キーラがうまい
原作を読んでいなくても
原作を読んでいなくても、または19世紀のイングランドに興味がなくても楽しめます。ラブストーリーやフェミニズムに興味がなくても楽しめます。それはなぜか。物語の構造がしっかりしているからです。原作者オースティンの小説は、村上春樹さんやカズオ・イシグロさんといった、現代の小説家にも絶賛されています。文章の巧みさ、テーマの親しみやすさ、等オースティンの小説の良いところはたくさんありますが、何よりもストーリー展開の面白さが一番素晴らしく、この映画版にもそれが反映されていると思いました。他の小説もすべて素晴らしいのですが、この作品が特に優れているのは、主人公の周りの人たち、脇役までもが生き生きとして描かれているところだと思います。
名演技
オスカーにもノミネートされた主演のキーラ・ナイトレイの演技は素晴らしく、このお話が大好きで、よく理解して挑んだという感じがしました。そのお話全体の中の一部になれる女優さんだと思いました。それがエリザベスがずっと笑顔なのに寂しそうに見える理由かな、と思いました。キーラが読字障害というのが、文学と反対でいいなと思いました。その代わり表面でなく、深いところでエリザベスを理解しているんだろうな、と思いました。フェミニズムという観点からも、自立したイメージの強いキーラが、エリザベスを演じるのはぴったりだと思いました。他の役者もすべて上手で、会話のやりとりなど、とても自然でした。
カメラワーク
ジョー・ライト監督のおしゃれなカメラワークが都会的で素敵でした。現代的なフレームで、古典的な物語を撮っているのが、このバージョンの実写版の特徴で面白いと思いました。ライト監督も読字障害だそうです。オースティンの淡々としたような文章と、ライト監督の流れるような映像の撮り方が、重なっているように感じました。たくさんの人生に焦点を当てて、個々が目立ちすぎないように、サラッと流れるように物語が進む中で、主人公のエリザベスがよりいっそう寂しそうに切なそうに感じました。窓や鏡などが効果的に使われていて、絵画を見ているような気分になるときがありました。最後に彫刻が出てくるシーンで、原作では肖像画なのですが、彫刻を使ったところがやっぱり映画監督だと思いました。音楽も素晴らしく、ダンスのシーンなど映像とよくマッチしていました。独特のリズムを持った映画監督だと思います。
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