まほろ駅前多田便利軒の感想一覧
三浦 しをんによる小説「まほろ駅前多田便利軒」についての感想が8件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
三浦しをんの代表作
三浦しをんを一大スターダムに押し上げた作品軽妙な切り口のエッセイや、『風が強く吹いている』などで人気がある三浦しをん。その代表作が、『まほろ駅前多田便利軒(以下、まほろ便利軒)』だ。同作品は2006年に直木賞を受賞。瑛太、松田龍平主演で、映画やドラマになっていることからも有名な作品だ。三浦しをんは『私が語り始めた彼は』で山本周五郎賞候補、『むかしのはなし』で直木賞候補に挙がっていたが、『まほろ便利軒』が評価を得るに至った経緯を密に見ていきたい。『まほろ便利軒』のストーリーはそれほど複雑なものではない。西東京の架空の都市・まほろ市で便利屋を営む多田が、同級生の行天と再会するというところから物語はスタートする。勝手に居候になった行天と一緒に、便利屋としての依頼をこなしていく多田。二人に依頼をもたらすのは、どこかマイペースなまほろの住人たちだ。マイペースな住人の依頼に、多田と行天はマイペース...この感想を読む
世界観にはまる!
瑛太などが主演で映画化もされた作品。わたしは映画を先に観たからか、そのイメージでよんでいった。まほろに便利屋をひらいている多田のもとに元同級生のぎょうてんが転がり込んでくる。そこからはじまる、ふたりのいろいろな話。やくざに絡まれたり、トラブルを解決したり、なんでもないような仕事をうけたり。ふらふらした、地に足がつかない生活に見えて、なんだかしっかりやってるようにも見える。こういうひとと友達になりたいなあ、って思いながら読んでた。文体は読みやすい。キャラクター設定、ストーリーもとてもおもしろい。なにかいい小説ない?と聞かれたら真っ先にすすめたい。
乾いた感じだけど、人間臭い温かさが残ります。
便利屋の多田のところに、高校の同級生の行天が転がりこんできます。飄々とした行天に振り回される多田。何だかんだ離れられない絶妙な距離感が心地良いです。そして、2人とも不器用で不格好に生きているところも憎めません。便利屋の仕事で出会う人々は、うさん臭い一癖ある人たちばかり。何かしら背負っているものがあり、2人はいつのまにか巻き込まれていきます。スッキリ解決するわけではないけど、結果的に2人がゆるーい希望をぼんやりと照らしてくれる、そんな感じでしょうか。乾いた感じなんだけど、人間臭い温かさが残りました。そして、全体に心に残る素敵なセリフがちりばめられているので、いちいち読み返して、ホーッっとしてました。本当に作者の表現力には脱帽です。中でも「幸福は再生する」。この作品のテーマはこの言葉に凝縮されていると言っても過言ではありません。
心が ぼわぁっと暖かくなる
映画を鑑賞して、小説を読んでいない人に是非読んで欲しい。映画より10倍面白い小説だ。面白くて面白くて、好みの合う人なら1晩で読み終えてしまうだろう。そして、最後のページには読者にささやかな「言葉のプレゼント」が用意してある。その言葉のプレゼントに私は励まされた。三浦 しをん さんの作品は、最後に勇気を与えてくれる作品が多い。最近映画化された『舟を編む』も同様だ。言葉の魔法は、時として映像よりも心への浸透力が高い。「幸福は再生する。」この言葉を紡ぎ出すストーリーと言葉の意味。読み終わった後、心がぼわぁっと暖かくなること間違いなしだ。
ちょっとハードでやさしい便利屋稼業
三浦しをんの直木賞受賞作というので、久しぶりに入院がてらに買って読んでみました。東京郊外のまほろ市に便利屋を開いた中年男多田圭介と大学時代の友人行天晴彦が、依頼人と繰り広げる一見奇異と思える世界ですが、本当は心温まる話です。いきなり病院の見舞い代理のシーンで始まり、ペット探し、小学生の通塾の送り向かえだったり、恋人のふりなど色んな仕事で、身につまされる話が多くてうんざりします。途中から風俗嬢を助けてやる義侠心からやくざに追いかけられるようになり、多田と行天の綱渡りが始まります。三浦しをんの書く文体はライトで、気どらない主人公たちが、街の揉め事や事件に巻き込まれていく様は、とても気持ちがよい小説です。映画化作品は大森立嗣監督、主演瑛太、松田龍平、音楽はくるりの岸田繁です。
手軽に読める
駅前で便利屋を営む多田とそこに転がり込んできた行天の6編の短編集とともに描かれた1年間の話。登場してくる人々は親に愛されない少年、日々を明るく生きる自称コロンビア人娼婦、ヤクザ、赤ん坊の時に取り違えられたかもしれない男など様々な境遇の人々で、いろんな心の傷を抱えている。でもみんな不器用だけど、心の優しさがそこはかとなく漂っている人ばかりです。冷静に考えれば全くあり得ない設定だが、話がつまらないかと言うと、全くそんな事はなく、とても楽しめる。なんとなく電車の中の暇つぶしする本を探して手にとっただけですが、この本は当たりでした。短編なので電車などの移動中やちょっと時間が空いた時に読んで欲しい物語です。
主人公が便利屋ってところが面白い
映画化されたり、テレビドラマにもなったりしているので、ご存知の方も多いのではないかと思います。 感想としては、読んでいて飽きるタイミングが一度もなかったことに驚きました。最後まで、時にわくわく、時にどきどきしながら読めました。こういう小説ってなかなかありません。 キャラクターの設定が綿密になされていて、しっかりしていると感じました。便利屋の多田と相棒(に、なぜかなってしまった)行天の掛け合いがいちいち面白いです。まさに、気をゆるした者同士の脱力した会話というイメージです。いや、むしろお互いに相手のことをどうでもいいやつと思っているからこその適当さなのかもしれませんが……。感じるイメージはきっと人それぞれですね。 物語の展開としては便利屋として働きながらも町のやっかいごとに巻き込まれていってしまう、といった感じです。ストーリーもキャラクターも独特で、面白かったです。
こんな友情素敵すぎる!!
便利屋を営む多田と、彼の元に転がり込んできた高校時代の同級生・行天の奇妙な友情がたまりませんでした!お互い似ているようでまったく違うタイプの人間なのですが、どうしてこうもいざというときに息が合うのか…自分も男だったら、2人のような友情の育める相手が欲しいなぁと思わずにいられません。ユーモアたっぷりに描かれる他のキャラクターも個性的で、いい味を出しています。女性の作家さんでは風俗をしている女のキャラクターを肯定的に描くことは少ないような気がするのですが、三浦しをんの場合はそれらも「個性」として書かれているのがいいですね。映画化や漫画化もされています。