2人の男が1人の女性を取り合いになってしまう、という話
高成と閑雅のダークさがどんどんデレに変わっていく
中等部まで人懐っこかったのに、高等部で人が変わってしまった…という入りから、双子説はなんとな~く醸し出されていました。人形と言われ閑雅が学校に通えない間の代わりとしてのみ存在している…おじいちゃん、そんな非道なことよくできるよね。孫は一人でいいってか…そして高成と閑雅の確執は暗い内容でしたね。高成が試練の球を取ろうとして落ちていくのを、ただ見ているしかなかった弟閑雅…罪悪感から、本当は誰よりも慕っているのに憎まれようと生きる…なんなんだよ。でもですね、明らかに佳境にかけて、あれだけ恨みしか見えなかった高成が、かいがいしく閑雅を介抱したりとか、それはえ?って感じでした。ちらっとでも事前に見えてればやっぱりねーって思えたんだけど、いきなり実は心の底でちゃんと想ってるんですっていう行動をいきなりやってるもんだから驚きでしたね。最終的には双子愛でまとまってよかったですけど…もうちょいエピソードがほしかったな…
そして灰音を取り合うんですよ。高成はわかりますよ?生徒会で知り合って、その前向きでひたむきな気持ち、高成自身のことをみてくれる気持ちを知って好きになる。しかも好きになったきっかけは高成の描いた絵本なんです…っていうドキドキ…これは絶対うれしいです。ところが閑雅。なぜ灰音を好きになる…?これはけっこう始まりが複雑ですよね。高成が描いた絵本を閑雅が描いたと思って感想を言ってきた灰音。毛並みの違う反応に驚いて興味を持った。そしてヤンキーになってしまっていた彼女を見つけて、闇から救い出す…うーーん好きっていうか興味ですよね。あまりとにかく想ってるんだーー!っていう感じがしなかったな…完全に高成が好きになっちゃったから邪魔してるっていう…兄のほうを愛しちゃってるからこういうことになったんだろうな…と思うわけです。ラストでもまとめられてるけど、ダシにされてるのはほんとに灰音ですよね。双子愛~!という終わりでした。
乙宮と香宮の確執はディープすぎる…
愛し合う二人のカップル・樹さんと舞加さんを引き裂いて、舞加を手に入れた和仁さん…絶対に恨み続けてやると心に誓ったのに、和仁さんの一途な愛情を受けて愛し始めてしまい心を壊した舞加さん…地位も彼女も失って、それでも緑香さんという人に出会えた樹さん…ディープだ…灰音が育つごとに、和仁ではなく樹に似ていったことから、和仁さんは灰音が樹さんと舞加さんの間にできた子どもであると気づいてしまい、それを知られたから舞加さんは心がぶっ壊れたんですよね。大切な樹さんとの子ども。なのに和仁さんを愛し始めた自分。隠している罪の意識。愛し始めてしまった罪の意識…うーん心の弱い人はこうなるのかな…
和仁さんが灰音を香宮家に売った理由っていうのが、かつて大好きだった舞加さんの面影がある灰音を自分のもとから逃がしてあげたかったという…いや、舞加さんは持っとくのねっていうその判断もだいぶエゴがすごいよなーそこで返せないんかい。ただ、ラストでやっと決心ついて、返そうと思った時に、舞加さんの本当の気持ちがわかって…もう感動!もしかしたら灰音と高成よりよかったと思う!!そして樹さん…なんてかわいそうな人…辛すぎるよ…緑香さんがいるから、自分にも幸せがあるから…辛い!!どうせなら、緑香さんと樹さんの出会いについて、もっともっと知りたかった。どうやって心は寄り添うことができたのかを知りたかったです。樹さんと舞加さんが相思相愛だったことを知っていて、どうやって夫婦になれたんだろうって…ここが一番気になってます。絶対いい話だ…
完全に潮がかわいすぎる
さっきから灰音以外を書いているけど、サブがすごい充実してるんですもん、仕方ないです。潮のイラストがとにかくかわいくてかわいくて…灰音に対する愛情が深いのもそうだけど、これだけかわいくて不特定多数の人間と付き合いを持ち、まっとうではない描写が…せつないんですよ。全然気持ちに気づいてくれない灰音なんていらない…みたいな、男でよくありそうだけど、潮の顔でツンデレで灰音溺愛で…おいしい要素が満載の少女でした。世界が灰音だけだったのに、千里先生と出会えたじゃないですか。依存していく感じが…萌。かわいい…千里先生のキャラもよかったですよね。愛した人は一人だけ…そう決めていたのに、自分の愛した人と似ている潮に一目ぼれしちゃって、心揺れ動いて、手放せなくなっていく。いじめてもみたり、愛してもみたり…
よく考えたら、この物語って、みんな想い人が2人いるんですよね!閑雅は高成と灰音、灰音は高成と閑雅、高成は灰音と閑雅、まおらは真栗と灰音、真栗はまおらと高成、潮は灰音と千里先生、樹さんは舞加さんと緑香さん、舞加さんは樹さんと和仁さん、草芽は小牧と灰音…すごいことになっている…一途でまっすぐなの和仁さんだけじゃん…ちょっとそれもだいぶ歪んでたけど…2つあったらどっちか選べない…欲望の物語ですよ、これは。
ボーイズラブをかるーく流している
はじめっから、真栗が閑雅(高成)を想っているのは衝撃的だったな…ボーイズラブは私の範囲外なんですが、これほど自然に描かれると、それでもいいかって思っちゃいました。真栗とまおらなんか、まおらが完全に女の子体質だったので違和感がまったくないんですもんね。そのまま普通の男子女子って感じで流れていきましたけど、これまたけっこう世相を反映しているのかもしれません。好きになる人に性別なんて関係ないじゃんっていうのが最近の考え方じゃないですか。子孫残せるかどうかじゃないですし。少女マンガでこれだけさらっと出されると、これを読んでた世代の子たちっていうのは、ジェンダーフリーの考え方がすんなり理解できちゃうのかもしれないですよね。それにしても、登場人物たちも全然ボーイズラブ気にしてないしな…すごい時代になったもんだ。
まあもう少し真栗がなんでまおら大事!!なのかっていうエピソードは分厚いほうがよかったような…個人的な期待です。そこ書いちゃったらヒーローヒロインが薄くなっちゃうしね、仕方ないとは思います。
草芽と小牧は本当に良かった
一番もっと見たかったのは小牧と草芽かな…草芽は灰音のことが好きで好きでどうしようもなかったのに、小牧という一途な子に出会って心持っていかれました。二人とも悪いところがないし、まっとうでよかったな~単純なラブストーリー展開でした。草芽がとにかくツンツンした性格なのもかわいかったし、橘に勝てないあたりもかわいかった。番外編でちらっと出てきたミズキ君は…なんてうすい存在…早く言わないからそうなるんだって。タイミング逃しちゃダメなんだって…!草芽は本当にいいキャラだったな~…
そんな感じで、紳士同盟クロスは暗い要素をちらほら持ちつつも、明るくまとまっていったラブコメディーマンガでした。大事なものが2つあったら…いいとこどりなんかできないし、どっちかを選んでいくんですよね。一夫多妻制の国でジェンダーフリーだったら余裕で解決するのかなーと思いましたが、聞くところによると結局嫉妬するらしいじゃないですか。やっぱり1つに絞るべきです。はい。要所要所、言い回しが作者の種村さん独特なところがあって、よくわかんないときもあるんですけど、それもまたよかったり。イラストがとにかくかわいいので、見ていて安心できる感じです。
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