春期限定いちごタルト事件の感想一覧
米澤 穂信による小説「春期限定いちごタルト事件」についての感想が4件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
甘いものを食べながら読みたくなる小説
ちょうど高校生になったころに初めて読んでそれから数年間何度も読み返している小説です。人が死なないサッパリとしたミステリー、一つ一つの謎は単純だけどそれらを解いていく主人公小鳩くんの周りではだんだんと大きな事件につながっていく。それだけ聞くとありがちな推理小説かもしれませんがこの小鳩くん、探偵役はやりたくない、と思っているんですよね。でも実際は推理力もあり知的好奇心もあり解きたがりの性格。解きたがりの性格を封印して高校デビューならる小市民デビューをしようとしている小鳩くん、一緒に小市民デビューをもくろんでいる小佐内の高校生活のはじまりが描かれています。小鳩くんは小説全体を通して解きたがりの性格が伝わってくるのだけれど、小佐内さんはぎりぎりになるまで読者にすら自分の性格を隠している。「小佐内さんは十分小市民なのにどうして小市民になりたいんだろう?」そんな疑問を思いながら読み進めると小佐内さ...この感想を読む
かわいい
皆様、ご存じであろうと思いますが、これは人気シリーズのはじまりです。内容は、小市民の星を目指す高校生の日常ミステリーです。小市民を心掛けていても毎日のちょこっとした事項によって心が折れそうになったり、長いものに巻かれたりと、その屈折が、かなり面白いです。そして、作品のなかで携帯があります。これはとても懐かしく感じました。技術の進歩は早いなーって。キャラも個性的で、感情移入しちゃいこと間違いなしです。私は感情移入しすぎて、ドキっとする部分が多くありました。そして、「春季限定のいちごタルト」とタイトルに入っているのが、なんとも「かわいい」!オススメです。
人は死なない。しかし…
人の死なないミステリーで有名な米澤穂信さんの人気シリーズの第一巻目です。かわいらしいタイトルと表紙に惹かれて手にとってみる人も多そうですが…。内容は、いつもの米澤節といいますか、若干(だいぶ?)ほろ苦い、毒の含まれた物語です。タイトル通り、いちごタルトをはじめ、たくさんのスイーツが出てくるので、おなかが空いてくる小説でもあります。また、魅力的なのは登場人物です。主人公にも特徴があるのですが、ヒロインの小佐内さんも一癖二癖あって、読んでいてこの二人はどうなってしまうのだろうとドキドキしてしまいます。ちょっと個性的でもあり、どこにでもいそうでもある、素敵な少年少女が活躍する、甘くて苦い、小説です。
米澤さんらしい
米澤さんが特徴とするいわゆる「日常の謎」系のお話です。短篇形式になっていてあいた時間にすっきり読めるのがうれしいですね。どうやらテーマは「自意識」らしく・・・なるほど、と思わせられます。主人公は頭がきれる奴で、日常の謎の謎解きを得意としています。しかし、その謎解きをしすぎて、クラスのみんなに嫌な目で見られた、みたいな過去の背景があるっぽいですね。いつも主人公にくっついているヒロインは甘いものが大好きでいつも物陰に隠れているとてもかわいらしいキャラクターでした。この二人はいつも一緒にいるのですが恋人関係ではなく、ただお互いの利害が一致しているだけの互恵関係というのがいいですね。お互いがお互い小市民になるという目的を掲げて、セーブしあっているのです。そんなキャラクターが最高の読みやすいミステリーでした。