ハードボイルド路線
「シティーハンター」との比較
闇のボディーガードという役回りが、別アニメである「シティーハンター」を彷彿とさせます。また、女好きという点においても、「妖獣都市」主人公の滝 蓮三郎と「シティーハンター」主人公の冴羽 リョウにおいて共通しているように思います。ただ、同じ女好きであっても、女性に対してのアプローチの仕方は全然違うもののように感じられます。「シティーハンター」主人公のリョウは、片っ端から発見した美女に、玉砕覚悟でナンパしていくスタイルです。それと比較して、「妖獣都市」主人公の蓮三郎は、じっくりと腰を据えて、口説き落とすタイプです。アプローチの有り様は、まるで正反対のように感じられます。また、「シティーハンター」主人公のリョウは、アニメ本編の中では実力NO.1の存在で、圧倒的な強さを誇ります。「妖獣都市」主人公の蓮三郎は、人間界においてはNO.1の実力を持っているのかもしれません。しかし、敵となるのは妖獣であり、明らかに戦闘能力としては、劣っている感が否めません。設定や役回りは似ているように感じますが、比較してみると、全然違う存在であることが分かります。ヒーロー的な存在である「シティーハンター」主人公のリョウに対して、「妖獣都市」主人公の蓮三郎は、非力で現実的な存在といえるのかもしれません。客観的にみると、「妖獣都市」主人公の蓮三郎はもっと強い存在で良かったと思うのです。特殊能力で霊感や霊力・超能力を備えた存在で、妖獣と互角に戦うことができるものでも良かったように思います。しかし、劇場版アニメ「妖獣都市」の制作スタッフは、特殊能力を持たない一般的な人物像にこだわったのだと思います。
ヒロイン麻紀絵の魅力
徹底して人間サイドの味方でいる姿勢が、麻紀絵の魅力なのだと思います。妖獣であるにも関わらず、自分の仕事をとことん貫き、拷問にあおうとも信念を曲げない姿勢が素晴らしいです。麻紀絵から感じられるのは、まさに「プロ意識」という部分に尽きるのではないでしょうか。物語冒頭では、主人公の蓮三郎に対して、あくまで「今回の仕事のパートナー」と仕事上の付き合いを強調しています。しかし、仕事上の付き合いでありながらも、蓮三郎をフォローしたり、助けようとする姿勢がありました。そういった姿は、人間という存在ではなくても、観る側からは魅力的に映るヒロインのように思います。麻紀絵のことを応援したくなります。そういった観る側の気持ちも、制作スタッフの狙いのように感じられます。麻紀絵のことを応援したくなっている時点で、アニメ本編に十分に引き込まれていると思うのです。応援したくなる、という気持ちをもっている時点で、まさに感情移入してしまっている自分がいるのでしょう。また、本来は妖獣である麻紀絵という存在は、妖獣側のスパイなのではないか、という疑問が付きまといます。麻紀絵の心の有り様と人物像は、「妖獣都市」という劇場版アニメの面白みにもなっているのだと思います。
面白い爺さん!?
とても長生きしているであろう爺さん、マイヤートも魅力的なキャラクターでした。
スケベであり、年寄り特有のワガママ全開のマイヤートは、遠くから眺めている分には面白く感じます。でも、現実社会において、自分の身近にこんな人物が居たら最悪なのでしょう。アニメ作品の登場人物だからこそ、面白く感じるのでしょう。とても長生きしており、スケベさ全開、アニメ本編では偉い存在、なんだか他アニメ作品にマイヤートに似た人物がいるような気がします。少し考えてみて辿り着いた結論は、「らんま1/2」の登場人物である「八宝斎」の存在です。モヤモヤしていたものが、しっかり答えを導き出せてスッキリしました。演じている声優も同じなのかもしれませんが、声も同じように感じられました。そのおかげで似たような印象をもつのかもしれません。
物語結末について
この結末を物語冒頭で、どれだけの方が想像できたでしょうか。私自身は想像できませんでした。想像していたものと全然違うもので、とても驚きました。この意外性においても、「妖獣都市」という劇場版アニメの特徴なのだと思います。蓮三郎と麻紀絵が結ばれるように、仕向けられた物語だったことは感動です。そして、異種間との交わりを禁忌とするアニメ作品が多い中、「妖獣都市」の結末は正反対のものであり、斬新な結末だといえます。特に印象的なのは、異種間との交わりは、明るい材料としている点だと思います。そして、マイヤードがあれだけ強い存在だったことにも驚きがありました。良い意味での意外性は抜群でした。守るべき存在だったマイヤードが、守ってくれる強い存在と、全く正反対の方向にシフトしたことも面白かったです。きっとスケベなのは、本来の姿だったのでしょうが、ワガママ全開だったのは演技であり、実は良い爺さんだったことが明らかになりました。物語終盤でのどんでん返しは、あまりにも強烈でインパクトある展開が続きました。そして、最後の着地も心地よいものであり、満足感のある劇場版アニメだったように感じました。
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