壮大なテーマを持っていると見せかけたキャラアニメ ラクスが可愛いから許すw - 機動戦士ガンダムSEED[シード]の感想

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壮大なテーマを持っていると見せかけたキャラアニメ ラクスが可愛いから許すw

3.03.0
映像
3.0
ストーリー
2.0
キャラクター
4.5
声優
3.5
音楽
3.5

目次

私が思うSEEDの良い点、悪い点

主人公キラとヒロインラクスがボロボロに批判されるたたかれる一方、いまだに根強いファンは多いし、賛否両論、さんざん語られている本作、今さら考察を掲げても目新しいものもないだろう。そんなわけでここでは好き嫌いだけの観点で書こうと思う。

本作、21世紀のファーストガンダムとか、原点回帰とかいろいろ宣伝して始まった。後に挙げるが監督も「非戦」をテーマにした、と言っており確かにそれを訴える場面も多数ある。

しかし、それが本当に描けているかは疑問であり、テーマ性に沿っているのかというとよく言っても50点くらいのできだろう。

一方キャラクターは個性もあってその人気が示す通りよくできていたと思う。ここから具体的に私が思う良い点、悪い点を挙げる。 

深刻ぶっているけど実はノーテーマ

ナチュラルとコーディネイターの戦争で始まるこの作品、最初はSF性と人種問題などをテーマとして扱うのかと思った。明らかな能力差がある、という設定だったし、搾取する側される側という話もあったからだ。しかし中盤を待たすしてその設定はどこかに行ってしまい、所属国家の違い程度の扱いになってしまう。コーディネイターでなければ扱えなかったMSもあっさりナチュラルが扱えるようになるし、戦争シーンはあっても「違い」を認識できるシーンは皆無だ。いっそデザイン的に目がザブングルみたいに特徴があるとか、みんなスーパーサイヤ人みたいに髪が立っているとか、オーラでも放っているとか何か一別できるものがあれば良かったのではあるまいか。

何故戦争が起こるのか、なぜ人は殺しあうのか、という葛藤のシーンもかなりもある。これもまじめに扱えばかなり深いテーマになりうる。中盤にキラとアスランがそれぞれの僚友を殺してしまい、友人と思っていた相手を殺さずにはいられなくなる、という展開は素晴らしい。カガリが「殺されたから殺して、殺したから殺されて、それで本当に最後平和になるのか?」という問いはシンプルにして痛切だ。そのような番組的経緯を経て、主人公キラは不殺に至る。

ここまでは実にうまい。しかしここからが問題なのだ。キラはこのアスランとの闘い以降、敵機を爆破せず戦闘能力を奪うという戦い方に徹するが、共に戦うアスラン、ムウらは遠慮なく撃墜しまくっており、その行為に異を唱えることもない。つまり本人がなるべくそうしている、という程度なのだ。ここまでなぜ人は殺しあうのか、とさんざん問い続けて、「僕はやめました。周りはやってるけどそれはそれぞれの判断ですよね・・・」と言わんばかりの放置っぷりで、一緒に悩み納得を求めた視聴者はあれ?と思ってしまう。

「平和の歌を歌う」というラクス・クラインも他人が製造したモビルスーツを奪ってキラに与え、自らも戦艦に乗って戦場に出る。しかもこの行為は「戦争は嫌だけど仲間を守りたい」といういくつかの可能性の中からの苦渋の選択をするキラよりも明らかに計画的であり能動的でもある。早期決着、というのが大義ではあるのだろうが、「殺さない」「戦争はしたいない」というテーマ性も消えて、結局は過去のガンダムと同様に「なるべく早く終わらせようね」に堕す。

監督福田氏は番組終了後、本作は「非戦というテーマを描いた」と言っているらしい。確かに、戦う意味をひたすら問い続けているのは本作の特徴ではある。前述したようにキラは「不殺」という一つの答えに到達してからはあまり疑問を呈しなくなるが、その後はクルーゼが人間がいるかぎり戦いは終わらない、という趣旨を連呼し続ける。しかし、「戦わない」という選択肢はこの話にほとんど出てこない。どちらかと言えば「戦いたくなくても大事なものを守るためには戦わなければならない時がある」という投げかけしか伝わってこない。

言ってしまえばこの作品は口当たりの良いセリフをちりばめただけでも何のテーマも無い。「非戦」は少し扱っただけの「ツール」でしかない。キラもラクスもアスランも戦わない選択を取れる機会は何度もあった。「非戦」を貫くのは難しいように思われているがそうではない。「殺されるから仕方なく殺す」は「非戦」を唱える人にとって言い訳でしかない。それを実現する方法は「話し合う事」「無抵抗であること」この二つしかない。ラクスのように財力や知名度、世の中への影響力を持っていればその動きは十分にできるはずだ。カガリも一国の首長の娘としてそのような主張を展開することは可能だろう。しかしそれはほとんど行われない。「基本的にガンプラとゲームソフトを売るためのコンテンツですから」と思うならば最初から「非戦がテーマ」などと言わなければいいのだ。この手の言い訳は富野氏もずっと言い続けているが、昭和のロボットアニメならともかく、今のアニメの自由度は高い。一切殺さない、戦闘もしない、でもかっこいいガンダム、は実現できるはずだ。ガンダムシリーズ中唯一ダブルオーだけは「戦わない道」をきちんと提示した。別タイトルの話なのでここでは語らないが興味がある方は本サイトのダブルオースペシャルエディションⅡ、Ⅲのレビューを参照していただきたい。 

悪い面はたくさん書いたので良い面も書いておこう

キラ、アスラン、ラクスをはじめとしてキャラは個性的である。「非戦」とか言わないで「キャラクターアニメ」です、と居直ってしまえばよい出来だと思う。前半悩み続けるキラ、友人との死闘、負傷を乗り越えての復活、不殺というスタイルの確立、出生の秘密などキャラ立て要素はてんこ盛りだ。ただ歌姫だったラクスが政治思想をどのように育んでいくかはほとんど描かれていないがそれも彼女の魅力の前には大した話ではない。どうやってフリーダム強奪の手はずを組んだんだ?とかいろいろ疑問はあるが「可愛いからいい!」と言ってしまえばそれで済む。結局本作の良さはキャラクター性に尽きる。

 

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