ドンデン返しを含めて脚本がすばらしい傑作
ストーリー設定の妙、主人公づくり
ある日、列車事故で130名を越す死者が出た中、たった一人無傷で生き残った男というのがこの映画のストーリーの着想です。こういう偶然・奇跡は起こりうるのかもしれませんが、シャマラン監督はこれをアイディアの起点として逃さなかったんですね。
で、この男を主人公に仕立てて脚本作りを始めたのでしょう。肉付けとしてこの主人公を、実は元フットボール選手(ブルース・ウィルス)だが、実はこれまで病気もけがもしたことがないというように設定します。
対比的なもう一人の人物の登場
そしてもう一人の重要人物を登場させます。それは逆に先天的にすぐ怪我をする病気の画廊主(サミュエル・ジャクソン)で、彼が、ブルースが怪我や病気をしないことを本人に告げ、ブルースが考え始めるという展開が始まります。この人物の対比的な登場のさせ方もお見事です。
ブルースは実は、家族も仕事もどこか物足りなく、いつも淋しく感じるのはなぜだろうと前々から思っていて、実は、それがそういう能力に起因するのではないかという、ドラマ性を持ったストーリーの軸にしていきます。
そしてサミュエルの導きで、自分の特殊な能力(人と触れあうだけでその人の人生が見えたり、もの凄い力があったり)を自分で認めていき、最後には悪者退治に殺しに出かける。そしてサミュエルと握手をして、サミュエルが列車事故を含めた数々の大量殺人の仕掛け人であることを知り愕然とするというのが、この作品の大ドンデン返しになります。驚きですね。そのフラッシュバックのところのスピード感もすばらしくてため息ものです。
英雄と悪者であるが、結局、人を殺すことによる満足が二人の共通の欲望であるというのが、暗喩的にテーマになっているところも奥が深い。
脚本がすばらしい超傑作
とにかく傑作だと思います。いろんな要素が詰まっています。奥深いテーマ、伏線の張り方、シンボライズ(この場合、アメコミマガジン)、ラストのどんでん、そして何より全体を貫く「引っ張る(ものかなしい)雰囲気」。
ブルースがシックスセンスでも見せたような静かな演技を披露していてなかなか素晴らしいです。また、サミュエルを除いた俳優陣の影が薄くて、これまた逆にいい意味で作品に重みを持たせていますね。脚本が二重三重に重なり合って、その上、わかりやすさ(何が言いたいんだろうというのとは別の)があるので、やはりこの作品は脚本があってこそだと思いました。
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