ヒロインが行く道。
THE ヒロイン。
この作品で登場する学園は、お金持ちばかりで温室育ちも多い。名家の場合だと、金で学園内の地位を買収することすら厭わない。そんなのは関係ないとばかりに、元ヤンキーでも家にも売られた(と思っているが実際はそうではなかった)としても、自分で自分の道を切り開く主人公・灰音の姿は正しく、ヒロイン像を表したかのように見えた。それを多く象徴しているのが、灰音の人柄だろう。元から友人であった潮もそうであり、実のきょうだいである小牧と橘、さらには、高成と閑雅にいたってもそうであった。たとえ、型破りなお嬢様でも何といわれようと苦労しても人を惹きつけるその姿は、王道のヒロインといえるだろう。
ストーリーのバラエティさ。
なんといっても注目を集めていたのは、ストーリーの幅広さであろう。まおら(由貴)の事であったり、真栗の事であったり、本誌で連載されている作品の中であまり取り上げられなかったことがストーリーの中で構成されていた。そこに、懸念もあっただろうが、結果として結びついていることから、本作の力量がすごいと感じるところであった。その他にも灰音の母・舞加をめぐる学生時代からの恋愛模様や名家であるが故に出てくる血筋の問題など、取り上げているテーマが挑むような形になっている。作者の挑戦があってこそなのであろう。豊かに進められていったのは、見事であったと考える。
童話のような展開でも新しい。
この作品は、ほとんどの登場人物が、過去または現在進行形で、傷を負った状態でスタートし、伏線を張りつつも、その傷を乗り越えて行く展開に見えた。灰音たち学生だけでなく、灰音の養父(本当は血のつながった父)である樹たち親世代や、顧問の千里先生まで傷を抱えた状態を伏線として張り、実はこうだったのだという種明かしの部分はじっくり時間を掛けていたようなので、丁寧かつ繊細さもあり、良かった部分である。ラブストーリーがメインであるので、キャラクターごとに結ばれていくのは、これまた王道で童話のような面も持ち合わせていたように見えた。一方で、高成と閑雅の試練など、シリアスな部分はよりシリアスに対になり、悪者が出てくるようになり、キャラクターに感情移入しながら読み進めていける様も、童話を読んでいるように思えていた。(ところどころに「シンデレラ」という単語も出てきてはいた。)最後は「幸せになりました」というハッピーエンドに持っていく展開もそうであろう。このようにして、ストーリー展開を見せていただけたことに王道ともいえるのだろうが、内容のところどころに斬新さもあり、ラブコメであるが違うジャンルにも多様化されているそのような作品と分析した。
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