単なる勧善懲悪ではなく… 現実に繫がるフィクションのありかた
ドイツ人の実業家、オスカー・シンドラーが、第二次世界大戦中のポーランドで、100人以上のユダヤ人を救った実話を映画化。 スピルバーグ監督作品の中でも異色の存在で、後に「プライベート・ライアン」や「ミュンヘン」を手がけることになった嚆矢といっていいのではないでしょうか。 収容所で死を待つばかりの人々を「貴重な労働力」として採用、収容所の所長が残忍な人物に変わると、「労働力の確保」と称して、労働者たちを安全な収容所に移送するリストを制作しはじめる。シンドラー自身の立場にも危険が迫り、命を賭した救出作戦となった。 冒頭と最後を除いてモノクロの作品。およそ3時間にもわたる長大な物語ながら、飽きるひまはありません。 途中、一部分に色彩が用いられていますが、その用い方にもとても繊細で、考え抜かれた「意図」を感じます。 シンドラーもアーモン少尉も、100%善、100%悪の存在ではありません。その葛藤、心のゆらぎも織り込まれた話が、単にホロコーストの中の英雄物語としてでなく、この映画を重厚にしています。 最後のほう、シンドラーが救ったユダヤ人たちの子孫が、手を繋いで微笑みあうシーンがあります。 フィクション(映画)が現実に繫がった瞬間だな、と思いました。
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