日本最古の大人向けアニメ - 千夜一夜物語の感想

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千夜一夜物語

4.004.00
映像
5.00
ストーリー
3.00
キャラクター
3.00
声優
5.00
音楽
5.00
感想数
1
観た人
1

日本最古の大人向けアニメ

4.04.0
映像
5.0
ストーリー
3.0
キャラクター
3.0
声優
5.0
音楽
5.0

目次

アニメなのでソフトな表現

何気なしに観始めましたが、振り返って考えてみると過激な題材なのではないでしょうか。時代背景においても奴隷や身売りの表現があり、大人向けの内容であったことは明らかのように思います。ただし、表現や描写は、現実をリアルに描いたものではなく、グロテスクな部分は抑えられたものではなかったでしょうか。

性的な表現、描写もありましたが、抽象的に描かれている部分は、グロテスクにならないように抑えた制作側の意図を明確に感じられるところではないでしょうか。しかし、アニメという媒体で、性的な表現・描写を用いたことは、当時のアニメイメージから考えると斬新な作品だったと推測できます。

普通に見終え、振り返りを何もしないとそのまま終わってしまう作品です。制作スタッフの意図するところは何だったのか、どんなメッセージ性を込めたのだろう、と考えると深みが増すアニメ作品だと思います。

逆に、振り返ろうとする意志がないと、そのまま終わってしまうことから、インパクトや魅力には欠ける作品であることも同時にいえるように感じます。もっと、観る側をアニメ作品の中に引き込めるものがあれば、アニメ作品の評価自体も大きく変わったように思います。とはいえ、日本で初めて大人向けに制作された劇場アニメである点は、それだけで新しい分野に挑戦した意欲作であることも事実なのだと受け止められます。

また随所に、実写が用いられた場面があり、アニメと実写を組み合わせた映像は、今のアニメ作品からは消えてしまったことが残念な取り組みだと思います。技術的には、映像制作という部分で、今のアニメ作品の方が容易に実現できることではないでしょうか。コンピューター処理で、画像データを切り貼りできるはずです。復活させてほしい取り組みだと思いますし、その先に新しい表現や演出方法が見えてきそうな気がします。

 

主人公の目的意識

主人公、アルディンの目的意識が物語中盤まで明確ではなかったため、どこに向かっていくのか、分からない物語展開でした。また、そのことがアニメ作品自体のメッセージ性を分かりづらくしていたように感じます。また、作品に引き込んでいく魅力を中途半端にさせていたのではないでしょうか。

結婚したばかりで、奥さんと離れ離れになってしまったことは、アルディンの人生で大きな分岐点になりました。そこまでは、アルディンの目的は明確だったように思います。しかし、奥さんのミリアムが亡くなってしまったことで、そこから、アルディンの行動が成り行き任せになっているように感じます。盗賊マーディアとの出会い、女人だらけの島へ流れ着き、そして、魔法の難破船に出会います。魔法の難破船に出会ってから、ようやく、国を所有したいという目的意識が出てきたように思います。

そして、王様という立場がアルディンの目的意識を変えていきました。

最終的には、世の中の色んなものが見たい、触れたい、挑戦したい、という前向きなものが、権力の誇示という欲に塗れたものに変わっていきます。ここでは立場が、人の性格や人物像を変えてしまうことの表していたのではないでしょうか。物語冒頭のアルディンであれば、実娘であるジャリスを大切にしたはずです。アルディンにとって、ジャリスは宝物のような存在であったでしょう。しかし、愛していたミリアムの面影を残し、同じように美しいジャリスという存在を別の見方をしてしまいます。

 

アルディンの人生は、巨万の富、絶大な権力を手にすることができました。しかし、自身にとって本当に大切なものは手にすることができませんでした。可哀そうでもありにも、羨ましくも映るアルディンの人生に、観る側の印象を反映するものがないでしょうか。自分自身の心を映す鏡のような気がしてしまいます。

 

バドリーの存在意義

運が味方をして、凄く出世する主人公のアルディンですが、その人生に大きな影響を与えたのが、バドリーという登場人物の存在です。主人公のアルディンからしてみれば、バドリーは元凶の存在である、といえるでしょう。

アルディンは、元凶であるバドリーを二回ほど亡き者にするチャンスがあります。しかし、いずれも見送り、結果的には自分自身が不利な状況に追い込まれてしまいます。ただ、アルディンの人生において、バドリーが生き残らせた事実は、アルディンの人物像の良い部分を照らしている存在だといえます。

一般的に考えれば、バドリーを生かしていく選択肢はないのではないでしょうか。きっと、私自身がアルディンなのであれば、きっとバドリーを殺していると思います。しかし、アルディンはバドリーのことを殺さずに生かしています。バドリーが生きているという事実自体が、アルディンの人間性を物語っており、アルディンの存在を引き立てているように思います。バドリーを生かしておくことが間抜けだという考え方もあるのかもしれませんが、無駄に命を奪うことを善しとしない、アルディンの人間性を象徴しているのだと考えます。

 

最後に、アルディンは全ての富や権力を失いましたが、命を落とすことなく、生き長らえることができました。そして、気持ち新たにして旅立ったアルディンに、明るい未来を期待したいです。

 

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