二人の主人公による目線 - はなまる幼稚園の感想

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はなまる幼稚園

4.404.40
映像
4.50
ストーリー
4.35
キャラクター
4.50
声優
4.25
音楽
4.50
感想数
2
観た人
2

二人の主人公による目線

5.05.0
映像
5.0
ストーリー
5.0
キャラクター
5.0
声優
5.0
音楽
5.0

目次

「クレヨンしんちゃん」との比較

「はなまる幼稚園」と類似しているアニメ作品を考えたとき、思い浮かんだのが「クレヨンしんちゃん」です。他にもあるのかもしれませんが、私には他に思い浮かべることができませんでした。類似しているように感じるのは、両作品とも、幼稚園児が主人公のアニメ作品だからです。とはいえ、主人公の年齢設定は少し違います。「クレヨンしんちゃん」の主人公である「野原しんのすけ」は、年中クラスの存在です。また、「はなまる幼稚園」の主人公、杏(あんず)は入園するところから描かれていることで、年少クラスなのは明らかです。しかし、アニメ本編における年齢差においては、特に気にする大きなポイントではないでしょう。また、杏は女の子キャラクターに対して、「野原しんのすけ」は男の子キャラクターです。杏を「クレヨンしんちゃん」の登場人物に置き換えるなら、「桜田ネネ」なのではないでしょうか。「はなまる幼稚園」というアニメ作品は、「桜田ネネ」を主人公に据えた「クレヨンしんちゃん」なのだと捉えることができるのだと思います。「桜田ネネ」は、オマセな女の子キャラクターであり、杏と同じ方向性といえます。そして、主人公が女の子キャラクターだからこそ、クラスの担当先生は、男性キャラクターに代わっているのだと思います。そして、オマセな主人公が、担任先生に恋する方向に仕向けることで、アニメ本編に面白みがでてきます。そうして誕生したのが、もう一人の主人公である土田先生なのだと考えられます。私自身が「クレヨンしんちゃん」を思い浮かべたのも、「はなまる幼稚園」という作品が「クレヨンしんちゃん」を参考にして、再構成されたように感じられるからです。ただ、両作品のアニメ本編の描き方は、違うもののように思えます。主人公「野原しんのすけ」の存在をメインに据える「クレヨンしんちゃん」に対し、「はなまる幼稚園」では、二人の主人公による目線という要素は大きいように感じられます。一人の主人公の存在感を強く打ち出す「クレヨンしんちゃん」と、二人の主人公によって、子供目線と大人目線を描く「はなまる幼稚園」では違う印象をもちます。類似点はありますが、相違点の方が多く、「クレヨンしんちゃん」を大胆に再構成しているアニメ作品なのだと思います。

二人の主人公

杏と土田先生の恋愛要素は微笑ましく、アニメ本編の魅力になっています。杏と土田先生の関係性を語る上で、山本先生の存在は欠かせないものです。杏、土田先生、山本先生の不思議な三角関係が面白いと感じさせます。杏から土田先生に向けられるベクトルで面白いのは、明らかな年齢差です。20歳近く離れた年齢差は、不自然なものです。また、先生と生徒がもつ恋愛関係の禁断性も、面白く映るのだと思います。土田先生から山本先生に向けられるベクトルで面白いのは、一方的な片想いの構図です。土田先生と山本先生は結ばれてほしいと思う反面、結ばれそうで結ばれない展開が面白いのです。きっと、山本先生も土田先生に好感をもっており、明確な告白をすれば、良い方向に転がる可能性は高いです。しかし、結ばれない展開が面白いのであって、結ばれてしまったら、面白さは半減してしまうのだと思います。山本先生から杏に向けられるベクトルで面白いのは、恋愛感情ではないことです。この関係を現実社会に当てはめてみた時、杏と山本先生の関係性はありえません。杏から見れば、山本先生は恋敵であり、火花を散らせる展開であることが自然なものではないでしょうか。しかし、杏と山本先生の間に対立関係は描かれていません。むしろ、恋愛感情とは違った愛情が垣間見えるのではないでしょうか。

「はなまる幼稚園」という作品タイトル

ここでは、再び「クレヨンしんちゃん」と比較して考えていきます。両者の作品タイトルにおいても、指している対象が異なります。「クレヨンしんちゃん」は主人公の存在を表した作品タイトルです。しかし、「はなまる幼稚園」は、アニメ本編の舞台を表している作品タイトルです。人と舞台で、作品タイトルの指しているものが明確に違うのです。そして、その作品タイトルの違いは、アニメ本編にも明確に表れています。「クレヨンしんちゃん」は、主人公を指した作品タイトルなので、アニメ本編の舞台は幼稚園に限られていません。むしろ、野原家や街中が、アニメ本編の舞台になっていることも多いです。それと比較して、「はなまる幼稚園」はアニメ本編における舞台を指していますので、幼稚園内での出来事が、アニメ本編の大部分を占めています。幼稚園という存在の有り様を描いている部分が大きいと思うのです。そして、幼稚園の職員として、珍しい男性職員をアニメ本編の主人公に据えていることも、幼稚園の有り様を描いている要素を表しているように思います。幼稚園という存在の現実を描いている一面が、原作者の込めたアニメ本編の中のメッセージ性のように感じられます。自主的に早い出勤して働く山本先生の存在も、厳しいと言われている幼稚園職員の労働環境を示唆したもののように思います。きっと、幼稚園の先生って、物凄く大変なお仕事であることが理解できます。







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他のレビュアーの感想・評価

日常系の安定した作品かと思いきや・・・

~その①:ひと作品に主人公が二人いる~本作品では、大人の見る深夜アニメにおいて『幼稚園』が舞台設定のアニメというのは珍しいと思われる。というのも、視聴者が大人であるなら大概のアニメの舞台設定は、より実年齢に近い場所へと限られてくることが多いからだ。例え、十代が視聴していたとしても、アニメの舞台設定は中学校までに限ることが多く見られる。しかし、本作品は幼稚園という舞台設定ではあるものの、幼稚園児の杏と教員の土田先生(通称:つっちー)という二人の主人公を作ることで、そんな深夜アニメを視聴する大人も子どもも感情移入がしやすい作品となっている。~その②:様々な愛の形が描かれている~主人公・杏は幼稚園の先生である土田先生のことが大好きで、日々猛アピールを繰り広げているのだが、その様子は杏の母である桜が高校時代に夫であり恩師である男性(=杏の父)にアプローチしている様と重なるものがある。まさに、一...この感想を読む

3.83.8
  • 玄
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  • 2217文字
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