想定の範囲内の作品
そこそこの脚本
脚本がそこそこに良くできていると思いました。そこそこです。ジャック・ニコルソンは精一杯のフレンドリーで穏やかな雰囲気を出しているし、ヘレン・ハントは胸が大きくていらいらした女を好演しています。最終的には二人が結ばれるという設定はまあ、ありきたりですが、人物設定がよくできているとは思いました。ただですね、彼が作家である必然性には欠けるような気がします。致命的な欠点ですよね、タイトルからしましたら。
人嫌いで変わり者の作家という設定もまず陳腐。作家というのはそういうものでしょう、と思ったりします。差別発言も辞さず、わがままで、潔癖症。このあたりがありきたりの設定からはずそうと四苦八苦した末の人物設定の付加価値にはなりますね。ああ、寂しいんだろうなと、観る者誰でもがそう思います。
そしてそんな男が好意を寄せるウエイトレスを作り上げました。そして、その息子の病気を治すために一役買ったり、隣人を救うために部屋を貸したり、犬を預かったりと、口から出てくる辛らつなものとは別に心に何か暖かいものを持っているということが醸し出されます。ああ、実はとてもいい人なんだなと観る者誰もがそう思うようなストーリー展開。
ジャック・ニコルソンがあってこそ
そしてウェイトレスになかなか本心を言えないというじれったさ、シャイさ、もどかしさで、作品を盛り上げていくのですが、普段は悪役とか曲者とか、遊び人役がとても似合うジャック・ニコルソンが、よくがんばって演じます。まあ、クリント・イーストウッドでもよかったろうし、ラッセル・クロウでもできるでしょう。見た目が悪い人っぽい人が演じることでよりギャップを生むのでしょう。というわけで、ジャック・ニコルソンだからこそ、一応のそれなりの作品に仕上がったと言っても過言ではないです。
最後の最後に何とか思いを打ち明けハッピーエンドになるという設定は書かずもがなです。
もう一捻りほしかった
ジャック・ニコルソンで言えば、普段の彼の役どころと違う中でのベスト作品でいうと、「アバウト・シュミット」のだと思います。こちらの方は、限りなくさびしい、かわいそうな老人を演じていて、めちゃくちゃ同情します。この作品では、想定の範囲内の作品に想定の範囲内の演技が繰り出されたという感じにしか思えません。あとひとひねり欲しかったですね。実は、ニコルソンは多重婚者だとか、殺人歴があるとか。
ドライブのシーンでヴァン・モリソンがかかったのはうれしかったです。
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