あのあと
あのあと睦子はどうなってしまったのだろう?
可愛らしい人形のような幼女のまま「その時」を迎え、誰の目に触れることなく若返っていったのか。
もしくは、そのままの姿で過ごすことができたのか。
2人はまた再会することができたのか。
田浦は、睦子が嫌がってもその手を離してはいけなかった。幼くなってしまった睦子を独りきりにしてはいけなかった。
お前何やってるんだよ。泣いてる場合じゃないだろ。早く追いかけて睦子を抱き上げろ!
ラストを読むたびそう思う。
せつない大人のラブストーリーだ。こういうのはどう例えたらいいのだろう?
自分が頼ることのできる唯一の人間が親類縁者でも家族ですらなく、ただ一度、ハプニングで出会っただけの異性。
自分が変貌したことをその唯一の人間に確認してもらいたいのか、変貌を遂げるたびに接触を求める。
若さを誇示できる間は羨ましくさえあった。二人の蜜月はこのあたりで止まって欲しかった。
睦子が少女になってしまったときの衝撃と驚きは、田浦でなくとも読者には十分ショッキングだった。
最後の彼らの入浴描写は、本来ならエロチック(少女趣味?)であるはずなのだが悲しくて仕方がない。
神がいるなら睦子を元に戻してほしいと願うシーンだ。
小さく小さくなってしまった睦子。
彼女は「その時」に胎児となってしまったのか。そんな姿でもいいから田浦のそばに居続けて欲しかった。彼女の矜持が悲しい。- あなたも感想を書いてみませんか?
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