見た目は可愛い女の子ロボットなのに~
物語としてはシンプル構成
ひたすら追いかけてくるMー66から逃げる展開なので、観ていて分かりやすい印象をもちます。
約50分のOVA作品なので、潔く割りきった内容で、膨らませ過ぎることもないものだったように感じました。時間における内容量のバランスが適切なものだったように思います。これだけの内容で、面白く演出できるのは凄いことではないでしょうか。
「ブラックマジック Mー66」というOVA作品の要素が良かったのだと思います。
一言で要約すると、「命懸けの鬼ごっこ」です。命を狙われている、という危機感・緊張感が物語終盤に向けて徐々に強くなってくるのが面白さを感じさせる要素なのだと思います。主人公たちに感情移入して、アニメ本編に没頭できると楽しいのだと思います。
限られた時間の使い方は、正解だったのだと思います。
限りなく、ベストに近いベターなのだと受け止めています。近い印象をもつ作品として、名作洋画として名高い「ターミネーター」の存在が挙げられます。ロボットが命を狙って追いかけてくるのは同じ展開なので、日本版「ターミネーター」といえるのかもしれません。むしろ、「ターミネーター」を意識して、制作されたOVA作品なのかもしれません。
ただ、同じものを制作しても意味はありません。
追いかけてくるロボットを女の子にしてみたり、軍がテスト開発したロボットの運送途中での事故が発端になっていることなどオリジナリティーを感じさせるものに仕上がっていると思います。
何故だか女性型ロボット!?
正直、女性型ロボットだった必然性がないように感じます。制作スタッフ、キャラクターデザインを担当された方の趣味・嗜好が強く反映されたのでしょうか。
一般的に考えれば、機能性を重視されると思いますので、人型である必然性がありません。
しかし、洋画「ターミネーター」も人型だったので、その部分は百歩譲っても、女性である必然性は皆無だったと思えてなりません。そもそもロボットの性別を意識する必要はなかったのではないでしょうか。無機質な印象の多くの武装を装備したものの方が、軍により製作されたロボットであるという設定は、自然に受け止められたと思います。
そもそもロボットのプログラムを開発した博士は、メイドとして開発着手しているようで、戦争目的に転用されたと考えることはできます。メイドであれば、柔らかいイメージをもつ女性を意識した外見であることは頷けます。
ただ、物語そのものの必然性を考えると、Mー66の外見は浮いているように思えるのです。
観る側を意識したキャラクターデザインだったようにも感じられます。おそらく、内容的にも観る人を男性と考え、男性ウケしそうなキャラクターデザインをされたようにも考えられます。
ただ、これによって副産物と呼べるものがあったようにも思えます。
それは、Mー66の動きです。人間の関節の可動域を明らかに越えた動きをしていますので、映像でみると不自然に感じます。その不自然さが、アニメーションそのものの面白みになっているのではないでしょうか。これが無機質なロボットであれば、関節が逆に動いても、驚きは少ないです。
人間を意識した外見だからこそ、関節が不自然に可動することで、動きそのものに面白みが加わります。
これを狙ってキャラクターデザインを意図的にされていたのなら、キャラクターデザインを担当した方のセンスに驚かされます。
次々と死んでいく兵士たち
追いつめられながらも、命からがら生き残る主人公たちに目線がいきがちです。
しかし、対照的に次々に殺されていく兵士たちの存在も印象に残りました。ただ、アニメ本編で死んでしまったのは、軍隊に所属する兵士たちのみで、一般人が死んだ描写はありませんでした。死んでても不思議ではないほど市街地も破壊されていますので、描写がなかっただけなのかもしれません。
ただ、アニメ本編の最後で、ニュース放送を描く場面があり、死者に対して報道はされていなかった様子でした。そのことから、一般人に対しての被害は小さいもので済んだと考えてよいのではないでしょうか。
そして、次々と死んでいく兵士たちですが、死んでしまった兵士たちにも大きな意味があったのだと考えられます。
兵士たちが死んでいくことで、アニメ本編における緊張感が高くなっていくのです。主人公たちが命を狙われていることをリアルに知らしめる描写なのだと思います。Mー66は人を殺すことに躊躇いはなく、無機質にプログラムを遂行していることを示す描写です。
すなわち、主人公たちに油断や隙があれば、瞬く間に殺されてしまうことを意味するのです。
観る側の危機感や緊張感を煽るために、多くの兵士が殺されてしまう場面が描かれているのだと思います。あまりにも簡単に殺されてしまう兵士たちに、Mー66という存在に対しての恐怖感を植え付けるものだと思います。
ただでさえ、外見は人間女性をモチーフにしていますので、恐怖感が表現しづらい部分は大きかったように思うのです。そこを補うための犠牲だったように感じられます。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)