いつまでも印象に残る佳作
姉妹愛を描く
父親の子ども(後に実父でないことがわかるのですが)を二人も産まされ、売られ、ただ一人の妹とのきずなを深めるセリーという黒人女性が主人公ですね。荒くれ男の所に嫁に出されますが、そこでは召使い同然の扱いを受けていて、笑顔も忘れて、日々、黙って過ごしています。セリーは、こつこつと勉強し、どこかに行ってしまった妹との文通を楽しみに生きていってるのですが、その手紙も夫に遮断されてしまうという悲惨な境遇。そのうち、夫が夢中になる歌手のジャグと知り合い、だんだん、自立に目覚めていくセリーという展開。そしてついに妹からの手紙を手にし、夫に暴言をはき、家を出て自立した後、最後に感動の再会を遂げるというのが、全体のストーリーでした。一言で言えば暖かな姉妹愛です。
アーティスティックな美しい作品
どこか整然と淡々と静かに、言い方を変えればアーティスティックな作品だと思いました。映像のきれいさもあるんでしょうね。風景というか。誤解を恐れずにいうと、黒人の俳優陣の肌の色合いが作品にしっくりと溶け込んでいるようです。もちろんカメラワークというか構図の良さと背景との組み合わせもうまくいっているということでしょう。
さすがスピルバーグ、何でもできる、何をやせても一流
つまらない映画かなとあまり期待していなかったせいか、とても心にしみ込みました。さすがスピルバーグだと思ってしまいます。2時間30分という長さも全然、感じさせず、ずっと観る者を引っ張っていってくれるリーダビリティーがあります。なんども見たいと思わせる要素を持っています。
最初は「父親の子を産むという悲しい境遇」次は「妹の貞操」「楽しみのない哀れな生活」「ジャグとのからみ」「周辺の黒人たちのからみ」「いつ家を飛び出すのか」「夫を殺すのだろうか」「妹との再会は」など、リーダビリティーの要素になります。エンタメの極意を知り尽くしているスピルバーグだからこその散りばめ方です。
自然とその物語にみんなが入っていってしまいます。夫が最後にちらっと改心の感じを出す辺りは、まあ、え、そうなの?ハッピーエンドなの?といかにもアメリカ的だなと思う部分もあるのですが、なかなかの佳作ですね。
タイトルもいいと思います。タイトルでいろんなことを想像しますが、このタイトルでこの映画を見ると、非常になんか考えさせられるというか、タイトルも自分のこの作品を受け止める要素の一つになり得るという気がしました。
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