構成力に秀でた名作
いつの時代もオールタイムベストに入る名作
フロリダの豪邸で他界した新聞王ケーンが最後に残した「バラの蕾」という言葉。この言葉の意味を探るため、新聞社は、ケーンの生い立ちから死までの生涯を関係者の話を元に探っていくというのが、物語のメインストリーム。フラッシュバック形式で映画は進んでいきます。全編モノクロなので今時の人にはとっつきにくいかもしれないし、大団円的なエンターテイメント性は薄いかもしれません。しかし映画通の間ではとても評価の高い映画で、当時も今もオールタイム映画ベスト○○などには必ずと言っていいほど上位にランキングする傑作とされる映画です。その要因はソツのない構成力にあるように思います。
波瀾万丈で濃密な人生描写
宿屋を営んでいたケーンの母親に、宿代の代わりに客が残していった鉱山の権利証が手に入ります。この権利証譲渡の代わりに息子ケーンを大富豪に託し、息子は一躍大金持ちになります。ケーンはその後新聞事業に興味を示し、後に州知事に立候補するなど政財界に相当の影響力をもつまでになります。その後、愛人のスキャンダルが発覚し、政治家の道は閉ざされるのですが、才能のない歌手と二度目の結婚。彼女のためにオペラハウスまで建てます。そのうち、唯一の友で部下の男とも関係がぎくしゃくし始め、彼を首にする。妻のためにフロリダに豪邸を建てますが、妻は、自分自身のことだけ愛するケーンに愛想をつかし、家を出ていく。ケーンは孤独の生涯を閉じる。ケーンが集めた骨董品が整理され、焼却されるシーンで、バラの蕾は子供時代に冬に遊んだソリのメーカーの名前だと(我々に)わかる。
とにかく限られた時間でのケーンの「人生紹介」なので、かなり波瀾万丈で濃密な人生として描かれています。構成においては、まず、一通り、ケーンの生涯をテレビニュースというスタイルで紹介し、それでは不十分だとでもいうように「バラの蕾」という謎の言葉に焦点をあてて、関係者から話を聞いてまわり、断片的な関係者の話からストーリーをつないでいきます。ケーンの行動を報じる新聞紙面も有効に使われています。
過去から現在、現在から過去へのつなぎがいい案配で見事につながれます。また、そのつなぎ場面で、はっとするような効果を差し込みます。(例えば、鳥の鳴き声、その鳥一羽がぱっと現れるだけで、場面が南国に変わることがわかるなど)
オーソンウェルズの見事な演技
驚くべきは当時二十五才のケーン役のオーソン・ウェルズが、老年までも演じていてこれがまた見事な演技です。バラの蕾の種明かしの仕方(燃えるソリの片隅にバラの蕾みのメーカー名が画面に映し出される)も感傷を誘います。難を言えば、ケーンは孤独な生涯を過ごしたということなのですが、それほど孤独さがひしひしと伝わってくるわけでもなく、身勝手だった、という点にいても、それが関係者が言うほどのものか、と思えなくもないです。ただ、それを説明的に映画内に追加するとまたわざとらしくなるので、なかなか難しいところです。
いずれにしても、アメリカ映画の鬼才ウディ・アレンの一連の作品がこの映画を参考にしているのではないかと思います。当時は本当に独創的で斬新な映画だったのでしょう。
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