生きていくこととは。命の大切さを切実に訴える - 僕のいた時間の感想

理解が深まるドラマレビューサイト

ドラマレビュー数 1,147件

僕のいた時間

4.204.20
映像
4.00
脚本
4.30
キャスト
4.40
音楽
4.10
演出
4.20
感想数
5
観た人
9

生きていくこととは。命の大切さを切実に訴える

4.04.0
映像
4.0
脚本
4.0
キャスト
3.5
音楽
3.5
演出
4.5

目次

生きていくその時間が、「命」となる

「僕のいた時間」。まさに生きていくこととはこのことなのだなと感じた。楽しいこともあるけど、つらいこともあるし挫折も経験する。だけどその中で人は親、兄弟に始まり、たくさんの人と出会い、その時間をつむいでいく。生きていることにたとえ絶望しても、人とのつながりは絶対で、そこに自分が存在した意義を感じることができる。普段の生活で、このようなことはなかなか考えられるものではないだろう。毎日を何気なく生きていて、ただ目の前にあるものを必死になって取り組んでいる。そうしてそれぞれがそれぞれに貴重な時間を過ごしている。もし、そこで病気になったらどうだろうか。生きていくこと自体に困難が生じたら?生きていることを、真剣に考えるようになることと思う。このドラマは、日々を生きる主人公がALSを宣告され、生きていくというのは何か、何をすべきかと、命と向き合う大切さを教えてくれる。自分の人生の困難に立ち向かいながらも、大切な恋人を思いやる様子は、その葛藤が伝わってきて、なんとも切なく、命がテーマであることをリアルに感じることのできたドラマだった。

現実にも起こりうることを若い世代へ

主人公・拓人は決して順風満帆に生きてきたわけではない。より良い友人に恵まれながらも、多くの挫折を経験していた。医者の長男として生まれ、医者になることを期待されながら挫折、代わりに医学部へと入学した弟に、親の愛情を奪われていく。苦労して就職した会社で働き、起動に乗り始めた頃、体に異変が起こり始める。就職活動中に出会った恋人・恵とは良い関係を築けていた。このように、ドラマの設定が若い世代に向けられている。親子の関係、兄弟の関係、そして現実社会においても厳しい就職状況。まさに現在進行形の人や、それを経験した人には広く共感できる背景だ。命という難しいテーマを、より親しみやすく、そして多くの人に理解してもらいたいという意図が、よく分かる。だが、拓人の病気が判明したことで雰囲気が一変する。特に、雨の中、自転車に乗れなくなった拓人の気持ちのやり場に自転車を蹴る様子は、象徴的だ。もし、こんな病気にならなければ。なぜ自分は普通じゃないのだ。そんなことを語られているように感じる。健常者としての生活と、それが失われたときの生活と感情を、言葉ではなく役者の表情や目で訴えていた演技や演出はさすがであり、テーマの重さを思い知ることとなる。だが、このドラマの救いはお互いがお互いへの思いやりである。拓人は、広く相手を理解できる人物だ。恵を傷つけまいと離れてみたり、自分を見下す弟の本当の弱さを救ってあげたりと、その過程で、恵と心が通じ合い、バラバラだった家族が一つになれた。病気をきっかけに、自分にとって大切な人を見定め、人のためを思って命を使う。そんな拓人の姿に、何度も感動させられた。

ALSとは。それでも生きていく

ALSは、体を動かす神経系に異常が見られる病気で、命令が伝わらなくなるため筋肉が緩み、力を出せなくなる。手足の動かしにくさから始まり、食べ物の飲み込みにくさやしゃべりにくさを感じ始め、最終的には呼吸困難となるため、人工呼吸器をつけるかどうかという問題が生じてくる。しかも、有効な治療法はいまだに見つかっていない。体は動かせなくても、知能や感覚にほとんど影響がないため、自分の体を自由にできないという精神的苦痛は強く感じる。そして、最終的に人工呼吸器をつけるというが、喉を切開してつけるため、声を一生だすことができなくなり、介護も一生必要不可欠となる。ALSの患者にとって厳しい選択を迫られることになる。ドラマの中でも、この究極な選択のシーンを、省略することなしに描いている。「それでも生きているっていえるのですか」。ALSを宣告され叫んだ拓人が、それでも生きていくと決断をしたのは、どんな人にも生きた時間があり、それを大切に生を続けることが大事であることを、すべての人に教えてくれていると感じるのだ。

