鉄楽レトラの評価
鉄楽レトラの感想
靴を交換した日がふたりにとって運命の日だった
料理が苦手なのは毎日実験しているせいかも「今日の目玉焼き、最高に上手く出来たから、いつでも皆に自慢してくれていいからね」「お前が自分に自信を持てない分、私が持っててやるから、怖がらずに生きな」鉄宇のお母さん、個性的な人です。このお母さんがいたから、家にひきこもりになっても安心してゆっくりできたのかもしれないです。でも、きれいにできるのが唯一目玉焼きだけ。あとのは、まずいのかなと思わせる出来事が「えっと・・・僕、あげられるまともなおかずが目玉焼きくらいしかないんだけどいい?」と鉄宇が言っています。その前にも「母さんの唯一の自慢は目玉焼き。というかそれしかまともに作れない・・・」とナレーションがあるのですが、他のから揚げも結構きれいな感じで並んでいたので、そうなのかな?彼の心がそう思わせているのではないか?とも疑問がわきました。しかし、弁当を持ってきていない友達にあげれるものが目玉焼きだけ...この感想を読む
挫折から始まる物語
主人公の挫折1巻がまず衝撃なんです。主人公の鉄宇が本当にどうしようもなく弱い子で。うぬぼれていた自分から逃げて逃げて…心を閉ざしてしまった男の子なんです。最近同じような状況に陥った自分としては、もうタイムリーすぎて、この本には会うべくして出会ったんだなというしかありませんでした。ミニバスからバスケットボールをやっていて、自分の能力に自信のあった鉄宇。中学校からバスケを始めた友達に、バスケを教えたりもしていた。だけど、自分は身長が伸びなくて、能力も伸びなくて、どんどん後から始めた子たちに追い抜かれていく。それが許せなくて、ネットに友達の悪口もいっぱい載せた。それがどれだけ卑怯なことなのかもわかっているつもりで、でも自分の負の感情を吐き出せる何かが欲しかった。長くバスケを続けていた自分がメンバーに選ばれず、後から始めた奴らが選抜されていくみじめさ。いざ正面から向き合って1on1をやっても、まった...この感想を読む
誰へのレトラとなるか
鉄宇の、レトラタイトルの「鉄楽レトラ」を一目見たときに、その意味がわかった人はほとんどいないのではないのだろうか。「鉄楽」は主人公の名前の一文字を当てた造語だし、後半の「レトラ」はフラメンコで歌われる歌【カンテ】の歌詞【レトラ】という意味のスペインの音楽用語である。スペイン語かフラメンコに知見がなければタイトルからどのようなストーリーなのかわからないが、本作の表紙はそれぞれ躍動感のあるイラストで装丁されていてスペイン舞踊の世界へ入っていく予感を感じさせる作りになっている。人の人生を変えてしまうほどの人間ってどんな奴だろういったいどんなストーリーなのか想像もできないままタイトルの「楽」の文字に引っ張られて読み進めていくと、主人公の男子高生鉄宇【きみたか】くんが、ひょんなことから自分のバスケシューズと引き換えにヒロインの赤い女性用フラメンコダンスシューズを手にし、フラメンコの世界に入ってい...この感想を読む