次世代に繋がるための結末ー東京ラブストーリー
”ハッピーエンドで終わらないドラマ”を見た時のショック。
私はこのドラマを見るまで、全てハッピーエンドのドラマしか見たことがありませんでした。ドラマなのだから、ハッピーエンドで出演者の幸せそうな顔で終わるものが一般的というより、当たり前というくらいでした。しかし、この話はそうではなかったのです。ハッピーエンドでは終わらないドラマだったのです。見ていた方はきっと驚いただろう。少なくとも私のまわりの人はあの最終回を見た次の日、学校でカンチとリカの結末に反対だという話で持ちきりでした。休み時間になると、どうしてカンチとリカは結ばれなかったのか、本当にあれで最終回?という友人までいました。あの時代のドラマの終わり方は、ハッピーエンドが当たり前でした。なぜ、このドラマはそうではなかったのだろうか。私はこのように思います。ハッピーエンドにあえてしない事で、リカの性格、性質を守り続けたのではないか、、。リカは幼い頃から、転校ばかりで、ふるさと言える場所もなかったのです。ハッピーエンドにしてしまうとあの少し不思議なリカのイメージが無くなり、カンチと結ばれることによって、リカのふるさとはカンチのふるさとになってしまうのです。普通の女の子になってしまうのです。不思議なイメージを持っていたリカがなくなり普通の幸せな女の子になるとこの話自体になんだか変化が起きてしまうような気がします。変化させずに赤名リカを永遠の存在にさせるという狙いがあったのかもしれません。
赤名リカであるための条件とそれによって映し出される風景。
赤名リカを初めて見た時、何とも言えない不思議な印象を受けました。ふわふわしたような歩き方、寂しさを隠すための態度、弱い女性なのか強い女性なのか、、演じた鈴木保奈美は素晴らしい演技をやり遂げだと思います。どこか遠くを見る目がいつも寂しげでした。私はその目が大好きでした。当時小学生ながら不思議と鳥肌が立ちました。あの赤名リカの歩き方を見ていると、どこかへ飛んでいってしまうのではないかと私を常に不安な気持ちにさせました。
電車の中で涙するシーン、小さな子供がリカの事を心配して近寄ってきます。あのシーンは、リカの寂しいイメージと共に、電車の窓からリカを照らす太陽の光が、更にリカを綺麗にみせていることは間違いないと思います。このシーンはどうしようもなく悲しいリカの心情を窓から差し込む光がリカの背中を押してくれているようにも感じ取れます。ふるさとのないリカへの自然界からの贈り物のような印象を受けました。
カンチのふるさとを訪れ、カンチの過ごしていたふるさとの風を感じ、リカの知らないカンチを全て知ることが出来たような気持ちになったであろう。リカはカンチの通っていた小学校の柱に彫られた相合傘へ、自分の名前を彫り残します。カンチへの想いをそこでハッキリと表現するのです。幼い頃から転校を繰り返してきたリカの悲しい本気の気持ちだろう。
今も残るポスト、相合傘、リカの存在。
リカがカンチのふるさとを訪れた際にポストに手紙を入れます。その昔ながらの型のまま、実際に残っているのです。ファンなら一度は見に行きたいものです。ポストの裏は空き地になっていますが、ポスト自体は赤名リカがいた時のまま、静かにたっています。学校に残した相合傘も、残っています。よく見ると赤名リカとカンチという文字が認識できます。
ドラマが最終回を迎えた今でも、赤名リカが存在していたという証が残っているこの街、、今も赤名リカがどこかで歩いているような気持ちにさせてくれます。ふわふわと弾みながら歩くリカの後ろ姿が心の中に蘇ってくるようです。カンチを呼ぶリカの元気だけど寂しげな声が聞こえてくるような気持ちにさせてくれます。それは、ドラマではなく、現実の日々の中に赤名リカが存在するのではないかと思わせてくれる不思議なパワーを持つドラマであると感じづにはいられません。ハッピーエンドで最終回を迎える話を否定するわけではありません。ただ、この時代にハッピーエンドで終わらないドラを流した事はかなり印象深く、多くの人の頭に残るのではないかなと思います。
頭に残るというと、、このドラマに流れる歌です。誰しも頭に残っているのではないかなと思います。切ないメロディーと切ない小田和正さんの声がとても聞きやすく、赤名リカとカンチの恋愛を更に盛り上げてくれます。
赤名リカという役柄によって、ドラマの世界から現実の世界へと繋がれて、次の世代の方へと受け継がれていきます。見た人の頭に残るドラマとするには、不幸せのままの赤名リカが今も私達のそばにいるように印象づけをすることで、この”東京ラブストーリー”は永遠に受け継がれていくでしょう。見終えた人の心には、悲しい赤名リカだけでなく、前向きで生きていこうとする姿に勇気づけられることでしょう。ハッピーエンドで終わらないドラマ、東京ラブストーリーにはこのように赤名リカを通して、永遠に忘れられないドラマとして今もなお存在しています。
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