いつ読んでも泣ける『花宵道中』 - 花宵道中の感想

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花宵道中

4.004.00
画力
3.17
ストーリー
4.00
キャラクター
4.00
設定
3.83
演出
3.83
感想数
3
読んだ人
8

いつ読んでも泣ける『花宵道中』

3.53.5
画力
3.0
ストーリー
3.5
キャラクター
4.0
設定
3.5
演出
4.0

目次

5巻で終わりだと思っていた

とある晴れた日、時代劇っぽいのが読みたいな、と本屋をぶらぶら探していた時。ドラマ化や映画化されているのにちゃんと読んだことがなかった、よしながふみ先生の『大奥』にしようかなぁ…と悩んでいるとき、その表紙が私の目に飛び込んできました。うつろな瞳、なまめかしい唇、暗い中に浮かび上がった美しい遊女の姿。それが『花宵道中』でした。

即購入、即帰宅、即読して、ぶわっ。涙が止まらなかったです。1巻を読み終えてすぐ本屋に戻り、5巻まで買いそろえました。全巻揃っていてよかった、大人買いできる小遣いがあってよかった、と思いました。ちょうど海外に転勤する予定の友人に貸したら、彼女もこの作品をいたくお気に召したようだったので、餞別代りにあげてしまった。そうしたらこの前、本屋で6巻見つけてびっくり! 「ええ~!? 5巻の帯に「完結」って書いてあったじゃん」って、つい声が出ちゃいましたよ、小声でしたけど。6巻が出るなら人にあげなきゃよかった…でも、どうしても読みたかったので結局購入しました。この内容だったら、6巻じゃなくて「外伝」とか「番外編」とかにしてほしかった。途中巻だけ本棚にあるのって、本がかわいそうに感じるから、嫌なんですよね。まぁ、友人が帰国したときにあげるからいいんですけど、この本に関してはね。

一番好きなのは、やっぱり…

この作品は全部で6つの話から成り立っています。作品タイトルにもなっている【花宵道中】、八津の妹女郎の茜が主人公の【薄羽蜉蝣】、【花宵道中】を半次郎と霧里の目線から描かれた【青花牡丹】、八津と三弥吉の恋物語【十六夜時雨】、山田屋秘蔵っ子の緑の成長物語【雪紐観音】、そして曰く付き(笑)6巻【大門切手】。この中で一番好きな話は、やっぱり最初に泣かされた【花宵道中】ですね。ダントツで。

生まれも育ちも吉原。長屋で死んだ母親の借金を抱え、恋もせずに働き続ける朝霧が初めて恋に落ち、その苦しみを「息ができない、どぶに沈んでいくようだ」と表現するところとか、すごく詩的ですよね。惚れっぽいせいで長屋女郎にまで落ちてしまった母親のようになりたくない、と頑なに生きてきたのに、恋に落ちてしまった愚かな自分。死後おはぐろどぶに捨てられた母親と結局同じになってしまった、どうしようもない悲しさと虚しさ。女郎はみんな、それぞれにつらい思いをしながら商売をしているんだろうけれど、なんとも言い難くかわいそうに感じてしまいます。だからこそ、半次郎と再会したとき、なんですぐに逃げないの? って思ってしまいますが、それだとまぁ、話は成立しないわけで。

半次郎が作った打掛とかんざしと下駄を着て、ただ一人の客のためのひとり花魁道中。道中を終えた朝霧に「一緒に江戸を出よう。お前はもう、身体に咲く花を誰にも見せなくていい」と言ってもらった朝霧の喜びで、まず胸にグッと熱いものがこみ上げます。その後、半次郎は御用となり処刑されますが、事情を知らない八津が半次郎の髪の毛を朝霧に持ってくるところとか、残酷すぎてつらい、つらすぎる。遺髪を触るまで、気がふれたみたいににやついた朝霧の表情、その後半次郎の名前を呼び続けながら号泣するシーンでぶわっですよ。今思い出しても目頭が熱くなります。読みなおしたら絶対、再度ぶわっだろうなってわかるくらいに、胸が締め付けられます。そして、最後にどかんとやられますね。朝霧が半次郎を追っておはぐろどぶに身投げしてしまう。男に何度も捨てられて、おはぐろどぶに捨てられたお母さんと同じように。八津と弥七の号泣に、せっかく泣き止んだ私も再度ぶわっ。涙腺緩んでいるからすぐ出ちゃいますよ、大量の涙。あの世で半次郎と幸せになっているといいな。「私、あんたと一緒に幸せになりたかった!」って言っていたから。

 

朝霧が好きなんだな

レビュー書いていて気が付きましたが、私は朝霧のキャラクターが好きなんですね。【十六夜時雨】の中に出てくる「五文あげるから長屋女郎のところへ行っておいで」と、大島屋を追い出す朝霧、かっこよかったもの。14歳なのに禿にされちゃったり、半次郎にも「家はどこだい?」と子ども扱いされたり、小さくて地味で、決して美人ではないのに芯がしっかりしてる朝霧。悲恋だったけれど、一瞬でも美しく咲くことができて、うれしかったんじゃないかな、と思います。

作画が雑になっていく

この作品の残念なところは、2巻以降の作画が雑になっていくところ。線が堅いんですよね、違う人が描いているみたいに。山田屋の売れっ子の桂山や緑はもちろん、霧山なんて絶世の美女のはずなのに、美女に見えなくなっちゃった。地味で化粧してなきゃしぼんだ朝顔みたいと言われる1巻の朝霧の方が、観音様の様だといわれている3巻の霧島のよりも美人に見える。忙しかったのかなぁ、斉木先生。

 

遊女は大抵、年季が明ける前に死んじゃうんだと思っていましたが、この作品では結構年季明けて大門を出ていく人が多いんですよね。そこが救いかな。勝野が勝っちゃんに戻って弥吉と一緒に大門の外に出たから、6巻で仕舞にしてね(笑)。

 

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複雑に絡み合う吉原の女の道がおもしろい

短編集かと思いきやすべてがつながったストーリー吉原の遊女である八津を中心として、過去、現在、そしてその後と描かれていくストーリー。自由奔放だった八津が、いろいろな人の人生にふれてどんどんたくましくなり、姐さんになっていく。その姿がかっこよくもあり、悲しくもありました。いったい何人の女が苦しい思いをして、使われるだけ使われて捨てられていったんだろうね。そんな時代が確かにあったということ、実際に歴史として起こったとされている出来事にもなぞらえながら、その時生きていた遊郭の女たちの人生を描き出してくれています。まず読んで気づくと思うのですが、みんな同じ顔じゃないか…?誰が誰だか、そのとき横に名前が出てなければわかりにくい…茜や朝霧はわりとわかりやすかったと思うのですが、水蓮と八津は強気なところも似ていたりしてほとんど違いがわからない…表紙や扉絵の美しさは目立つのですが、本編では男たちをもとに...この感想を読む

4.54.5
  • betrayerbetrayer
  • 239view
  • 3052文字
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恥ずかしい仕事だけどプライドと愛がある

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4.04.0
  • kiokutokiokuto
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