全てが収束する『コードギアス』最終章
人気シリーズの完結編
ピカレスクロマンとロボットアクションを混ぜ、人気を博した『コードギアス 反逆のルルーシュ』。その後編であり完結編が『コードギアス 反逆のルルーシュ R2(以下、R2)』である。
『コードギアス 反逆のルルーシュ』から引き継いで、記憶を無くしたルルーシュの学園パートから『R2』の物語がスタートする。
再びブリタニアへ反旗を翻すなかで、異母兄シュナイゼル、ナイトオブラウンズになったスザク、最愛の妹ナナリー、そして黒の騎士団など、ルルーシュは様々な敵と戦うことになる。ルルーシュは、生死をかけたバトルの意味でも、イデオロギーの意味でも、立ち向かってきた全てと決着をつけなければならないのだ。
最終的には、ルルーシュの味方はほとんどいなくなり、母親とすら決別するようになる。途中で懐刀のジェレミアと、最大の障害であったスザクを味方につけるものの、ルルーシュはナナリーを救うという当初の目的から迷走し、理想と信念のうえでも孤独になってしまう。そんななか、最後までルルーシュの理想に付き合ったのは魔女であるC.C.のみだった。
第一部では目的も真意も測れなかったC.C.が、ここに来て役割を果たした。これが伏線だとすれば、制作陣はよく練ったうえで彼女を配置したといえるだろう。
C.C.だけではない。スザクも、ジェレミアも、ナナリーも、戦争に関係のないシャーリーまで、一連の革命に運命を翻弄された彼らが、それぞれの信念をもとに役割を果たし、それぞれの顛末に向かっていく。
『コードギアス』という作品はピカレスクロマンであると共に、人間ドラマであると筆者は常々主張しているのは、こういったところに帰結する。
全ての伏線が収束する『コードギアス』の結末
『R2』においてもっとも語らなければならないのが、主人公であるルルーシュの末路である。
一連の革命においてルルーシュは多くの軍人を殺し、更には無実の人間もたくさん殺してきた。ルルーシュ自身が直接手を下したこともあれば、ルルーシュの戦略・命令で死んでいった命もある。クロヴィスやユフィなど、自らの肉親すら、ルルーシュは直接殺してきた。
灰が積もるようにわずかずつ周囲に不信感を抱かれたルルーシュは、やがて家族も、友人も、黒の騎士団のメンバーも全てを失う。それでも自らの理想のために血を流し続け、果てには冷血のブリタニア皇帝となって後世にも残る悪名を残し、ゼロによって処刑されるーーように、自ら仕組んだ。
罪過は、ルルーシュが一歩道を進むごとに増えていく。それでもルルーシュは決して止まらない。もう後戻りできないことを、彼はよく理解し、また後戻りする気もないのだろう。それこそがルルーシュという主人公のもっとも魅力的なところだ。
そして、ルルーシュの罪は人に見過ごされることなく、許されることもなく、彼は自分自身で罪の全てを贖う結果となる。「撃っていいのは、撃たれる覚悟があるやつだけだ」、そのセリフを、自らの命をもって体現することになったのである。
ネット上ではルルーシュ生存説がいまだに根強く残っているが、筆者はこれには否定的である。なぜなら、ルルーシュが今更自分の生を選ぶ意味がないからだ。
皇帝ルルーシュの死は、今までの全ての行いに対する断罪と、一連の革命の収束を意味している。死は、自分の行いに責任を持つというルルーシュの意志の表れだ。そんななかで、あくまでもルルーシュが自分の命を惜しんだとしたら、スザクやナナリーといった自身を大切にしてくれた人々全てを裏切る最低の生き方になってしまう。
ルルーシュの物語は、ルルーシュ自身の死によって完結した。筆者はそう考えたい。
スザクとナナリー、それぞれの罪
ルルーシュは信念に殉ずる形で死んでいった訳だが、彼がかばった二人の大切な人々、スザクとナナリーについても述べたい。
スザクは第二次トウキョウ決戦において大量破壊兵器フレイヤを、自身の意志とは無関係に使用し、罪もないたくさんの人を死なせることになった。
ナナリーは自分の意志でフレイヤの発射装置であるダモクレスの鍵を所持し、最終局面において何度か使用し、人々を殺してきた。
たくさんの人を殺したという意味で、スザクもナナリーも、ルルーシュと対等なのである。おそらく、二人は自らの行いについて責任から逃れようとは思わなかっただろう。いつか何かの報いがあると覚悟したうえで、生きていた。
しかし、ルルーシュは彼らの罪すらも自らに着せて死んでいく。スザクを死んだことにし、ゼロの役目を渡すことで、スザクが行った罪自体をも墓場に連れていった。ナナリーには将来のブリタニア代表としての責務を預けることによって、戦争で死んだ人々への贖いとした。フレイヤによって死んだ彼らの名は、名誉ある戦士として将来のブリタニア皇帝の名のもとに永遠に刻まれることだろう。
親友と妹。二人の罪をまるごと全てルルーシュが肩代わりし、墓へと持っていった。スザクやナナリーだけではない。自らの過ちで殺してしまった虐殺皇女・ユフィの罪をも、ルルーシュは自らの蛮行による汚名で塗りつぶそうとした。
世を革命の渦へ巻きこんだルルーシュが、親愛なる彼らへの贈った最期のプレゼント。
生き残ったスザクやナナリーにとって、亡きルルーシュは、どのような形で彼らの記憶に残っているだろうか。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)