執着、それを当然のように求められるキャプテン…その重圧ってどれくらいのものか。その立場に立たないと絶対にわからない部分です。想像はできるけど、体感しないとその重みは絶対にわからない。それがこのピンポンの独特な絵・描写とうまく合わさって、読者には辛さがひしひしと伝わります。風間の苦悩もすごくわかるし、ペコがいろんな気持ちを乗り越えて卓球ともう一度向き合い、本当の強さを手に入れていく姿も感動的で、どちらが勝利してもいいなーと思いました。いや、もちろんペコに華麗に勝ってもらいたいとは思ってましたよ?終盤のペコの才能開花は爽快でした。才能あるやつが誰よりも努力したら、もう最強なんだー!!っていうのが気持ちがいいし、そうであってもらいたいと思いましたね。才能のあるやつこそ、誰よりも努力してるってよく言われてるけど、こういうことなんでしょうね。
そしてスマイル。
おかえり。
もうこの一言に、今までのスマイルの苦悩が全部詰まってるというか…この日を待ってたよね、スマイル。きっと誰よりも。ペコよりも。自分の先を走ってくれる光って、がんばる原動力になりますよね。一度は消えてしまっていた光が戻ってきて、また自分を照らし続けてくれるってなったら、もうどれだけうれしいんですかね!スマイルにはペコしかいなかった。だけど小泉監督や、片瀬高校卓球部のみんな、おばば、いろいろな人が自分を支えてくれているんだってこと、気づけてよかったね。これからはもっと人間らしくなる!
脇役キャラの濃さがすごい
脇役キャラがとにかく濃いのがピンポンですよね。宿敵海王学園高校のメンツ、アクマというキーパーソン。ペコとスマイルを小さなころから指導し、理解しているおばば。個性的すぎる髪型だけど卓球部部長としてどんどん成長していく大田。完全脇役だけど、興味を引く江上とか…いやー濃い。そしてみんな深いです。一番はもちろん、コン・ウェンガですけどね!!彼のストーリーは泣けるよ!!いろんな思い抱えて中国で卓球の世界に入って、強くなって、負けて…中国にいれなくなって日本に来て、日本の卓球部員のみんなを馬鹿にしたり、馬鹿にしてたのにスマイルに敗北したり、仲間を信用できなかったのが打ち解けていって…これだけでけっこうなお話を描いてます。苦悩を経験するほど人間大きくなるよね。コン・ウェンガが結局負けて卓球部を指導するっていうのはちょっと妥協っぽくも感じられたけど、一人でがんばってたのが今度は支えてくれる人間を得て、またがんばろうと思えるっていうのは…熱いよね。これぞスポ根。スポーツは勝つか負けるかの世界。負けたら終わりの世界。でも、強くなるにはどこかで負けないと、その苦しみや勝つことへの渇望、失敗を恐れない気持ちとかが湧かなくなってしまう。強くなるって、大変だよね。
ピンポンの醍醐味
ピンポンというお話は、ペコとスマイルという2人の主人公がいるわけですが、彼ら1人1人の卓球の能力の成長、人間としての成長、どっちも感動的です。独特な画風がまたそれを引き立ててると思います。特に孤独感の描写とかがイイです。気持ちが伝わりますね。そして、ペコという人間が、スマイルだけじゃなくて、ドラゴンの心もしっかりと救ってくれる。戦うことで育まれた友情もありました。実際対戦する中で…ってそんなのあるかわからないけど、ドラゴンは負けを意識したことで、自由を手に入れたんだなーって…あらゆる呪縛から解き放たれたときが、本当の強さですよ。ここもまた名シーンでした。何回も読み返しちゃうくらいのところです。ドラゴンもまた、卓球が義務じゃなくて、本当に好きだっただけの人。好きから始まったことが、いつからかあって当然になっていく辛さ、楽しさが苦しさになる辛さ、そしてそれを乗り越える強さ…ピンポンには本当にいろいろなことが描かれています。
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