読みにくく期待はずれな作品
淋しい狩人を期待して読んだが…
宮部みゆきと言えば、「模倣犯」や「龍は眠る」などを始めとして多くの賞を受賞した作家。私は、宮部みゆきの本を読んだことがなかったので、初めて「淋しい狩人」を読んだ。きっと、面白いのだろう期待したのだが、正直つまらなかった。謎解きやミステリーがあまり好きではないのだが、小説の中にいる登場人物の誰にも共感できない。本を読むのは、嫌いでない私なのだが「淋しい狩人」を読み始めだすと眠くなってしまった。
物語の内容も頭の中で、なかなか想像するのが難しい文章で書いてあるので理解し難い。さらに文章にリズムが無く途切れ途切れ感があるので、流れるように読むことが難しかった。孫とイワさんの関係も、ちょっと生意気な孫を軽くぶって、イワさんが正すという場面が、何回も出てきてワンパターンだなと思う。事件の真相だけではなく、そういった部分にも、もう少し力を入れて欲しかった。宮部みゆきは、偉大な作家であるはずだから、賞を受賞した彼女の作品をもう一度読んでみようと思います。
台詞が陳列で残念
「淋しい狩人」で違和感を感じ事の一つに、台詞がなんともお粗末だなと思った。私みたいな素人が言える感想ではないのだけれど、文章に関しては、自分の勉強不足や読み込みの悪さ、理解力のないと感想も当てにならないが、台詞の悪さは誰にでもわかると思う。
なんとも、しらじらしい会話、今の女性がこんな言い回しをするだろうか?と思う箇所や、真面目だった登場人物が、ふいに乱暴な言葉遣いになったりして、読んでいても歯がゆい感じがした。奥田英朗のように、とても上手く台詞をかける作家がいるかと思うと、宮部みゆきのように、台詞にあまり力を入れていない作家もいるのかも知れない。台詞がしっくりいってないということは、その小説自体のリアル感が根こそぎ奪われるような気がして、本当にもったいない。
その場の状況が把握しにくい
読み進めて行くと、他の小説だと没頭してしまうパターンなのだが、「淋しい狩人」では、その状況がなかなか把握しにくかった。特に、多くの登場人物が、一つの場所に集まっている場面では、誰が話しているのかわからなかった。内容は、誰が犯人なのかを模索する話なので、誰が口にした言葉かということは、非常に重要になる。それなのに、誰の口調かわからず、しかも誰が話していたなどの添え書きもしてくれていないので、前のページに戻りながら、読み進めていくことになった。私の読み方が悪いのか、この小説がわかりにくいのか、読んだ人の感想を聞かなければわからないが、とにかく状況がわかりにくい小説だと思う。
単なる謎解きで終わってしまった
謎解きの面白さが、あまりにも単純で人間の奥深さや心の叫びのような事を感じる事ができない。結婚式で引き出物の小説に書かれていた言葉が、どうして書く事ができたのか?だけは、気になるけれど、どうしてお姉さんが死に至ったのかの気持ちの流れは、サクッと書かれているだけなので、悔しさや悲しみは伝わってこない。罪を犯した人の後悔の念や、その人を殺そうとした感情が、感じとれないので、退屈だった。
人が死ぬ意味とは?
推理小説は犯人を探すこと、だったら人が死ぬ意味ってなんだろうなと考えてしまう。単なる犯人探しとなっている物語。意外な人物を犯人にしたて、小細工によって犯人像をわからなくしていく。それが、推理小説の醍醐味なのかも知れない。だったら、人が死ぬという意味はどうなんだろうって思ってくる。犯人を捜すために、人を殺したりする事になったら読んでいる人の心をつかめないと思う。心に響くような小説だと期待して読んでしまったので、なんだかがっかりしてしまった。
なぜ古本屋を舞台としているのか?
古本屋を舞台にしているのだが、本当に古本屋じゃなくてはいけなかったのかな?と疑問を感じる。その理由はイワさんが、本にたいしてあまり愛情を持っていないという事と、孫の稔が、あまりにも浅はかでバカっぽく描かれているので、はたして古本屋にした意味があるのかと思えてくる。確かに、古本屋という舞台は、ふるめかしくて独特の雰囲気があり、シュチュエーションとしては最高なのだとは思いますが、それをこの小説では上手く使いきれていません。同じ古本屋を舞台とした小説「ビブリア古書堂の事件簿」という小説がありますが、この本の方がよっぽどリアルで、細部までよく調べ上げられた物語でした。この物語の舞台は、絶対に古本屋ではなくてはいけないのです。しかも、主人公も本に対しての深い愛情をもっており、読んでいる私にも伝わってきました。
時代からすると、「淋しい狩人」の方が、古本屋を舞台として書いたのが先で、様々な賞を受賞している宮部みゆきが書いたのですから、格が上なのかも知れません。でも、私は後から書いた「ビブリア古書堂の事件簿」の方が、好きですね。
結局「淋しい狩人」について褒め言葉は言うことができませんでした。申し訳ないですが、良い部分を感じる事のできない小説でした。
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