同じ道を選んだ親子の行きついた先は?
ウィル・スミス親子共演作
親子共演で話題となった映画ですが、親子共演の映画はこれが2作目。1作目はこの「アフター・アース」の7年前に公開された「幸せのちから」という映画でした。こちらも親子役として共演しています。「幸せのちから」では苦しい生活の中、ともに歩いていこうとする親子の姿を演じていますが、この「アフター・アース」では一度すれ違った関係の親と子が、共に困難を乗り越える様子を演じています。この映画はウィル・スミスが、テレビ番組「I Shouldn’t Be Alive」の人里離れた山奥で救助を待つ親子の話をみたことがきっかけで作られたようです。親子で同じ道に進んでいるところはスミス親子ともオーバーラップします。そして息子役の役名の「キタイ」ですが、ウィル・スミスのいろいろな思いが込められているように感じます。親日家としても有名なウィル・スミスですが、サイファ・レイジ将軍の息子に対する「期待」と、ウィル・スミスのジョイデンに対する「期待」をあえて日本語の発音で重ね合わせて、この役名となっているのではないでしょうか。主役を自分ではなく息子であるジョイデンにしたことでも息子への期待がうかがえます。
レイジ親子にみる親子関係の修復
キタイは親と同じ職業につくことを選びましたが、レンジャーへの道は思ったより厳しいようです。自分は父にあこがれてレンジャーになる道を選んでいますが、いつまでもレンジャーに正式任用されない自分を、父は「息子として受け入れてくれているのか?受け入れるどころか恥じているのではないだろうか」という不安もあるようです。家でも司令官のように接するサイファは、キタイにとって父でも信頼して相談できる上司でもないといった状態なのでしょう。相談したところで優秀な父には、認めてもらえない者の苦しみはわからないと思ってしまっているのかもしれません。しかしサイファの方もずっとキタイと離れて暮らしているためどうやって声をかけたらよいかわからず、普段から慣れている上司としての対応となってしまっていたのでしょう。
このようなギクシャクした親子が関係を修復しようと思ってもすぐに良くなるわけがありません。お互い「自分を相手がどう思っているのか」わからないでいるのですから、相手の行動に対し信頼をすることも難しいでしょう。しかし、そこはやはり親子という絆の強さなのでしょうか?キタイは「父が見守ってくれているから大丈夫」、サイファは「キタイはきっと任務をやりとげ、生きて自分のもとに帰ってくる」ということを信じてお互いの命を預けます。そこには相手がどう思っているかというのとは全く違う次元で、お互いを愛しているということが感じられているからこそできる行為なのでしょう。どんなにギクシャクしていたとしても子は親から、親は子から愛されていると実感できることが大切なのでしょう。それはいくら言葉で修復しようともできないところなのかもしれません。
恐怖を克服した「ゴースト」
人の恐怖を感知して攻撃してくる「アーサ」に対抗するためには、恐怖心を克服しなければなりません。では恐怖はどこからくるのか?それは「未来のことを恐れるときに恐怖を感じ、まだおきてもいないことに捕らわれている状態で、それやめたとき恐怖を感じなくなった」とサイファが言っています。恐怖を感じることで行動を制限し、自分の身を守ることができることも確かですが、それも行き過ぎると恐怖のあまり何もできなくなってしまいます。自分に対する信頼とそれは密接な関係があるのかもしれません。
何か行動を起こそうとするたびに、失敗することばかり思えばそれは恐怖となって自分に返ってくるでしょう。結果行動を起こすと失敗するのであれば行動を起こさない方がよいと考えてしまいます。逆に必ず成功するとわかっていることであれば自信をもって行動することができるでしょう。恐怖を克服するとは自分に対する信頼を自分自身に勝ち取ることだと思います。「状況を判断し自分にできることをする」自分にできることをするのですから、「失敗したら」とか「できるだろうか」という心配はそこには生まれません。
キタイも最後には恐怖を克服し「ゴースト」となります。アーサとの戦いの中、一瞬でも死を覚悟したことで恐怖より倒さなければという気持ちのほうが勝ったのかもしれません。または発信器が作動することが分かったことで、助かるという確信が「ここでアーサに倒されるわけにはならない」という思いに変わったからかもしれません。どちらにしても「今やるべきことをやる」という風に気持ちが切り替わったことで「恐怖に打ち勝つ」というよりは、「恐怖を感じている状態では自分の能力が発揮できていない」ということを強く実感したのでしょう。自分の能力をきちんと確信することができたからこそ、救出されたときひとまわり大きく成長した姿としてサイファの眼に映ったのでしょう。
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