人との関わりができていなかった二人が恋を通して成長する
シズクの気持ち
シズクは勉強にしか興味のない女の子。将来母親と同じ弁護士になるために勉強をひたすらがんばり、安定した人生を送ることだけしか見えていない。そんな女の子が、恋をされ恋をし、どう変わっていくのかっていうのがこのストーリーの肝です。シズクは全然悪い奴ではなくて、ただ、お母さんみたいになりたかったんだよねって思います。家族の事を大切に想っているし、人をないがしろにしているわけじゃない。友達というものが、自分の人生プランには必要のないものだと思っていたからなんですよね。そこにハルという最強の邪魔が入りました。出会いがすごいですよね。不登校だった彼にプリントを届けたときに、彼の友達が本当の友達じゃないってちゃんとわかったのは、全然人の気持ちを考えられない人間じゃないってことの証明でした。そこでなぜかハルのために行動できちゃったあたり…不思議だけど、人としてどうかっていう常識みたいなものは、勉強してるからわかるんでしょうね。正しいと思われる方向は選べる。だけど、自分の事となるとどうしていいのかわからない…そんな複雑な乙女心をお持ちのシズクさんです。なんでもそうだけど、人の事に関してはいろいろ見えているのに、自分の事になると全然見えなくなるってあるよね。そしてそれが恋になったとき、絶対自分の気持ちだけでも足らなくて、相手ありきの恋愛だから、なおさらどう行動するのが正しいのか、何が自分にとって必要なのか、相手にとっていいことなのかはわからない。それでも向き合うのには、勉強より絶対エネルギー使います。覚えて答えをかけばいいだけのテストじゃない。答えがいくつもあって、どれも正解じゃない。その中で人間生きていくから…弁護士だって人とかかわる仕事なので、それがわからないと、法律だけで片付けられるような世界じゃないんだからね。ハルと出会えて、本当に良かったなーと思います。人間味のない教師とか弁護士って、絶対流行らないからね。
ハルの気持ち
ハルのキャラ、最強でしたね。まさかの冒頭の出会いで好きかもしれないとほざき、そのあとそうでないと言い、完全にシズクとすれ違っていくお話の数々…なのに独占欲は一人前。それが女の子として好きになるっていうことなんだけどなー…それに気づくまでは本当にやきもきするけれど、知らないものを知っていく・知って理解していくまでが本当に丁寧に描かれていると思います。自分が持っていなかったものを目の当たりにしたとき、動揺したり、うれしかったり、でもどうしたらいいんだろうっていう葛藤とか。そうやって覚えていくんだろうけど、最中は本当にきついものです。ササヤンやみっちゃんという友達がいなかったらいったいどうなっていたのかと…心配になります。だから、人間って1人で考えてるだけだと絶対先が見えなくなりますよね。友達って偉大です。作ろうと思って作るよりも、出会うべくして出会ってるような…そんな気がしてなりません。
ハルは完全天才設定で、勉強も最強、ルックスも最強。シズクの欲しいものをなんでも持っていた。でもハルからみればそれはいらないもので…価値観のずれもうまく描いていると思います。男女の関係は価値観のずれから来るものがほとんどですからね。最初からこれだけずれてたら、うまく嚙み合ったら最強ですよ。こんないいカップルなかなかいない!!シズクが恋してどんどんかわいくなっていくもんなー…女の子はみんなかわいいよね。女の子としての輝きはどんな子も持っている気がしてなりませんね。クラスの地味系女子ももはやどんな輝きがあるだろうかと観察せずにはいられません。
ヤマケンの気持ち
当て馬のヤマケンですが、彼の登場からのメインから昇格の流れはびっくりしました。だって最初に最低のいじめをハルにぶちかましてた腐れ野郎がですよ?まさかそこまで上がってくると思えなかったです。ササヤンかと思ったのに、まさかのヤマケン。そして彼の性格もよかったですね。一途にがーーーーっとくるのが当て馬って人だと思うんですが、プライドが邪魔していけない。だけど好きだーってなって盲目になってるのがとてもよかった。赤面するシズクをみて
クソ…可愛いな…
っておい。すごい。反則です。それはかっこよすぎる。やっぱ当て馬は失うものが何もないからガツガツ来ますよね。そこが話をおもしろくするわけですけど、だいぶ反則。しかし一番は違いましたね。シズクから完全に振られたあと、
オレ程の男はもう一生現れねーぞ
って言ってた時のヤマケンが一番かっこよかった。もうダメなんだってわかってあきらめなきゃいけないときに、最高の表情を見せてくれたね。人間何かしら悟ったときが一番いい表情するっていうけど、まさにそうでした。キャンプでの気遣いは精一杯の強がりだろう。誰よりもシズクの幸せを願うよって感じで良かったなーと思います。
ササヤン&夏目さんの素敵な話
ササヤンは、この話の中で唯一のまともな奴で、爽やかで、何もなければ一番モテそうな人物でした。やっぱり一人くらいはこういう落ち着いた人がいないとね。ハルやシズクに対してちゃんと一般目線の意見をくれる重要人物です。夏目さんのこと、どのタイミングで好きになったかはわからないけど、そういうタイミングってわからないものでしょう。だから、一番自然に恋したのはササヤンな気がしますね。相手のことを知って、好きになって。それもあまり周りからはわかりづらいところでね。リアル健全男子って感じ。
一方の夏目さんはいろいろなコンプレックス女子。超かわいいのに片言敬語っていうのはなんか新しいなーと思いましたね。そういう表現にすると、見た目がかわいいのにすごいイイ子なんだってことが読者に伝わりやすいと思いました。ただまあササヤン片手にありつつみっちゃん追いかけててね…美人がゆえのおいしい状況。大人の包容力に憧れるのが地味系女子ってやつですよ。自分に自信がないから、自分を引っ張っていってくれそうな人に恋しちゃうってやつ。そこをササヤンがね…絶妙なアタックでね…かっさらうのはずるかった。一番の策士はササヤンだね。夏目さんが転がしているように見えて、転がしていたのはササヤンです。
人が人間らしくなるっていうのはこういうこと
いろいろ闇を抱えたメンツが集まって、いったいどうなっていくのだろうかと思いましたが、最終的にはお互いがお互いを大切にして、尊敬して、自分が成長して。いいお話です。最終的には、全部が伝わり切らないとしても、自分の言葉で自分の思ってることを伝えられるようにしたいものです。人を避けて本の中で探しても、自分の欲しい答えってないことがほとんどだし、自分一人だけだと自分に都合のいいように解釈して、自分が楽に生きれる方向しか見つけられなくなるものです。だけど、人とがんばって関わってたら、世界が一気に広がって、自分を大切にするってどういうことか、人を大切にするってどういうことか、そういうのがやっとわかるようになるんですよね。すれ違って当たり前なのが人間関係。みんな一人一人唯一無二で、考えることがまったく同じ人間は絶対にいないんだから、少しずつ学んで人間らしくなっていこうって思わせてくれる話だと思います。人生の悩みってやつは、だいたい人間関係の悩みなんだし、悩むだけ悩んで、悩みまくって、それで自分がどこに進むか、ハルとシズクみたいに決めていきたいです。
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