舞姫の感想一覧
川端 康成による小説「舞姫」についての感想が5件掲載中です。実際に小説を読んだレビュアーによる、独自の解釈や深い考察の加わった長文レビューを読んで、作品についての新たな発見や見解を見い出してみてはいかがでしょうか。なお、内容のネタバレや結末が含まれる感想もございますのでご注意ください。
舞姫。
高校の教科書で出てきた時は、文体に戸惑ってしまって「なにこれ!?意味不明!」と思いましたが、今となってはこの文体が大好きです。雅俗折衷というか、この森鴎外独特の文体が素敵ですよね。舞姫は特にドイツを舞台とした作品なので、ドイツ好きの私にとってはうれしいです。「クロステル通り」とか「エリス」とか、漢字が多い中に出てくるカタカナ文字の音がものすごく好きになりました。どうして学生の頃はこの素晴らしさが分からなかったのか(笑)。内容としてはバッドエンドの恋物語。帰国か、エリスか悩んだ末、豊太郎は帰国を選択する。エリスは発狂しパラノイア。豊太郎の選択はこれでよかったのかなぁ。
実話なのか?
高校で学習する作品。ほろ苦い恋物語。そして、実話に近い作品。森鴎外は医学部を卒業している。彼は陸軍軍医になり、陸軍省派遣留学生としてドイツで4年過ごす。そして、ドイツ人女性エリーゼと交際。帰国後、エリーゼが鴎外を追って来日。その後も関係は続いた。が、鴎外は海軍中将の娘 登志子と結婚する。ドイツ人エリーゼとの恋物語をモチーフにして書かれたという説もある。果たして、真相はいかなるものか?ちなみに、鴎外のエピソードとして、東京音楽学校からの依頼で横浜市歌を作詞。その作詞料は100円であった。当時、小学校教員の初任給は月額8円。鴎外さん、いい仕事してますね。
格調ある文章で語られる恋物語
ドイツに留学した鴎外自身をモデルにした作品と言われています。現地で出会った貧しさに苦しんでいる少女を救ったことから交際が始まります。主人公もヒロインのエリスも互いに惹かれ合い一時は二人で一緒になる寸前にもなりますが、将来を嘱望されるエリートである主人公のため、周囲から妨害が入って破局へと向かってしまいます。基本、悲恋物語ではありますが、特徴は流麗な擬古文で書かれていることです。したがってあまりに古文のようなものに馴染みがなかったり、苦手である場合は読むこと自体が苦痛である可能性があります。しかし近代の文章なのでやはり骨格は読みやすく、文語文を好む方にはその独特の迫力やリズム感など口語文では味わえない魅力があるのも事実です。ただの自伝的作品でなく物語としてドラマチックに、見事に仕上がっていることもあり、作家としての森鴎外の初期の代表作と言われてるのも頷ける出来となっております。この感想を読む
日本が誇るべき文学作品
高校時代に授業で知り、よりじっくりと読みたいと思い購入しました。高校生でもわかる簡単な文体で、そう難しくはありません。しかし、時代が違うこともあり、現代の人間には少々入り込みにくい部分もあるかもしれません。エリートである主人公がベルリンに渡り、そこで自分自身の生き方に銀疑問を覚える。踊り子との恋愛の末に描かれる切なく、ジレンマを感じる心情がひしひしと伝わってきます。愛と自分自身の葛藤が見事に描かれています。想像力を掻き立てられ、頭の中で映像が流れるほどです。ですが、ドラマチックな演出はなく、リアルな人間が映し出されています。是非、学生のうちに読んでおきたい1冊ですね。
鴎外の意図とは?
高校生の頃国語の授業で初めて読みました。難しい漢字がいっぱいで読み難いのですが、綺麗な文章だなと感じました。『舞姫』は一言で言うと、悲劇でしょうか。物語の最後、主人公(大田豊太郎)は、身ごもったドイツ人の女性(エリス)を捨てる。エリスは気が狂ってしまう。『舞姫』は、鴎外がドイツ留学した時の体験をもとに書かれていて、エリスのモデルとなった女性が鴎外を追いかけて日本にやってきた事件もありました。『舞姫』はその事件の一年後に発表されたので、私は、鴎外からドイツ人女性に向けてのラブレターのような気がします。読むたびに鴎外の描きたかった意味を推測するのが面白い作品だと思います。