参照:日本ALS協会

今を大切に、生きていくということ

命と向き合うことを伝えるこのドラマは、重いテーマであることを考えれば気軽に見れるものではない。だが、ドラマの中に、拓人と恵の友人という明るいキャラクターがいて、その場の空気を和ませてくれる。とてもバランスのとれたドラマだ。この明るいキャラクターに救われて、多くの人がドラマを見て、ALSという難病を知り、命の大切さを理解するのである。そして、その周囲にいる人間が、どのような手助けができるのか。どう理解を広めていくのかも、ドラマを通して初めて感じることができた。自分の生き方をかみ締めると同時に、困っている人に手を差し伸べ、どんな人でも生活しやすい環境をみんなで作っていく。まずは理解を深めるところからで良い。命について、病気についてを追求し、ただ生きていくことの素晴らしさや美しさを表現した、中身の濃い演出であった。

あなたも感想を書いてみませんか?
レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。
会員登録して感想を書く(無料)

他のレビュアーの感想・評価

三浦春馬主演ドラマ『僕のいた時間』を見終わって

三浦春馬さんが話を持ち掛けて完成したドラマ『僕のいた時間』は三浦さんがドラマ『ラスト・シンデレラ』を撮影中に、命を題材にしたものをやりたいと提案して製作されたドラマだそうです。難病のALSを発症した澤田拓人(三浦春馬さん)が病気を受け入れながらも苦しみ、戦いながら恋人・本郷恵(多部未華子さん)の助けを借りながら前に進んで行く物語です。そしてドラマを見るものが生きるという事はどういう事なのかを考えさせられる物語です。病気と闘う役柄は天下一品の三浦春馬さんALSは筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)という難病で日本には約8,300人の患者がいるそうです。徐々に筋肉が動かなくなる病気なので最終的には呼吸するのも困難になって死に至るとか・・・。想像するだけで恐ろしい病気ですが三浦さんがドキュメンタリー番組を見てALS患者の役を希望したと話されています。三浦さんは命をテーマにした作品に...この感想を読む

4.54.5
  • オカメインコオカメインコ
  • 301view
  • 3159文字
PICKUP

切なくなる

今の日本をリアルに描いているちょうどこのドラマをやっていた時期って就職が難しくなっているっていう現状があったからそれをドラマでも反映させていて何十、何百も会社の面接を受けていても受からないっていう現実から逃げるために自殺を選んでしまったっていう悲しい人が一話目から出ちゃうんですもん・・・。世知辛い世の中を風刺しているっていうかなんていうか・・・そんなのを見ちゃうと現実はそんなに甘いものじゃないんだっていうことがよくわかりますよね。最近のドラマには珍しくそういうのをリアルに描いているなっていうのが印象深かった作品ですね。まるでドキュメンタリーを見ているかのよう今までのドラマでこんなに切なくなるっていうか私自体が今までこういう病気と闘う人の話を見るのが24時間テレビのチャリティードラマとか映画とかそれこそドキュメンタリーくらいでしか見たことなかったので、ドラマで見るっていうのはなかなか新鮮で...この感想を読む

5.05.0
  • ぽんぽん
  • 120view
  • 3039文字

病名が。

筋肉が落ちていき、ついには動けなくなるという病気。ここのところ、ドラマやドキュメンタリー、映画などで広く取り上げられています。この病気はいつ誰が起こるかわからない…明日は我が身…まさか自分が…そんな怖さと、病気にかかった人やまわりの人の苦しみや葛藤が描かれています。私もこのドラマや以前に読んだ本により病気を知っていて、それから友人の父親もこの病気になってしまったことを知りました。友人もこのドラマを見ていると話していたのでどんな気持ちで見ているのであろうと思うと心が痛かったですが、決してマイナスのことばかりが描かれているわけでなく、苦しみや葛藤の中、自分の生きがいを持って前向きに生きていくこのストーリー。同じような病気で悩んでいる人に向けたメッセージでもあるのではないでしょうか。病気や障がいを持っている人、お年寄り…こういった福祉について若者がもっと考えなければいけない時代だと思います。...この感想を読む

4.04.0
  • このこのこっちこのこのこっち
  • 120view
  • 501文字

感想をもっと見る(5件)

関連するタグ

僕のいた時間を観た人はこんなドラマも観ています

僕のいた時間が好きな人におすすめのドラマ

ページの先頭へ