大人のラブコメ!
できればドラマを見てからの方が楽しめるかも
キャストも豪華ですし、パルコとタイアップしたCMなどの効果で、ドラマや原作漫画を観る前にまずは話題性のある映画から観てみよう!と映画から入った方も多いと思いますが、映画はドラマの1年後の設定なので、本作中には墨さんや島田などの幸世旧知の仲と思しき人物がさらっと登場しますし、その人たちとドラマでどんなストーリーを経てから、本作に至ったのかを知っておくとより楽しめるかと思います。僕自身も映画→ドラマ→再度映画見直しという形でしたので二度美味しい形でした。
ドラマでは漫画家オムさん役として登場していたハマケンさんは、映画では自身がボーカルを務めるファンクバンド「在日ファンク」として一瞬映画のフェスのシーンで登場していましたし(実在するファンクバンドです。ジェームスブラウンを彷彿とさせるかっこよさです。)、
そのフェスのシーンでの「かっこ悪い振られ方」のシーンもドラマとわざと同様に作ってあり、オープニングもドラマと同様の編成にしてあるのと合わせて、つくづくこの映画はギャグ線が高いなぁと感心しました。
余談ですが、序盤のフェスのシーン最後で幸世が音楽を聴きながら走り去っていくところで一瞬、ヒロインのみゆきちゃんとすれ違っています。つまり正確には初めの呑みでのみゆきちゃんは初対面ではなく運命的な再会というわけです。気づいてない方も多いかもしれません。
こういうわかりにくい工夫も、サブカルをテーマにした映画だけあって人間の中に眠るマニア心をくすぐります。
多くの男性の共感を呼ぶ幸世の珍道中
男性の多くは学生時代やもしくは今現在も、青春を過ごす中で恋愛において思い出したくないような「黒歴史」や恥ずかしい思い出をお持ちかと思います。そんな現代の男性の心中をそのまま実写化してくれているかのような幸世のゲスくてエロくてしょーもない心の声こそが、世の多くの男性の共感を得ている源でしょう。
そして仕事でヘマしながらも、趣味や娯楽でうまく現実逃避を挟みながら懸命に現代社会を生き抜いていこうとする様子は老若男女問わず共感を呼んだことでしょう。
女性からしたら、幸世をみて「こいつ頭の中しょーもなっっ!!笑」とか思うかもしれませんが、これが男性のリアルですと声高らかに伝えたいです。笑
賛否が分かれるとしたらここでしょうか。
変に背伸びすることなく、ドラマの世界観をそのままにかつ濃密にコンパクトにまとめてあり、これといって批判に値する部分は見当たらないかと思いますが、もし賛否が割れるとしたら実際に楽曲を全面におしだしてミュージカル調になっている部分があったりするので、その手のものが好きではない方は少しだけ歯がゆいかもしれませんね。実際少しだけですし問題ないかと思いますが。
あともう一点は、ドラマでは複数女性と恋愛ドラマがあり文字通り「モテキ」という存在になっていました。エロい展開寸前までいきハラハラする様子が連ドラとしてかなり視聴意欲を掻き立てるものでしたが、本作ではみゆきとはいい感じになるものの、途中からるみ子の進撃はあるものの、「モテキ」というよりは普通にるみ子が幸世のスキをついたといった印象。愛ちゃんともう少し本気の恋愛的な展開があれば三つ巴の戦いのような構図となり、もっと「モテキ」らしくまとまったのではないか?とも思いました。
まあしかし、映画としての尺の長さの問題もありますし、ドラマ版と違い最後はハッピーエンドとなったためそこは許せる範囲でしょう。
出演バンドやBGMまで、世界観全開
Perfumeが大好きなので実際出たとき(もちろん事前に知っていましたが)は発狂モノでしたが、一緒に踊る幸世こと森山未來さんのダンスのうまいことうまいこと。
僕自身ダンサーとしてお仕事を頂いたりすることもあるのですが、ダンサー目線で見ても森山さんのダンスはかなりのものです。演技だけでなくそういった表現の部分まで、俳優魂というものを超えていち表現者としてアツいものを感じます。
そしてPerfumeだけでなくジュディマリやくるりTM岡村靖幸さん女王蜂スチャダラパーN'夙川ボーイズに冒頭で紹介した在日ファンクと、邦楽ロックやこのあたりのジャンルの音楽が好きな方にはたまらないチョイスとなっています。
あまり知らないという方はこの機会にいろいろ調べてみても面白いかもしれません。
「等身大」の良さ
人気ラブコメ映画としてよく名前も挙がりますし、ランキングをつけたらしばらくは上位に居座るであろう本作ですが、そこまで人々の印象に残る要因は上記でも語ったような「身近さ」にあるのかなと思います。
特に幸世とるみ子のジュディマリとYUKIの会話の件は実際でもよく見られる光景ですし(笑)実在のバンドをどんどん出したり、幸世の心の声が現代の男性の声にかなり近かったりするのもそうです。(笑)
「映画化」するからといって変に演出に凝ったりしてから回ることをせず、ドラマや原作漫画の良さをそのまま出し、この映画の敷居を高く「大きく」しなかったことで逆に、この映画の存在が見た人の中で「大きな」存在となり、等身大となって寄り添うような存在として残っていくのだなと感心しました。
身を固めるまでは何度でも見返して、真面目ながらもやんちゃな幸世のような気持ちを心に留めておきたいものです。
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