日常系の安定した作品かと思いきや・・・
目次
~その①:ひと作品に主人公が二人いる~
本作品では、大人の見る深夜アニメにおいて『幼稚園』が舞台設定のアニメというのは珍しいと思われる。
というのも、視聴者が大人であるなら大概のアニメの舞台設定は、より実年齢に近い場所へと限られてくることが多いからだ。例え、十代が視聴していたとしても、アニメの舞台設定は中学校までに限ることが多く見られる。しかし、本作品は幼稚園という舞台設定ではあるものの、幼稚園児の杏と教員の土田先生(通称:つっちー)という二人の主人公を作ることで、そんな深夜アニメを視聴する大人も子どもも感情移入がしやすい作品となっている。
~その②:様々な愛の形が描かれている~
主人公・杏は幼稚園の先生である土田先生のことが大好きで、日々猛アピールを繰り広げているのだが、その様子は杏の母である桜が高校時代に夫であり恩師である男性(=杏の父)にアプローチしている様と重なるものがある。まさに、一子相伝で受け継がれている『愛』の形は微笑ましく感じられる。
更に面白いと感じられる点としては、もう一人の主人公の土田先生が高校時代に思いを寄せていた女性というのが、なんの因果であるのか、杏の母である桜であるということ。そして、幼稚園には土田先生が片思いをしている山本先生がいる。昔愛した女性が子どもを産んでおり、その子どもが自分の勤め先である幼稚園に通っているという事実と、今の勤め先に新たに愛した女性がいるという事実、これは愛した男性側としては複雑な心境になるが、視聴者側としてはドキワクな魅力を感じる状況設定なのではなかろうか。
杏と土田先生と山本先生、そこに杏の母・桜という不思議な恋愛相互関係も一つの見どころであると同時に、園内外の別のところでも様々な愛の形が展開されている。
一つは『家族愛』というジャンルで括れるのが、桜と杏の父との関係と土田先生の妹・さつきのブラコン愛、さらには杏の友人・柊の父へのファザコン愛や同じく杏の友人・小梅に対する兄(=智之)からのシスコン愛、杏達とは違う組(=ひまわり組)の雛菊に対する父であり組長の娘愛といえよう。様々な家族愛の形を網羅しているのではないかという驚きも感じる。
もう一つの愛のジャンルでいえば、学生時代の土田先生が桜に抱いていた愛と同じ『情愛』という愛の形であろう。園内でいうと、土田先生に助けられたということから彼を一途に思う雛菊の片思い、園外では園児に人気の漫画家・花丸先生が編集者であり山本先生の妹でもある真弓への片思いがあげられ、作中の中でもファンにとっては見どころともいえよう。
他にも愛というよりは『思いやり』に近いものであるが、杏の友達の柊と小梅が杏に向ける視線と姿勢はまさにそれなのではないか、と感じられる。
~その③:ぱんだねこがアニメから飛び出して、マルチに動いている~
本作品の中に出てくる漫画の登場キャラクターでもあり、園児に大人気なぱんだねこ。そのぱんだねこは、アニメのHPで登場人物たちの専属レポーターという立ち位置でブログを書いていたりする。二次元に存在するものが三次元の世界で動き、存在感を発揮しているというのは、現実とアニメを明確に区切って認識しがちな大人からすると、その境を取り払ってしまうような、遊び心が少ない大人の意表を突く粋な計らいともとれるだろう。
ブログの出来も、まるで有名芸能人のブログのような文面と完成度の高さであることも、新たな刺激を求める視聴者としては嬉しいポイントなのではないか。
作中のキャラクターが現実の中で生き生きと動いているというのは、なかなかこういった一見して日常系アニメの様な作品の中では珍しい工夫の一つともいえるのではなかろうか。
~その④:ストーリーだけではない。音楽にも大注目!~
他にも本作品の凄いところとしては、毎回頻繁にEDの歌と映像がかわるという、その斬新な音楽映像もあるといえるのではないだろうか。アニメ・化物語がOPをストーリーのメインキャラクターである女性陣のキャラクターソングで飾っていた一方で、はなまる幼稚園はEDを作品登場キャラクターの心情に合わせた歌(=キャラクターソング)としているのは、主人公以外のキャラクターファンからすると、”今回は、どのキャラクターのどんな歌が聴けるのかな?”という楽しみがあり、嬉しいのではなかろうか。
ED映像をアニメHPの中で掲載しているところも、もう一度聴きたいファンからするとこれまた粋な計らいなのではないかと思われる。
~その⑤:誰を中心に見ていくかで、ストーリーの見方が変わってくる~
主人公が二人いるということは、最低でも二軸(園児目線と教員目線)でストーリー展開を追っていくことが可能であろう。
しかしながら、べつにその二人に限定して話を見ていかずとも、他のキャラクターに視点を変えてストーリーを追っていくのも、この作品を深く理解していくには大切なことかもしれない。人は子どもからいずれ大人になり、そして親になったり、誰かの「先生」になっていく・・・様々な変化を体験する中でも、人は見たいようにしか物事を見ないことが多く、それは成長するにつれて凝り固まっていってしまうのが世の常であるため、本作品はそういった人たちには是非とも見て、何かこれまでの自分ではあまり感じられなかったものを感じてもらえたら、そのきっかけにでもなってくれたらよいかな、と少し期待していたりする。
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