自分が一番の冷酷少女と全く空気の読めない少年 - となりの怪物くんの感想

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となりの怪物くん

4.584.58
画力
4.25
ストーリー
4.38
キャラクター
4.88
設定
4.25
演出
4.13
感想数
4
読んだ人
14

自分が一番の冷酷少女と全く空気の読めない少年

4.84.8
画力
4.5
ストーリー
4.5
キャラクター
5.0
設定
4.5
演出
4.0

目次

出会いは物に釣られた雫と捨て猫みたいに警戒心のある春

入学式に暴力沙汰を起こし、不登校になった隣の席の男の子が気になる。

読み始めは、彼は悪くないの!私、真実を知っているわ!と、不登校の男の子を庇うヒロイン、という少女漫画によくある展開と思っていました。

しかし、雫はそんなことはどうでもいい、とばっさり。

想像をはるかに超えたあっさり少女でした。

しかし、そんな少女と今後キーパーソンになるであろうヤンキー少年、一見交わることのないような2人がどう出会うのか、早くも序盤でこの作品に引き込まれてしまいました。

結局、担任から新しい参考書を買ってもらうという賄賂を受け取り、訪問した家にいた彼は警戒心丸出しのくせに、学校からの回し者でない、所謂敵じゃないとしれば途端に懐く、まさに猫のような性格。

漫画好きな私は大抵、ヒーローにキュンとくるのですが、この時の正直な感想はめんどくさっというものでした。

主人公でもある2人をこんな思い切った性格に設定するのは勇気がいることだろうと思います。

みんな人間くさい

春と雫は早くから両思いなんですが、なかなかくっつくことはありません。

しかし、それは少女漫画によくある想いを伝えられないとか、嫌われてるかもというような甘酸っぱいものでもありません。

雫は春の気に入らないことがあったり、年収一千万達成のために、切り捨てるのです。

それをばっさりと春本人に言うものですから、雫はさぞスッキリするでしょう。

私もこんな性格になってみたいものです。

2人の友達、可愛いけどアホの子の夏目も、2人のことが好きだけど、両思いって知ってるけど、付き合いだしたら、遊べないもん。

と実に自分の気持ちに素直です。

この漫画に出てくるキャラクターたちは、恋より大事なものがあると全力投球したり、取り繕わず、大いにケンカします。

諦めたり、身を引いたりとかない、高校生たちの等身大をよく描けています。

大人になると、周りの目を気にして、言いたいことも言えなくなるものです。

そして、薄っぺらい人間関係が出来ていき、裏切ったり裏切られたりしながら、いやでも大人になってしまいます。

本音を言えることが本当の関係を築くことが出来るのだと認識させられるとても人間くさい作品です。

思った以上に深いストーリー設定と、愛されるキャラクターたち

2人が付き合い始めても、お互いの欲をぶつけて行く為、イチャイチャ、ラブラブというシーンが本当に少ないです。

しかし、それを物足りないと言うよりは、ホッコリとできるものにうまく描写されています。

このようなアッサリとした恋愛コミックだと、男の人にも抵抗がないように思います。

実際、ほとんど少女漫画を読まない旦那が勧めもしないのに読み始め、続きの巻の発売日が待ちきれないほど、どハマりしていました。

このように、この作品は男性からも支持を受けやすい設定になっています。

さらに、2人がケンカしながらも、お互いのことを考えることを意識し始め、変わっていくという単純に見えて実はとても奥深いストーリー設定。

春が友達に執着する理由、雫が学業に全てを投じる理由。

これらひとつひとつにも、明確なもの設定されてあります。

何となく〜そういう性格設定で〜というぼやーっと曖昧なものがないので、読み手としてもわかりやすくとても好感がもてます。

そして、サブキャラたちの濃いこと。

私はキャラクターの中でヤマケンが1番好きなのですが、ヤマケンは雫に恋する春の恋敵。

しかし、完璧を持する自分自身がモサイ女雫に恋をしているなど、認めたくない、プライドが許さないと必死な心の葛藤が、クスリと笑わせてくれます。

この恋は報われないと分かっていても、頑張れ、ヤマケン!と思わず応援してしまうほど、ヤマケンに入れこんでしまいました。

そのほかにも、応援したくなるキャラクターばかりです。

そのため、番外編としてサブキャラたちの恋の話や過去の話も読み応えがあり、人気が高いのも頷けます。

みんな愛されているキャラクターなんですね。

一番、少女漫画に近いキャラクターと言えば、大島さんでしょう。

おしとやかで、美人で、一途な恋にひたむきな彼女。

しかし、この漫画では地味キャラとして位置付けられています。

いかに他のキャラクターたちが濃いかが窺えますね。

キャラクターたちの人気が高いからか、最終巻ではそれぞれのその後が描かれているものが、まるっと一巻収録されています。

だいたい、両思いになってハッピーエンドというものが多い中、2人がどういう職につき、結婚の話をしたり、ケンカしたりとまた新たに続編を書いていただきたいと思うほど、ファンにはこの最終巻の存在は嬉しかったのではないでしょうか?

30代間近になり、ドロドロしてたり、甘々の恋愛漫画に少し胸焼けがしていたのですが、この作品は本当にアッサリと読めます。

しかし、ストーリー展開もリズムがあり、読み手を飽きさせない話運びに久々にいい漫画に出会えたと満足感を得られた作品に出会いました。

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  • 798文字

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