タイムマシンのあらすじ・作品解説
タイムマシンは、イギリスのH・G・ウェルズによって書かれ、時間旅行をテーマにしたSF小説である。雑誌に連載された後で1895年に発行される。 ある科学者が自由に過去や未来に行ける乗り物を開発し、未来の世界に行った際の冒険の話を友人たちに聞かせる。人類はエロイとモーロックという種族に分かれてしまっている。エロイは高等な人種のようで一見幸せそうだが、優秀な人類のみを選り分けたため、かえって体格も知能も現代人より劣ってしまっている。かたやモーロックは低俗な階級として、エロイから支配を受け搾取される生活を続けていたが、衰えたエロイ達を捕まえて食べるようになってしまった。このように人類は全般的に退化してしまったのである。科学者はエロイの女性ウィーナと親しくなり、モーロックとの戦いを繰り広げる。ウィーナの死の後に更に未来に行き、人類が絶えた後の絶望的な世界を目に焼き付けてくる。一旦友人の元に戻った科学者は、再び機械に乗って出かけたが、戻ることはなく行方不明になってしまった、という話である。
タイムマシンの評価
タイムマシンの感想
謎の怪奇紀行
おそらくSFの「タイムマシーン」物の最初となるであろうこの作品は、タイトルで子供向きと誤解してはなりません。当時のイギリスでは大人も夢中になって読んだのです。それだけの張り合いと面白さがある作品です。旅行家がタイムマシーンを発明し、未来や様々な世界に行き、そのたびに恐ろしい出来事を経験することとなります。その未来の旅行世界は、空想の産物であるはずなのにリアリティがあって、読んでいて恐怖を感じられるぐらいです。設定も納得いくものであってとても楽しめます。当時のイギリスの社会状況やウェルズの学問知識が反映されたとも言われていますが、その辺は冒頭の文明批評や社会主義に関する議論でもその片鱗がしのばれます。
元祖SF。
100年くらい前に書かれた、元祖SFとも言うべき作品です。相対性理論がぎりぎり発表されるか、されないかの時代なので、ウェルズの先見の明にはおそれいります。マッドサイエンティストの貴族でもある博士が不思議な装置を発明してしまうという話です。そして、何億年も先の人類の姿を観て帰ってきます。描かれている未来の人類像がなんとも不気味でありながら、示唆にとんでいて読んでいてそのイメージに釘付けにされます。ウェルズと言えば宇宙戦争でタコ型の火星人のイメージを固定しましたが、グレイタイプの宇宙人はこの未来の人類なのでは、とも思ってしまいます。とてもイメージが膨らむ素晴らしい作品です。