大ヒットゲームの映画化
シリーズによって質が大幅に異なる作品
映画『バイオハザード』シリーズは2016年2月現在、5作まで公開されている。いずれも主演はミラ・ジョヴォヴィッチ。ミラが演じるアリスがシリーズ共通の主人公(ヒロイン)となっている。
シリーズものという体裁を取ってはいるが、シリーズは一作ごとわずかの伏線を残す形で完結し、基本的には一話完結という見方が良いと思われる(監督もシリーズごとに変わっている)。
というのも、アリスの作品ごとのステータスが異なり、特に三作目「Ⅲ」においては超能力を使う描写があるため、前後の作品もアリスの設定が同じと考えるのはあまり好ましくないのだ(四作目「アフターライフ」冒頭で、ウェスカーに注射を打たれてしまって以降は超能力は封じられてしまう)。
クリーチャーデザインも大きく変わり、シリーズを追うごとにリアルになっていくので、シリーズまとめての評価をすべきではない。
そのため、本考察では映画『バイオハザード』シリーズに共通する部分を、若干おおまかにではあるが、取り上げていきたいと思う。
ゲーム『バイオハザード』ファンなら唸る演出の数々
そもそも『バイオハザード』とは、日本のゲームメーカー・カプコンが開発したホラーアクションゲームである。
山間の洋館を舞台に、迫りくるゾンビやクリーチャーから逃げつつ脱出を目指すゲームで、当時珍しかったアメリカ人主人公と英語のボイス付き会話、男女の主人公を選択できるシステム、随所に挿入される「扉」や「仲間を捕食するゾンビ」「こちらに凄まじい速さで向かってくるハンター」といった恐怖演出の数々など、斬新なシステムで人気を博し、ホラーゲームの金字塔になった作品である。当初はプレイステーションで発売された『バイオハザード』であるが、時代と共に様々なハードに移りかわりながら、現在に至るまで続編とリメイクを発売し続けている。
その『バイオハザード』を原作とし、映画『バイオハザード』は作られた。故に、映画『バイオハザード』に登場するキャラクター、クリーチャー、設定などはゲームがもとになっている。
しかしながら、シリーズ当初はオマージュのような扱い方がほとんどで、ゲームと映画の類似点はほとんどなかった。「Ⅱ アポカリプス」でゲームの主人公・ジルやカルロス、追跡者ネメシスが、「Ⅲ」で主人公クレアが出てきたぐらいで、ビジュアルもジル以外はゲームに寄せているとは言い難かった。
しかし、「Ⅳ アフターライフ」から状況が急変する。というのも、映画四作目が、ちょうどゲーム『バイオハザード5』と発売日が近かったためと思われる。そのため、ゲーム本編と映画がシンクロするような構図が度々見られ、ゲームファンを驚かせた。
例えば、サングラスをクリス・クレア兄妹に放るウェスカー。これはゲーム中にも全く同じシーンが登場する。また、鎖を引きずりながら斧をひっさげ登場する処刑マジニは、そのインパクトも合わさって映画「Ⅳ アフターライフ」の中ボス的立ち位置になっている。
更にゲーム『バイオハザード 6』と時期を合わせてきた「Ⅴ リトリビューション」は、ゲームファンをもっと喜ばせた。
ゲーム二作目からの主人公・レオンと、一作目の主人公のパートナー・バリーの登場である。特にバリーが懐からコルトパイソンを出した瞬間には、ファンは大いに歓喜したことだろう。また、洗脳されたジルも、フックショットを使って移動するエイダも、ゲームファンおなじみのシーンだ。
映画『バイオハザード』は、正直映画としての評価はそれほど高いものではなかった。だが、親であるゲームのオマージュを巧みに取り入れることにより、かつてゲームを遊んだファンの心を掴んだことは間違いないといえる。
長く続いたシリーズも、残りあと一作で完結が予定されている
とはいえ、映画『バイオハザード』は6作目『バイオハザードVI ザ・ファイナルチャプター』で完結をみる、とされている。
映画の内容としても、「Ⅴ リトリビューション」のラストで残る生存者が限られていることが明かされ、クライマックスの土壌はすでに出来あがっている。
生き残っているのは、アリスの他に、ジルやレオンといったゲーム原作の面々。そして「Ⅴ リトリビューション」で生存した少女・ベッキーと、敵であったはずのウェスカー。”厳選された”生存者たちがどこまで生き残り、そして物語はどういった完結をするか、注目が集まっている。
世界はゾンビとクリーチャーに埋め尽くされ、安息の地はない。崩壊した世界で人間の生きていく術はあるのか。
ゲームのオマージュを取り入れながらも、社会的秩序がなんとか残っているゲームとは違う道を歩んだ映画『バイオハザード』。
映画館やDVD、日曜洋画劇場などで観たことのある人も多いことだろう。2002年の第一作目の公開から14年近く続いた人気シリーズ作がどういった結末を迎えるのか、楽しみにしていきたい。
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